45 / 56
第三部 決着をつけてやろう!
第四十四話 計画に気づいてやろう!
しおりを挟む「あのじーさんが言うにはここらにブジャルドなんてねえらしいが、これからどうすんだよ!?」
「フラットリーのことも、知らないみたいだったな……」
まあ、この時代を生きていた我が輩も知らないくらいだ。
かなり狭い範囲で活動していたに違いない。
「お、おかしいよな。フラットリーが魔法を与えたのなら、魔法を使えるおじいさんが、知らないはずがない」
「そうそう! しかも、聞いてた話と全然違うし! メプリが魔王じゃねえってどういうことだよ!? 【剿滅の魔王】って何だよ!? フラットリーって信じたらマズいんじゃねえのか!?」
やっと気付いたか……。
フラットリーが人間達に魔法を教えたのは嘘。
魔王がルザ又はメプリなのも嘘。
ブジャルドが聖地なのも嘘。
ここまで来ると、もうフラットリーの存在自体が嘘なのではないかと思うくらいだ……。
「……嘘?」
ボースハイトの体を奪ったフラットリーを見るに、1000年前でも十分通用する魔法の使い手だった。
あんな逸材を我が輩が見逃すか……?
いや、あり得ない。
フラットリーが突然現れたりしない限り……。
「……おい。ラウネンは何処だ」
コレールとグロルにそう問う。
二人はハッとして、周囲を見渡した。
「あ、あれ? そういえば、いない……!?」
「じーさんに話しかけたときは確かにいたぜ!? 何処にいったんだ!?」
しまった。
「嵌められた!」
我が輩は憤慨し、地面を叩いた。
我が輩の只事ではない様子にコレールが心配そうな顔で聞く。
「ど、どういうことだ? ウィナ。嵌められたって……?」
「フラットリーなんて初めから存在してなかったのだ!」
「え!?」
「全てはラウネンの嘘だったのだ!」
過去と未来を掌握する【掌握王】ラウネン。
奴は時間操作や時空間操作だけでなく、人間に偽りの過去を植え付ける魔法も得意としている。
ラウネンは人間達に偽の記憶を植え付けたのだ。
『フラットリーという偉人がいた』と。
人間に魔法を与えた聖人、人間を救う救世主などと謳って。
フラットリー教やフラットリー文書などを作って真実味を帯びさせ、人間達に信じ込ませた。
存在すらしていないのに……。
フラットリーがボースハイトの身体を乗っ取ったのは転生なんてものではない。
ただ、ボースハイトの人格と記憶が、ラウネンに都合よく創られた人格と記憶に上書きされたに過ぎなかったのだ。
フラットリーが我が輩を知ってたのもラウネンが関わっていたからだろう。
ラウネンにとって、フラットリーを消そうとする我が輩は邪魔な存在だ。
だから、ラウネンは我が輩を1000年前に置き去りにした……。
全て……。
全てが……ラウネンの手の上……。
「ラウネン様がいなくなっちまったら、どうやって元の時代に帰るんだよ!? 時を超えられる魔法を知ってる唯一の人だぞ!?」
「それに関しては問題ない。100年単位の《時空間移動》はそらで出来る」
「で、出来るのか……」
「しかし、先程の《1000年時空間移動》でかなりの魔力を使ってしまった。1000年分超える魔力は今ない。だからといって、魔力が回復するまで待っていられない」
ラウネンは時間魔法のエキスパート。
我が輩を1000年前に閉じ込めるぐらい造作もない。
だから、出来るだけ、我が輩が不在の時間は作ってはならない。
「じゃあ、どうするんだ……?」
我が輩程の魔力を有している者から魔力を借りるしかない。
例えば、四天王……。
ラウネンは論外だ。
あいつはこの時代の自分にも根回しを終えているだろう。
ルザは我が輩程の魔力を有しているかわからない。
最弱王という名は伊達じゃないからな。
メプリとは話す前にコレールとグロルが殺される。
1000年後、ラウネンとの戦闘を考えると、蘇生する魔力を節約したい。
そうすると、四天王最後の一角、クヴァールだけとなるが……。
……期待出来ない。
話すだけ無駄だろうな。
他に、我が輩程の魔力があり、この時代を生きる者はいるか……?
……条件に当てはまる者が一人いるではないか。
「《剿滅の魔王》に魔力を借りる」
「は!?」
1000年前の我が輩ならば、《1000年時空間移動》を楽々発動出来るだろう。
1000年前と言えば、勇者が来なくなり始めた頃だし、魔力は有り余っているはずだ。
「安心しろ。一度発動した魔方陣は忘れぬ」
「重要なのそこか!? 魔力が足りないんだよな!?」
「魔王の目の前で魔方陣を描いて、発動して貰う」
「いやいやいや! 発動して貰うって、どうやって頼むつもりだ!? 殺されて終わりだ!」
「問題ない。我が輩に策がある」
我が輩を言いくるめる方法は我が輩自身がよく知っている。
「では、いざ、魔王城へ」
コレールとグロルの腕を掴み、グッと足に魔力を込める。
そして、目的地の方角へ、高く跳び上がった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
転移世界のトラック神と、ひかれたようじょ
寝る犬
ファンタジー
ある日トラックに轢かれた雨宮りん(4歳)の目の前に、トラックに轢かれた人間をチート能力を与えた上で異世界へと転移させる「転移トラック神」が現れた。
トラック神にエセ関西弁の精霊も加えて、異世界で子育てに励むハートフル異世界ファンタジー。
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~
クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。
ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。
下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。
幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない!
「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」
「兵士の武器の質を向上させる!」
「まだ勝てません!」
「ならば兵士に薬物投与するしか」
「いけません! 他の案を!」
くっ、貴族には制約が多すぎる!
貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ!
「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」
「勝てば正義。死ななきゃ安い」
これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる