犬宮賢の行動理念

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
42 / 80
犬宮賢と陰陽師

「今日は休もうか」

しおりを挟む
「首無しを殺してもらうためにって、どういうこと……なの?」

 ――――首無しって、怪異の首無しの事だよね?
 私の知っている首無しって、一人しか思い当たらないんだけど……。

 首無しと聞いた瞬間心優の頭の中に浮かんだのは、ヘラヘラと笑っている黒田の顔。
 普段は犬宮に軽くあしらわれることが多い黒田だが、やる時はやる男。

 弁護士の仕事では、犬宮からの証拠だけで裁判に一度も負けた事はなく、怪異相手では、首無しの力をうまく使い相手を倒す。

 飄々としており掴みどころのない男性。
 これが、心優が黒田に思っている印象だった。

 それに加え、犬宮の一番のBL相手とも思っている。

 そんな黒田が人を殺しているところなど想像すら出来ない心優は、思わず首無しについて問いかけてしまった。

「私の両親は、首無しという怪異に殺されたの。私がまだ、小学生の時に」

 胸に手を添え、過去の記憶を思い出し巴の表情は曇る。
 目線を落とし、胸元をきゅっと掴んだ。

「あの、巴ちゃん。なんで、首無しが両親を殺したと思っているの?」

「…………密室だったの」

「ん? 密室?」

「うん…………」

 巴は、過去を思い出しながら心優に話した。
 両親が死んでしまった状況を――……

 ※

 巴がまだ小学生の時に、両親は殺された。

 部屋は密室状態、両親の死は首を切断されたため。
 血は本棚の方に飛び散っており部屋は真っ赤、悲惨な状態だったとのこと。

 部屋は一般的な寝室として使われた場所。
 だが、それだけではなく、本を楽しむ場所としても使っており、中心に丸テーブルと座布団も置かれていた。

 壁側にはダブルのベッド、近くには電気スタンドを置くための台。
 部屋全体に太陽光を注ぎ込むことが出来る窓に、ベッドとは反対側にある壁には本棚があった。

 それ以外には特に目立つものはない、普通の部屋。
 そんな部屋の中心に横たわるように、巴の両親は倒れていた。

 胴体と、頭が離れた状態で。

 証拠はなし、指紋や誰かが侵入した痕跡もない。
 ドアも窓も鍵がかかっており、外からは誰も入れない状態となっていた。

 犯人は突如、その場から姿を消したような状況に、犯人を見つける事が出来ず時効となってしまった。

 ※

 心優は始終相槌すら打たずに聞いていた。

「――――と、こんな感じ。警察が部屋の中をどんなに調べても武器になりそうなものは見つからず、本棚の奥とかも見てくれたみたいだけど、何もなし。だから、密室事件となって、時効。両親を殺した犯人は見つからないまま、今に至るの」

「そ、その話と、首無しという怪異は、どう関係するの?」

 動揺を感づかれないように、心優は冷静を装いつつ問いかけた。

「殺害方法が、首無しという怪異と同じなんですよ」

「え、同じ?」

「はい」

 言いながら巴は、自身のポケットからピンクのハート模様のカバーを付けたスマホを取り出し、画面を操作し始めた。

「…………これ、見てくださった方が早いかなと」
「あ、う、うん」

 スマホを受け取ると、画面には首無しについて書かれている記事が表示されていた。

「――――確かに、首無しは相手の首を自身の物にしたくて、首を刈り取るって書かれてる。特徴として、切断部分は綺麗なまま」

 そのまま読み続けていると、気になる部分があり顔を上げ問いかけた。

「でも、この記事には頭部が無いみたいだけど。巴ちゃんの両親の頭はしっかりと寝室にあったんだよね? これだけだと判断できないんじゃ…………」

「確かにそう。でも、首を持ち変えらなかったケースもあるみたい」

 隣まで移動して来た巴は、スマホを下にスクロールし、読んでほしい部分を拡大させた。

「――――あ、本当だ。でも、理由とかは書かれていないんだ」

「うん。探してみたんだけど、詳しい事は書かれていなかったし、色んな解説があって、もうわからないの。でも、絶対に私の両親は首無しにやられた。これだけは絶対なの! だから、私は巫女としてここで働き、報復するのよ!」

 鼻息荒く言い切った巴に心優は顔を引きつらせつつも、もう一度記事に目を落とす。

 ――――この記事、絵が描かれているんだけど、この絵……どことなく、黒田さんに似てる。
 服装は違うし、目元とかは前髪で見えないけど。なんとなく、雰囲気が似ている。

 まさか、本当に黒田さんが首無しの力を使って、巴ちゃんの両親を殺したの?
 でも、何のために…………。

 心優の中に納得が出来ず疑問だけが広がり、顔を険しく歪める。

「? 心優ちゃん? どうしたの?」

「――――ううん、何でもないよ。話してくれてありがとう。早く用事を終わらせて、今日は休もうか」

「う、うん」

 そのまま二人は他愛無い話をして、頼まれたもの買い寮へと戻った。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の偽花妃 国を追われた巫女見習いは宦官になる

gari@七柚カリン
キャラ文芸
旧題:国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く ☆4月上旬に書籍発売です。たくさんの応援をありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。  そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。  心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。  峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。  仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。

呪われた少女の秘された寵愛婚―盈月―

くろのあずさ
キャラ文芸
異常存在(マレビト)と呼ばれる人にあらざる者たちが境界が曖昧な世界。甚大な被害を被る人々の平和と安寧を守るため、軍は組織されたのだと噂されていた。 「無駄とはなんだ。お前があまりにも妻としての自覚が足らないから、思い出させてやっているのだろう」 「それは……しょうがありません」 だって私は―― 「どんな姿でも関係ない。私の妻はお前だけだ」 相応しくない。私は彼のそばにいるべきではないのに――。 「私も……あなた様の、旦那様のそばにいたいです」 この身で願ってもかまわないの? 呪われた少女の孤独は秘された寵愛婚の中で溶かされる 2025.12.6 盈月(えいげつ)……新月から満月に向かって次第に円くなっていく間の月

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

処理中です...