犬宮賢の行動理念

桜桃-サクランボ-

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犬宮賢と陰陽師

「心優も狙われてる?」

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 心優が神社で雑用している時、犬宮は最古を膝に乗せパソコンに向かっていた。

 モニターに映っているのは、ちょうど心優がいる神社のホームページ。
 そこには赤い文字で”紅城神社”と大きく描かれていた。

 占いを主に行い、相談や厄払いなどもやってくれると書かれている。その隣には料金の記載。
 ホームページを見た感じ、特におかしい所はない。

 犬宮も首を傾げ、眼鏡をかけまじまじと画面を見る。
 だが、いくら見ても気がかりになりそうなものは見つけられない。

「……………………まぁ、ホームページにあるわけないよなぁ。手がかり…………」

 画面から目を離し、眼鏡を取り天井を見上げる。
 目が疲れ、眉間をつまんだ。

 ――――心優はしっかりやってくれているだろうか。
 黒田は、浄化出来たのか。もう動けるようになったのか。

 翔がこの調子だと、俺が出来る事はパソコンで情報を集める事だけ。
 でも、パソコンで集められる情報には限りがある。

 今回の件は、ハッキングも難しいんだよなぁ。
 足跡を付ける気はないけど、今のパソコンでは少し不安。
 まだ、データがぶっ飛んでから元に戻しきれていないしなぁ、はぁ……。

「…………はぁ。――――あ」

 犬宮は諦めパソコンを閉じようとしたが、その手が止まる。
 すぐにキーボードに手を添え、操作し始めた。

 犬宮が調べ出したのは、十年前の紅城神社。

 紅城家は当初、そこまで有名ではなかった。
 実力はそこそこ、弱くもなければ強くもない。
 どこにでもあるような、ただの神社。

 そんな普通の神社だった紅城家は、ある怪異を捕まえたという事で一時期名前が広まり、他の陰陽師達から尊敬され、優遇されていた。

 その怪異の名前は”狗神”。
 狗神はにとりついており、憑き人を紅城神社は捕らえていた。

「――――そう言えば、なんで紅城神社の陰陽師は、俺を捕まえてた時にすぐ殺さなかったんだろう」

 ――――人間だったから?
 に頼まれたから?

 いや、名誉か。
 神社という物は、名前が広がらなければすぐに寂れなくなってしまう。

 紅城家の実力はそんなに高くなかったはず。
 俺を利用して、名前を広めていたんだろうな。だから、殺さなかった。

「――――今回、最初に黒田が狙われたのは俺達を匿っていたからと、俺を逃がしたことでの復讐だろうな。でも、それはあくまでついで。狙いは俺と翔。俺の場合は、今度こそ殺すつもりなのかな」

 俺を殺す、つまり狗神という最恐の怪異を殺したことにもなるだろう。
 そうなれば名前は爆発的に広がり、過去の汚名を返上出来る。

 それに加え、俺の元には翔がいる。

 翔の血は陰陽師なら誰でも欲しいと思う程珍しい、奇血きけつ
 奇血きけつは怪異の力を抑え込むことが可能だし、怪異の討伐などには絶対に使いたい代物だろう。

 俺も、翔の血が無ければ狗神に支配されて思うように力を使えないしね。



『――――喚くな、汚れた餓鬼の後始末をしてやるこちらの事も考えてほしい』

『――――次は腕を切ってみようか。狗神は瘴気があれば体をいくらでも再生できると耳にする』

『――――斬り落とすまではするなよ? 回復しなければまずい』


 ――――――――やめてくれ、もう、痛い事はしないでくれ。

 ――――――――嫌だ、嫌だ嫌だ。こんなことされるんだったらいっそ、俺を殺してくれ!!!



 …………――――キーーーーーン

 ――――っ、耳鳴り、頭が痛い。

 犬宮は頭を支え、痛みに耐えた。
 その時、今まで記憶の奥底にしまっていた過去が、蘇る。

「はぁ、はぁ……。今は、思い出さなくてもいい。現状把握と、紅城家の足取り、企みだけを考えないと……」

 息を切らし、思考を最初に戻す。
 すぐに気持ちを落ち着かせることができ、波打つ心臓もゆっくりとなった。

「えっと……。あいつらの目的は俺と翔。黒田はまた邪魔をされるかもしれないから、最初に殺そうとしたのかな。――――あ」

 ――――俺が狙いなのなら、俺達の事は調べているはず。
 調べてから、動き出しているはず。

「――――つまり、心優も狙われてる?」

 …………ちょっと、やばいか。
 いや、心優なら大丈夫、かな。普通に俺より強いし。

「一応、心優の状況も確認しておこうかな」

 メールには違和感なかったけど、念のため――……

 ※

 神社での生活にも慣れてきた頃、心優はいつものように自室で犬宮に報告するようのメールを打っていた。

 だが、今日は頭を抱え、一向に文面が進んでいない。

「…………なんか、怪しい気がする」

 怪しいと思っているが、その原因が今の心優にはわからない。
 だが、心にもやもやが残り、気分は最悪。

 一度スマホをテーブルに置き、その場に寝転がる。
 天井を見上げ、木目を数えながらぼぉ~とした。

「…………なんだろう。何かが怪しんだけど、わからない」

 目を閉じ、頭の中を整理。
 だが、目まぐるしい雑務しか思い出す事が出来ずため息。

 体を起こし、気分を変えるため上へと伸ばした。
 そんな事をしていても、胸に根付いたもやもやはやっぱり消えない。

 眉間に皺を寄せ唇を尖らせていると、廊下の方から足音が聞こえ始める。
 その音はしっかりと心優の耳にも届き、目を丸くした。

 ――――もしかして、また巴ちゃんかな。
 お買い物は前に行ったばかりだし、何か雑用を残してたのかな。

 足音に集中していると、心優のいる部屋の前で止まる。
 やっぱりかと思いつつ、最後の最後まで動こうとしない心優は、襖の外から聞こえてきた声に目を見張った。

『真矢さん、起きていますか?』

「御子柴さん? はい、起きています」

 ――――な、なんでこんな時間に御子柴さんが?

 返事をしたと同時に心優は、スマホに表示されている時間を確認。
 そこには”11:21”と書かれている。

 今までこのような時間に御子柴が現れる事がなかったため、困惑しつつもスマホをポケットの中に入れ襖を開いた。

「あの、いかがいたっ――――」

 襖を開けた瞬間に襲ってきたのは、頭への強い衝撃。
 目に映ったのは、心優をあざ笑うように見下ろす御子柴と、巴の姿だった。
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