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個性の花
カフェ
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休憩が終わった後は円滑に体育大会は終わり、振替休日を一華と真理は二人で過ごしていた。
今は一華の部屋で机を囲み、体育大会での出来事について話している。神妙な面持ちで、とんでもない事をしてしまったのではないかと体を震わせていた。
「昨日はテンションだけで色々やってしまったと思うんだけど、大丈夫かな」
「う、うん……。でも、やってしまったものは仕方がないし、なるようになれ的な…………」
テーブルに項垂れる二人。重苦しい空気が部屋の中に広がり、二人はため息を吐いた。
「…………でも、昨日のはなかったと思う。先輩も怒っていたんじゃんないかな」
「たぶん怒っていたと思うよ。だって、先輩、絶対にあんなこと普段言わないし」
今までの優輝は、相手をからかったり一華に正直な気持ちを伝えたりと、自由な面が目立っていた。だが、人を不快にしたり、怒鳴りつけたりしている姿は見た事がない。
そのため、昨日の優輝は二人にとって初めて見る、彼の怒り。無表情のまま、相手を少しずつ少しずつ追い込める言葉の言い回し。相当怒っていたんだと、二人は考えた。
昨日の出来事が二人の頭にへばりつき、離れてはくれない。
「…………白野君、大丈夫かな」
真理は曄途の事が好きで、どうにか出来ないかと考える。だが、曄途の会社はお超大手食品会社で、父親はその会社の社長。一人っ子である曄途も将来は社長の座にたどり着かなければならない。
仕事の内容や礼儀、マナーなどは今のうちに練習する事は悪い事ではなく、必要なことかもしれない。
だが、昨日のは明らかにやりすぎである。
曄途の表情から察するに、執事であるおじいさんとメイドの言葉に納得しているようには見えなかった。
逆に、嫌忌すら感じているように見えた。
周りの圧に気おされ、自身の感情をしまい込み仮面のような笑みを浮かべ続けている曄途。自分より年下には到底思えない彼を救ってあげたいと、捕らわれているような環境から抜け出させてあげたいと。二人は考えた。だが、会社が関わっているとなると、子供である二人がどうにか出来るもんではない。
考えなしに行動すれば今よりもっと曄途が辛い思いをする可能性がある。
抜け出せない思考の沼にはまり藻掻いていると、真理が顔を上げた。
「ねぇ、先輩は何かいい考え持ってないかな」
「黒華先輩? 確かに、昨日のを見るに、頭は良さそうだし、なにか私達が思いつかないような方法とか考えてくれるかも…………」
一華は、テーブルの上に乗っていたスマホを取り出し、連絡帳から”黒華優輝”という名前をタッチして電話をかける。
数回コールが鳴ると、低く甘い声が聞こえた。
『もしもし? 珍しいな、一華から連絡なんて。何かあったか?』
「いえ、昨日の件がどうしても気になってしまって……。今、真理と一緒に話し合っていたんです。もしお時間があれば、黒華先輩のご意見もお借りできたらと思いまして…………」
『なるほどな。俺は構わねぇぞ。ちょうど暇していたからな、どこ行けばいい?』
一切の迷いなく了承してくれた優輝に安堵し、駅近くにあるカフェが良いと伝えた。そこに今から一時間後に待ち合わせと約束をを取り付け、電話を切った。
「それじゃ、いつものカフェで待ち合わせしたからそこに行こうか」
「わざわざカフェじゃなくても、ここに呼べばよかったのにぃ~」
ニヤニヤと一華を見ている真理の顔を押しのけ、「うるさい」と照れたように顔をよそに向ける。
ケラケラと笑いつつ、二人は立ち上がり部屋を後にした。
約束より十分も早く付いた二人は、待つことを覚悟で店の前まで来た。だが、そこにはもう私服姿で待っている優輝の姿があった。
黒いTシャツの中に薄い白い長袖の服。ジーンズを着て帽子をかぶっている彼は、どこかのモデルより綺麗で、一華は思わず立ち止まり見惚れてしまった。
元々優輝の容姿は悪く無い。
