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個性の花
チーム分け
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体育大会の練習時、一華と真理は日陰で休憩していた。
片手には熱中症にならないためにと配られた水の入ったペットボトル。二人は話しながら冷たい水を飲んでいる。
「今日も日差しが強いねぇ。日焼けしそう」
「確かに、嫌だなぁ。日焼け止めは塗っているけど、不安だよね」
そのような話をしていると、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
次にグランドを使うのは一年生。二年生である一華達は汗を拭いながらグランドから出る。
校舎に戻っていると、前方から一年生が楽し気な声をあげながらグランドに向かっていた。
一年の集団の横を通り抜けていると、一人で移動している曄途の姿。
真理は彼の姿を確認すると頬を赤く染め、一華の手を掴んだ。
「いた、いたよ、一華」
「そ、そうだね」
彼女の興奮に気後れしながらも、横目で曄途を見る。
彼は周りとは混ざろうとせず、一人。遠巻きで見ている人もいるが、声をかけようとはしない。
一人でいる彼の横を通りぬけ、一華達は校舎の中に入った。
「やっぱり、かっこいいよね。白野君。一年生なんて思えない」
「そうだね」
真理の言葉を聞きながらも、彼の悲し気な表情が頭に焼き付き、一華は眉を下げた。
「諦めている…………か」
先日、優輝が言っていた言葉を思い出し、そっと呟く。その言葉に首を傾げ、真理は彼女の名前を呼んだ。
「一華?」
「…………何でもないよ、真理。行こうか」
「う、うん」
靴を履き替え行ってしまった一華の後ろを、置いて行かれないように追いかける。何事もなかったかのように二人は、次の授業の準備を始めた。
体育大会が近づき、練習に熱が入っている生徒達。
花鳥高校では、学年関係なしでチームがわけられる。
赤と白の二チーム。そのチーム発表された次の日から、優輝は機嫌を損ねてしまった。
お昼休みは屋上で優輝、一華、真理の三人で過ごす事が日課となり、今日も一緒に食べていた。
その時に、なぜ優輝が不機嫌なのか真理がおずおずと問いかけた。
「あの、先輩。なぜ、不機嫌なんですか?」
「決まってんだろ。なんで俺だけ白いチームなんだよ。赤チームに入れやがれ……」
この三人で、優輝だけが別のチームへとなってしまった。
膝に顔を埋め項垂れている優輝を見て、二人は苦笑い。何と声をかければいいのか迷っていた。
「そればかりは仕方がないですよ黒華先輩、運です」
「俺はお前とチームを組んで、あわよくば借り物競争のお題が"彼女"とかだったら………と、色々考えていたんだぞ」
「安心してください。例え同じチームだったとしても、貴方の彼女では無いのでそのお題には答えられません」
「彼女候補とか」
「なるつもりありません」
拒否し続ける彼女に、またしても項垂れる優輝。すると、屋上の扉が開かれ曄途が来た。
「あ、白野君、こっちこっち」
一華が呼ぶと、戸惑うように近づき彼女の隣に座る。
手にはお弁当箱と水筒。今日は紙袋はなかった。
「ねぇ、白野君はチーム赤と白、どっちですか?」
「僕は赤でしたよ」
曄途の答えに、二人は口を引き攣らせ項垂れている優輝を見た。
本人は聞いていたのかいないのか、全く反応を見せない。
「先輩達はどちらのチームですか?」
「私と一華は白野君と同じ赤だよ。先輩は……」
気まずそうに彼を見る真理。一華も、目を逸らしながらもそもそとお弁当を食べる。
三人の反応で察した曄途は苦笑い、なぜ優輝が項垂れているのかも理解しお弁当箱を広げた。
「こればかりは運ですので、気にしていても仕方がないかと。それに、先輩達は楽しめればよろしいのでしょう? それなら、チームなどを気にしなくてもいいのかなと思います」
「黙れ、お前に俺の苦しみは分からない」
優輝の返しに、むっと不貞腐れた曄途は「なら、いいです」とお弁当食べ始めた。
「黒華先輩、甘えたさんですか?」
「お前に甘えたさんだ。俺を甘えさせろ」
「お断りします」
顔を上げ一華に言うがサラリと交わされる。またしても項垂れ、優輝は「ちくしょう」と言葉をこぼした。
うーんと腕を組み悩み出した真理が、何を思ったのか突如立ち上がり拳を作った。
「よしっ! なら、私達三人で打倒黒華先輩だね! がんばろー!」
「ならの意味がわからん。これ以上俺を追い詰めないでくれ……」
一華が優輝の頭を撫で諌めているが、その間も真理は「おー」と、一人盛りあがっている。
そんな先輩達の姿を見て、曄途はクスクスと控えめに笑った。
