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個性の花
底辺
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「おや、それはどういう意味かな?」
一華の言葉に、初めてこの場で曄途の表情が動き、焦り始めた。
「白野君がもし、本気で私達と関わりたくないと思っているのなら、私達は何も言いません。ですが、望んでいるようには見えないのです。それを貴方はどのようにお考えになるのか、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」
「貴方様のような程度の低い方達と行動しておられますと、お坊ちゃんの品位も下がってしまいます。そうなれば、次期社長としての示しがつきません。会社について何も知らない若造が何を言っても意味などありませんよ」
「貴方達にとって会社は、大事な主の息子よりも大事なのですか? 貴方達がお坊ちゃんと呼んでいる曄途君の感情よりも大事なのですか?」
負けじと一華が睨み返していると、曄途が止めに入ろうとした。
「まっ――……」
「ぷっ、あっはっはっはっはっはっ!!! ウケる、これは笑えるわ!」
だが、曄途の声は優輝の笑い声によりかき消された。
なぜいきなり優輝が笑い出したのか分からず、その場にいる全ての人が固まった。
「よっと。いやぁ、何も言わずに終わらせようと思ったんだが、悪い悪い。思わず笑っちまった」
片手をポケットに入れ立ち上がり、涙を拭きながら一華を自身に引き寄せおじいさんから離した。
「悪いな、じーさん。確かに俺達は、そいつと比べれば凡人だ。会社経営者でもなければ、何か特別なことを成し遂げたなどの実績はない。底辺と言われても特に何も思わねぇよ」
「そうでありましょう。我々白野家は、超がつくほどの大型企業を経営しており、お坊ちゃまの父上が当主でございます。貴方達のような平民に何か言われる筋合いはありません」
「そうかそうか。正直、それは俺にとってどうでもいいんだわなぁ」
「なんですと?」
片眉をピクっとあげ、おじいさんが初めて大きな反応を見せた。
しめしめと思い、優輝は楽しげに口角を上げ人を小馬鹿にするように言い放つ。
「俺が──いや、俺達が言ってんのはおめぇらが大事にする会社じゃねぇんだよ。おめぇの後ろにいる奴のことを話してるんだ。おめぇが変に雁字搦めにしている、囚われの王子様のことをな」
優輝の言葉に、曄途が目を大きく開き固まった。
おじいさんも彼の言葉にチラッと、曄途の方を振り返る。
「あんたらは会社がとか、気品がどーたらこーたらと言っているが、それがなんだ? 大手の会社の社長っつーのは確かにすげぇよ。だが、それは今のあいつには関係ねぇだろ。そいつはまだ俺達と同じ学生だ。学生の仕事って何かわかるか? 友達と遊び、人間関係を学び、社会の常識を学ぶこと。それすら理解できてねぇおめぇのような身勝手なじーさんは、今ここで出てきて欲しくないんだが?」
上がっていた口角をさげ、優輝は言い切る。おじいさんと同じくらいの背丈な為、目線が自然と交差した。
お互い負けじと目をそらすことなく、見続けた。
「それがなんだと言うのです。お坊ちゃまには今からでも会社について知ってもらわなければならないのです。友人など不要、どうせお坊ちゃんの経済力などを当てにしてくるゴミしか周りにはいないのです。そんな下劣な人達を相手にする時間があるのなら、会社について少しでも学んだ方がいいでしょう」
「それはおめぇらの勝手な押し付けだろ? 俺達はまだまだ子供だ。大人の勝手に子供を振り回すのはどうなんだ? 礼儀を知らないとさっき言っていたが、おめぇらの方が礼儀を知らねぇだろ。自分の言い分が通らなければ閑寂を起こす。おめぇらの方が礼儀の知らねぇただの糞餓鬼だ」
優輝の言い分に椿は我慢の限界、顔を真っ赤にし怒鳴りつけた。
「ふざけんじゃないわよ! あんたみたいなクソガキにそんな事言われっ――」
「お待ちなさい、椿。貴方、お名前は?」
名前を問いかけた瞬間、突如曄途が顔面蒼白になり、慌て出した。
「じぃや、もういい。ここに居る意味はもない、早く行こう」
「お坊ちゃまが言うのでしたら。もう、このような下品な人達との交流を控えますように。願わくば、もう二度と関わり合いませんように」
「はい…………」
顔を俯かせ、曄途がおじいさんとその場を去ろうとしたとき、優輝が大きく口を開いた。
「黒華優輝、おめぇらが底辺と言って邪険にした糞餓鬼の名前だよ。しっかりと覚えとけよな」
名前を言った瞬間、馬鹿野郎と曄途が目を大きく開き振り返った。
おじいさんは「ほう」と感心したような声を出す。
強気に言い切った優輝に、一華と真理も頷き合い、負けてられないと同じく言い放った。
「私は蝶赤一華!」
「私は糸桐真理!! あんたのお坊ちゃんである白野曄途君の友達の名前だよ! しっかりと覚えといてよね! お、じ、い、ちゃ、ん!!」
指を指し、挑発するように三人はニマニマした笑みを浮かべた。
何を言っているんだと、曄途は困惑し、怖がるように三人を見据えているおじいさんを見上げた。