フードで顔を隠しているのが勿体ないと思うくらい、一華は優輝の事をかっこいいと思っており、黒髪から覗き見える真紅の瞳は偉人のように美しい。
突然立ち止まった彼女に驚きつつ真理も止まり声をかけると、その声が聞こえ優輝が暇つぶしでいじっていたスマホをポケットの中に入れた。
「どうした?」
「あ、先輩。こんにちは、早いですね。まだ十分前ですよ? 暑くなかったですか?」
「大丈夫だ。今さっき来たばかりだしな。あまり待ってないぞ」
二人が話している間も、一華はおずおずとスタイリッシュな彼を見て頬を染める。
彼女の反応を見て、ニヤニヤと口角を上げ一華の顔に自身の顔を近付かせた。
「初めて見る俺の私服に見惚れたか?」
「み、見惚れていません! 変なことを言わないでください!」
軽く笑い距離をとった優輝は、店の中を指し中に入ろうと二人を促した。
店内に入ると、クーラーが聞き涼しい。
一華と真理は人類の進歩に感謝していると、優輝が受付を済まし席へと案内される。
席につき注文を終らせると、さっそく優輝が本題に入った。
「んで、今回俺が呼ばれたのは、白野の環境をどうにかしたいと言ったもので大丈夫か?」
「はい、どうしても昨日のが頭に残っていて……。白野君も辛そうにし……。だから、どうにか出来ないかなと思ったんです」
しゅんと落ち込みながら一華が聞くと、優輝は唇を尖らせふてくされたように聞いた。
「一華、まさか年下の方が好きなのか?」
「変な勘繰りはやめてください。白野君が好きなのは私ではなく真理です」
「そこで堂々と私の名前の出さないで!?」
赤面する真理の頭を一華が撫で、再度優輝を見た。
「私は単純に、辛いと思う人を見るもが辛いんです。それは真理も一緒で。好きな人相手だからとかではなく、辛い人を少しでも助けたい。そう思ってしまうんです。これは、悪い事ではないでしょう?」
「悪くはねぇが、自分を滅ぼしかねないなぁ。あまり余計な事には首を突っ込まん方がいい。いずれ自分がまきこまれるぞ」
届いた飲み物を受け取り、優輝がそれぞれ配り、自身が頼んだアイスコーヒーを一口飲んだ。
一華は紅茶、真理はメロンソーダを頼み、それぞれ一口飲み喉に潤わせた。
今は一華の部屋で机を囲み、体育大会での出来事について話している。神妙な面持ちで、とんでもない事をしてしまったのではないかと体を震わせていた。
「昨日はテンションだけで色々やってしまったと思うんだけど、大丈夫かな」
「う、うん……。でも、やってしまったものは仕方がないし、なるようになれ的な…………」
テーブルに項垂れる二人。重苦しい空気が部屋の中に広がり、二人はため息を吐いた。
「…………でも、昨日のはなかったと思う。先輩も怒っていたんじゃんないかな」
「たぶん怒っていたと思うよ。だって、先輩、絶対にあんなこと普段言わないし」
今までの優輝は、相手をからかったり一華に正直な気持ちを伝えたりと、自由な面が目立っていた。だが、人を不快にしたり、怒鳴りつけたりしている姿は見た事がない。
そのため、昨日の優輝は二人にとって初めて見る、彼の怒り。無表情のまま、相手を少しずつ少しずつ追い込める言葉の言い回し。相当怒っていたんだと、二人は考えた。
昨日の出来事が二人の頭にへばりつき、離れてはくれない。
「…………白野君、大丈夫かな」
真理は曄途の事が好きで、どうにか出来ないかと考える。だが、曄途の会社はお超大手食品会社で、父親はその会社の社長。一人っ子である曄途も将来は社長の座にたどり着かなければならない。
仕事の内容や礼儀、マナーなどは今のうちに練習する事は悪い事ではなく、必要なことかもしれない。
だが、昨日のは明らかにやりすぎである。
曄途の表情から察するに、執事であるおじいさんとメイドの言葉に納得しているようには見えなかった。
逆に、嫌忌すら感じているように見えた。
周りの圧に気おされ、自身の感情をしまい込み仮面のような笑みを浮かべ続けている曄途。自分より年下には到底思えない彼を救ってあげたいと、捕らわれているような環境から抜け出させてあげたいと。二人は考えた。だが、会社が関わっているとなると、子供である二人がどうにか出来るもんではない。