優輝の大きな溜息と共にチャイムがなり、三人は優輝を引きずる形で教室に戻った。
片手には熱中症にならないためにと配られた水の入ったペットボトル。二人は話しながら冷たい水を飲んでいる。
「今日も日差しが強いねぇ。日焼けしそう」
「確かに、嫌だなぁ。日焼け止めは塗っているけど、不安だよね」
そのような話をしていると、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
次にグランドを使うのは一年生。二年生である一華達は汗を拭いながらグランドから出る。
校舎に戻っていると、前方から一年生が楽し気な声をあげながらグランドに向かっていた。
一年の集団の横を通り抜けていると、一人で移動している曄途の姿。
真理は彼の姿を確認すると頬を赤く染め、一華の手を掴んだ。
「いた、いたよ、一華」
「そ、そうだね」
彼女の興奮に気後れしながらも、横目で曄途を見る。
彼は周りとは混ざろうとせず、一人。遠巻きで見ている人もいるが、声をかけようとはしない。
一人でいる彼の横を通りぬけ、一華達は校舎の中に入った。
「やっぱり、かっこいいよね。白野君。一年生なんて思えない」
「そうだね」
真理の言葉を聞きながらも、彼の悲し気な表情が頭に焼き付き、一華は眉を下げた。
「諦めている…………か」
先日、優輝が言っていた言葉を思い出し、そっと呟く。その言葉に首を傾げ、真理は彼女の名前を呼んだ。
「一華?」
「…………何でもないよ、真理。行こうか」
「う、うん」
靴を履き替え行ってしまった一華の後ろを、置いて行かれないように追いかける。何事もなかったかのように二人は、次の授業の準備を始めた。
体育大会が近づき、練習に熱が入っている生徒達。
花鳥高校では、学年関係なしでチームがわけられる。
赤と白の二チーム。そのチーム発表された次の日から、優輝は機嫌を損ねてしまった。
お昼休みは屋上で優輝、一華、真理の三人で過ごす事が日課となり、今日も一緒に食べていた。
その時に、なぜ優輝が不機嫌なのか真理がおずおずと問いかけた。
「あの、先輩。なぜ、不機嫌なんですか?」
「決まってんだろ。なんで俺だけ白いチームなんだよ。赤チームに入れやがれ……」
この三人で、優輝だけが別のチームへとなってしまった。
膝に顔を埋め項垂れている優輝を見て、二人は苦笑い。何と声をかければいいのか迷っていた。
「そればかりは仕方がないですよ黒華先輩、運です」
「俺はお前とチームを組んで、あわよくば借り物競争のお題が"彼女"とかだったら………と、色々考えていたんだぞ」
「安心してください。例え同じチームだったとしても、貴方の彼女では無いのでそのお題には答えられません」
「彼女候補とか」
「なるつもりありません」
拒否し続ける彼女に、またしても項垂れる優輝。すると、屋上の扉が開かれ曄途が来た。
「あ、白野君、こっちこっち」
一華が呼ぶと、戸惑うように近づき彼女の隣に座る。
手にはお弁当箱と水筒。今日は紙袋はなかった。
「ねぇ、白野君はチーム赤と白、どっちですか?」
「僕は赤でしたよ」
曄途の答えに、二人は口を引き攣らせ項垂れている優輝を見た。
本人は聞いていたのかいないのか、全く反応を見せない。
「先輩達はどちらのチームですか?」
「私と一華は白野君と同じ赤だよ。先輩は……」
気まずそうに彼を見る真理。一華も、目を逸らしながらもそもそとお弁当を食べる。
三人の反応で察した曄途は苦笑い、なぜ優輝が項垂れているのかも理解しお弁当箱を広げた。
「こればかりは運ですので、気にしていても仕方がないかと。それに、先輩達は楽しめればよろしいのでしょう? それなら、チームなどを気にしなくてもいいのかなと思います」
「黙れ、お前に俺の苦しみは分からない」
優輝の返しに、むっと不貞腐れた曄途は「なら、いいです」とお弁当食べ始めた。
「黒華先輩、甘えたさんですか?」
「お前に甘えたさんだ。俺を甘えさせろ」
「お断りします」
顔を上げ一華に言うがサラリと交わされる。またしても項垂れ、優輝は「ちくしょう」と言葉をこぼした。
うーんと腕を組み悩み出した真理が、何を思ったのか突如立ち上がり拳を作った。
「よしっ! なら、私達三人で打倒黒華先輩だね! がんばろー!」
「ならの意味がわからん。これ以上俺を追い詰めないでくれ……」
一華が優輝の頭を撫で諌めているが、その間も真理は「おー」と、一人盛りあがっている。
そんな先輩達の姿を見て、曄途はクスクスと控えめに笑った。
優輝の大きな溜息と共にチャイムがなり、三人は優輝を引きずる形で教室に戻った。
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