「わかりました。君達の名前、しかとこの胸に刻んでおきます」
それだけを言い残し、曄途を含む三人はその場から姿を消した。
一華の言葉に、初めてこの場で曄途の表情が動き、焦り始めた。
「白野君がもし、本気で私達と関わりたくないと思っているのなら、私達は何も言いません。ですが、望んでいるようには見えないのです。それを貴方はどのようにお考えになるのか、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」
「貴方様のような程度の低い方達と行動しておられますと、お坊ちゃんの品位も下がってしまいます。そうなれば、次期社長としての示しがつきません。会社について何も知らない若造が何を言っても意味などありませんよ」
「貴方達にとって会社は、大事な主の息子よりも大事なのですか? 貴方達がお坊ちゃんと呼んでいる曄途君の感情よりも大事なのですか?」
負けじと一華が睨み返していると、曄途が止めに入ろうとした。
「まっ――……」
「ぷっ、あっはっはっはっはっはっ!!! ウケる、これは笑えるわ!」
だが、曄途の声は優輝の笑い声によりかき消された。
なぜいきなり優輝が笑い出したのか分からず、その場にいる全ての人が固まった。
「よっと。いやぁ、何も言わずに終わらせようと思ったんだが、悪い悪い。思わず笑っちまった」
片手をポケットに入れ立ち上がり、涙を拭きながら一華を自身に引き寄せおじいさんから離した。
「悪いな、じーさん。確かに俺達は、そいつと比べれば凡人だ。会社経営者でもなければ、何か特別なことを成し遂げたなどの実績はない。底辺と言われても特に何も思わねぇよ」
「そうでありましょう。我々白野家は、超がつくほどの大型企業を経営しており、お坊ちゃまの父上が当主でございます。貴方達のような平民に何か言われる筋合いはありません」
「そうかそうか。正直、それは俺にとってどうでもいいんだわなぁ」
「なんですと?」
片眉をピクっとあげ、おじいさんが初めて大きな反応を見せた。
しめしめと思い、優輝は楽しげに口角を上げ人を小馬鹿にするように言い放つ。
「俺が──いや、俺達が言ってんのはおめぇらが大事にする会社じゃねぇんだよ。おめぇの後ろにいる奴のことを話してるんだ。おめぇが変に雁字搦めにしている、囚われの王子様のことをな」
優輝の言葉に、曄途が目を大きく開き固まった。
おじいさんも彼の言葉にチラッと、曄途の方を振り返る。
「あんたらは会社がとか、気品がどーたらこーたらと言っているが、それがなんだ? 大手の会社の社長っつーのは確かにすげぇよ。だが、それは今のあいつには関係ねぇだろ。そいつはまだ俺達と同じ学生だ。学生の仕事って何かわかるか? 友達と遊び、人間関係を学び、社会の常識を学ぶこと。それすら理解できてねぇおめぇのような身勝手なじーさんは、今ここで出てきて欲しくないんだが?」
上がっていた口角をさげ、優輝は言い切る。おじいさんと同じくらいの背丈な為、目線が自然と交差した。
お互い負けじと目をそらすことなく、見続けた。
「それがなんだと言うのです。お坊ちゃまには今からでも会社について知ってもらわなければならないのです。友人など不要、どうせお坊ちゃんの経済力などを当てにしてくるゴミしか周りにはいないのです。そんな下劣な人達を相手にする時間があるのなら、会社について少しでも学んだ方がいいでしょう」
「それはおめぇらの勝手な押し付けだろ? 俺達はまだまだ子供だ。大人の勝手に子供を振り回すのはどうなんだ? 礼儀を知らないとさっき言っていたが、おめぇらの方が礼儀を知らねぇだろ。自分の言い分が通らなければ閑寂を起こす。おめぇらの方が礼儀の知らねぇただの糞餓鬼だ」
優輝の言い分に椿は我慢の限界、顔を真っ赤にし怒鳴りつけた。
「ふざけんじゃないわよ! あんたみたいなクソガキにそんな事言われっ――」
「お待ちなさい、椿。貴方、お名前は?」
名前を問いかけた瞬間、突如曄途が顔面蒼白になり、慌て出した。
「じぃや、もういい。ここに居る意味はもない、早く行こう」
「お坊ちゃまが言うのでしたら。もう、このような下品な人達との交流を控えますように。願わくば、もう二度と関わり合いませんように」
「はい…………」
顔を俯かせ、曄途がおじいさんとその場を去ろうとしたとき、優輝が大きく口を開いた。
「黒華優輝、おめぇらが底辺と言って邪険にした糞餓鬼の名前だよ。しっかりと覚えとけよな」
名前を言った瞬間、馬鹿野郎と曄途が目を大きく開き振り返った。
おじいさんは「ほう」と感心したような声を出す。
強気に言い切った優輝に、一華と真理も頷き合い、負けてられないと同じく言い放った。
「私は蝶赤一華!」
「私は糸桐真理!! あんたのお坊ちゃんである白野曄途君の友達の名前だよ! しっかりと覚えといてよね! お、じ、い、ちゃ、ん!!」
指を指し、挑発するように三人はニマニマした笑みを浮かべた。
何を言っているんだと、曄途は困惑し、怖がるように三人を見据えているおじいさんを見上げた。
「わかりました。君達の名前、しかとこの胸に刻んでおきます」
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