考えなしに行動すれば今よりもっと曄途が辛い思いをする可能性がある。
抜け出せない思考の沼にはまり藻掻いていると、真理が顔を上げた。
「ねぇ、先輩は何かいい考え持ってないかな」
「黒華先輩? 確かに、昨日のを見るに、頭は良さそうだし、なにか私達が思いつかないような方法とか考えてくれるかも…………」
一華は、テーブルの上に乗っていたスマホを取り出し、連絡帳から”黒華優輝”という名前をタッチして電話をかける。
数回コールが鳴ると、低く甘い声が聞こえた。
『もしもし? 珍しいな、一華から連絡なんて。何かあったか?』
「いえ、昨日の件がどうしても気になってしまって……。今、真理と一緒に話し合っていたんです。もしお時間があれば、黒華先輩のご意見もお借りできたらと思いまして…………」
『なるほどな。俺は構わねぇぞ。ちょうど暇していたからな、どこ行けばいい?』
一切の迷いなく了承してくれた優輝に安堵し、駅近くにあるカフェが良いと伝えた。そこに今から一時間後に待ち合わせと約束をを取り付け、電話を切った。
「それじゃ、いつものカフェで待ち合わせしたからそこに行こうか」
「わざわざカフェじゃなくても、ここに呼べばよかったのにぃ~」
ニヤニヤと一華を見ている真理の顔を押しのけ、「うるさい」と照れたように顔をよそに向ける。
ケラケラと笑いつつ、二人は立ち上がり部屋を後にした。
約束より十分も早く付いた二人は、待つことを覚悟で店の前まで来た。だが、そこにはもう私服姿で待っている優輝の姿があった。
黒いTシャツの中に薄い白い長袖の服。ジーンズを着て帽子をかぶっている彼は、どこかのモデルより綺麗で、一華は思わず立ち止まり見惚れてしまった。
元々優輝の容姿は悪く無い。
フードで顔を隠しているのが勿体ないと思うくらい、一華は優輝の事をかっこいいと思っており、黒髪から覗き見える真紅の瞳は偉人のように美しい。
突然立ち止まった彼女に驚きつつ真理も止まり声をかけると、その声が聞こえ優輝が暇つぶしでいじっていたスマホをポケットの中に入れた。
「どうした?」
「あ、先輩。こんにちは、早いですね。まだ十分前ですよ? 暑くなかったですか?」
「大丈夫だ。今さっき来たばかりだしな。あまり待ってないぞ」
二人が話している間も、一華はおずおずとスタイリッシュな彼を見て頬を染める。
彼女の反応を見て、ニヤニヤと口角を上げ一華の顔に自身の顔を近付かせた。
「初めて見る俺の私服に見惚れたか?」
「み、見惚れていません! 変なことを言わないでください!」
軽く笑い距離をとった優輝は、店の中を指し中に入ろうと二人を促した。
店内に入ると、クーラーが聞き涼しい。
一華と真理は人類の進歩に感謝していると、優輝が受付を済まし席へと案内される。
席につき注文を終らせると、さっそく優輝が本題に入った。
「んで、今回俺が呼ばれたのは、白野の環境をどうにかしたいと言ったもので大丈夫か?」
「はい、どうしても昨日のが頭に残っていて……。白野君も辛そうにし……。だから、どうにか出来ないかなと思ったんです」
しゅんと落ち込みながら一華が聞くと、優輝は唇を尖らせふてくされたように聞いた。
「一華、まさか年下の方が好きなのか?」
「変な勘繰りはやめてください。白野君が好きなのは私ではなく真理です」
「そこで堂々と私の名前の出さないで!?」
赤面する真理の頭を一華が撫で、再度優輝を見た。
「私は単純に、辛いと思う人を見るもが辛いんです。それは真理も一緒で。好きな人相手だからとかではなく、辛い人を少しでも助けたい。そう思ってしまうんです。これは、悪い事ではないでしょう?」
「悪くはねぇが、自分を滅ぼしかねないなぁ。あまり余計な事には首を突っ込まん方がいい。いずれ自分がまきこまれるぞ」
届いた飲み物を受け取り、優輝がそれぞれ配り、自身が頼んだアイスコーヒーを一口飲んだ。
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