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復讐編 あなたは絶世のファム・ファタール!
シャル・ウィ・ダンス?
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キュリオ学園の年度末パーティー。
女性は、美しいドレスを着て、メイクアップする。
男性は、タキシードを着て、身なりを整える。
そうした男女は恋人、友人、あるいは一目惚れした相手とダンスを踊り、大いにパーティーを楽しむ。
しかし、卒業間近の生徒にとって、この最後の学園パーティーは別の意味を持つ。
パーティーの最中、女性から男性にダンスの申し込みをする。
オーケーが貰えたら、その日はその人とだけダンスを踊る。
そして、その日、ダンスを踊った男女は永遠に結ばれる。
物語のクライマックスに相応しい言い伝えだ。
レンコは誰をダンスに誘うか、この世界に転生したときから決めていた。
アナスタシオス・フィラウティア。
前世で【キュリオシティラブ】をプレイしたときに一目惚れした、隠しキャラ。
レンコは彼と結ばれるために、今まで行動してきた。
シュラルドルフ、ゼニファー、そして、アデヤを味方につけ、アナスタシアを断罪した。
最初は上手くいかず、憤る毎日だった。
しかし、いつの頃からだか、攻略対象達が協力してくれるようになった。
──みんな、私の魅力にようやく気づき始めたのね。
レンコはほくそ笑んだ。
周りの男達を動かし、アナスタシアの断罪を見事成功させた。
──邪魔者がいなくなったら、あとはアナスタシオス様を堕とすだけね。
そう思ったレンコは、意気揚々とアナスタシオスに近づいた。
最初、キャラクターの違うアナスタシオスに面食らったが、見た目が同じなら、そんなこと些細なことだった。
アデヤやシュラルドルフ、ゼニファーの嫉妬に邪魔されながらも、レンコは負けずにアナスタシオスに声をかけた。
レンコはアナスタシオスとどんどん親密になっていった。
学園パーティーの前日にも言葉を交わした。
「アナスタシオス様! 明日、最後の学園パーティーですね!」
「そうだね。僕にとっては、最初で最後のパーティーだ。とても楽しみだよ」
そう言ってアナスタシオスは無邪気に笑う。
「ねえ、アナスタシオス様? 最後の学園パーティーに、こんな言い伝えがあるのを知っていますか?」
「言い伝え?」
「最後のパーティーで踊った二人は永遠に結ばれるって言い伝えです! アナスタシオス様は誰と踊るか、決めていますか?」
「……実は、まだ」
「じゃあ……」
レンコはアナスタシオスの手に自分の手を重ねた。
「私と、踊ってくれませんか?」
アナスタシオスは困ったように眉を下げた。
「今は答えられない」
「え?」
「その言い伝え、実は僕も知っていたんだ。パーティーの最中に、女性からダンスを申し込む必要があるんだろう? だから……」
アナスタシオスはレンコの目を見ていった。
「パーティーのときにもう一度、僕に聞いてくれるかい?」
この物言いはもう、了承したようなものだ。
「……はい!」
レンコはとろけた顔で頷いた。
□
パーティー当日。
レンコはアナスタシオスが好きな、ワイルドなタイプのドレスに身を包んだ。
この日のために三年前から用意していたものだ。
勿論、一年前のアナスタシア断罪のときも着ていた。
アデヤ達には不評だったが、関係なかった。
彼らに好かれるために着た訳ではない。
レンコは浮かれた足取りでパーティー会場を歩く。
階段の上にアナスタシオスの姿を見つけて、レンコは階段を駆け上った
「アナスタシオス様ぁ!」
「レンコさん」
アナスタシオスはレンコに気づいて、レンコを見る。
アナスタシオスは彼の瞳の色と同じ装飾品があしらわれた燕尾服を着ている。
アナスタシアを想起させる色合いだ。
「素敵なドレスだね。僕の好みに合う」
「そうでしょう? 貴方のためのドレスですもの!」
「僕のため……か」
「それで……この間の答えなんですけどぉ」
レンコは手を差し出した。
「踊ってくれますよね? アナスタシオス様」
レンコは頬を赤らめて微笑む。
アナスタシオスも優しく微笑んだ。
アナスタシオスの手がレンコの手に伸びる。
レンコの胸はこれ以上ないくらい高鳴った。
「このときを……待っていたわ……」
レンコはポツリと呟く。
「ああ。俺もだ……」
アナスタシオスは一瞬、ニヤリと笑った。
浮かれたレンコはそのことに気づかない。
パシン、と乾いた音が会場内に響いた。
「……え?」
訳も分からないと言った様子で、レンコは払い落とされた自分の手を見る。
そして、アナスタシオスの顔を見た。
「あ、アナスタシオス様……?」
アナスタシオスは冷たい目でレンコを見ていた。
「……レンコさん。僕が何も知らないと思っているのか?」
「何……。一体……何の話ですか?」
「一年前……学園のパーティーでとある令嬢が【博愛の聖女】に嫌がらせをしたとして吊し上げられた。……その令嬢は僕の双子の姉──アナスタシア・フィラウティアだった」
レンコはハッと、アナスタシオスの後ろにいる人を見た。
シュラルドルフとゼニファーがレンコを睨みつけている。
二人がアナスタシオスに密告したのだろう。
──なんで、今になって……!
「……本当の話よ。私は貴方のお姉さんに嫌がらせをされていたの。だから、断罪されたのよ!」
「ああ。アナスタシアは断罪されて仕方がないことをした。──その話が事実であれば」
「は……」
レンコは息を飲む。
「今日、一年前の真実を明らかにしよう。そして、断罪されるのは……君だ。【博愛の聖女】レンコ」
アナスタシオスはレンコに指を突きつけた。
女性は、美しいドレスを着て、メイクアップする。
男性は、タキシードを着て、身なりを整える。
そうした男女は恋人、友人、あるいは一目惚れした相手とダンスを踊り、大いにパーティーを楽しむ。
しかし、卒業間近の生徒にとって、この最後の学園パーティーは別の意味を持つ。
パーティーの最中、女性から男性にダンスの申し込みをする。
オーケーが貰えたら、その日はその人とだけダンスを踊る。
そして、その日、ダンスを踊った男女は永遠に結ばれる。
物語のクライマックスに相応しい言い伝えだ。
レンコは誰をダンスに誘うか、この世界に転生したときから決めていた。
アナスタシオス・フィラウティア。
前世で【キュリオシティラブ】をプレイしたときに一目惚れした、隠しキャラ。
レンコは彼と結ばれるために、今まで行動してきた。
シュラルドルフ、ゼニファー、そして、アデヤを味方につけ、アナスタシアを断罪した。
最初は上手くいかず、憤る毎日だった。
しかし、いつの頃からだか、攻略対象達が協力してくれるようになった。
──みんな、私の魅力にようやく気づき始めたのね。
レンコはほくそ笑んだ。
周りの男達を動かし、アナスタシアの断罪を見事成功させた。
──邪魔者がいなくなったら、あとはアナスタシオス様を堕とすだけね。
そう思ったレンコは、意気揚々とアナスタシオスに近づいた。
最初、キャラクターの違うアナスタシオスに面食らったが、見た目が同じなら、そんなこと些細なことだった。
アデヤやシュラルドルフ、ゼニファーの嫉妬に邪魔されながらも、レンコは負けずにアナスタシオスに声をかけた。
レンコはアナスタシオスとどんどん親密になっていった。
学園パーティーの前日にも言葉を交わした。
「アナスタシオス様! 明日、最後の学園パーティーですね!」
「そうだね。僕にとっては、最初で最後のパーティーだ。とても楽しみだよ」
そう言ってアナスタシオスは無邪気に笑う。
「ねえ、アナスタシオス様? 最後の学園パーティーに、こんな言い伝えがあるのを知っていますか?」
「言い伝え?」
「最後のパーティーで踊った二人は永遠に結ばれるって言い伝えです! アナスタシオス様は誰と踊るか、決めていますか?」
「……実は、まだ」
「じゃあ……」
レンコはアナスタシオスの手に自分の手を重ねた。
「私と、踊ってくれませんか?」
アナスタシオスは困ったように眉を下げた。
「今は答えられない」
「え?」
「その言い伝え、実は僕も知っていたんだ。パーティーの最中に、女性からダンスを申し込む必要があるんだろう? だから……」
アナスタシオスはレンコの目を見ていった。
「パーティーのときにもう一度、僕に聞いてくれるかい?」
この物言いはもう、了承したようなものだ。
「……はい!」
レンコはとろけた顔で頷いた。
□
パーティー当日。
レンコはアナスタシオスが好きな、ワイルドなタイプのドレスに身を包んだ。
この日のために三年前から用意していたものだ。
勿論、一年前のアナスタシア断罪のときも着ていた。
アデヤ達には不評だったが、関係なかった。
彼らに好かれるために着た訳ではない。
レンコは浮かれた足取りでパーティー会場を歩く。
階段の上にアナスタシオスの姿を見つけて、レンコは階段を駆け上った
「アナスタシオス様ぁ!」
「レンコさん」
アナスタシオスはレンコに気づいて、レンコを見る。
アナスタシオスは彼の瞳の色と同じ装飾品があしらわれた燕尾服を着ている。
アナスタシアを想起させる色合いだ。
「素敵なドレスだね。僕の好みに合う」
「そうでしょう? 貴方のためのドレスですもの!」
「僕のため……か」
「それで……この間の答えなんですけどぉ」
レンコは手を差し出した。
「踊ってくれますよね? アナスタシオス様」
レンコは頬を赤らめて微笑む。
アナスタシオスも優しく微笑んだ。
アナスタシオスの手がレンコの手に伸びる。
レンコの胸はこれ以上ないくらい高鳴った。
「このときを……待っていたわ……」
レンコはポツリと呟く。
「ああ。俺もだ……」
アナスタシオスは一瞬、ニヤリと笑った。
浮かれたレンコはそのことに気づかない。
パシン、と乾いた音が会場内に響いた。
「……え?」
訳も分からないと言った様子で、レンコは払い落とされた自分の手を見る。
そして、アナスタシオスの顔を見た。
「あ、アナスタシオス様……?」
アナスタシオスは冷たい目でレンコを見ていた。
「……レンコさん。僕が何も知らないと思っているのか?」
「何……。一体……何の話ですか?」
「一年前……学園のパーティーでとある令嬢が【博愛の聖女】に嫌がらせをしたとして吊し上げられた。……その令嬢は僕の双子の姉──アナスタシア・フィラウティアだった」
レンコはハッと、アナスタシオスの後ろにいる人を見た。
シュラルドルフとゼニファーがレンコを睨みつけている。
二人がアナスタシオスに密告したのだろう。
──なんで、今になって……!
「……本当の話よ。私は貴方のお姉さんに嫌がらせをされていたの。だから、断罪されたのよ!」
「ああ。アナスタシアは断罪されて仕方がないことをした。──その話が事実であれば」
「は……」
レンコは息を飲む。
「今日、一年前の真実を明らかにしよう。そして、断罪されるのは……君だ。【博愛の聖女】レンコ」
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