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真実
「残して」
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朝日が昇り、旧校舎が明るくなる。雲が横に流れ、風が旧校舎を囲う木の葉を揺らしていた。
自然の匂いが窓の隙間から保健室に入り、鼻をくすぐる。
ベッドで横になっている暁音の髪がさらさらと揺れ、破れているカーテンもふわりと動き彼女の横をそよぐ。
「…………ん」
暁音が風に誘われるように動き出し、目を覚ます。ゆっくりと体を起こし、目をこすりながら周りを見回した。そこには、いつもの人がいない。
「…………月海さん?」
探し人の名前を呼ぶが、いつもの気だるげな声は聞こえない。
「ムエン、月海さんはどこ? …………ムエン??」
ムエンの名前を何度も呼ぶが、いつものように出てきてくれない。いつも間髪入れずに出てくるのにと、暁音は焦り始めベッドから降りる。
廊下に顔を出し左右を見るが、人の影どころか気配すら感じない。いつもはなんとも思わない廊下だが、少し不気味に感じ、暁音は微かに体を震わせる。
肌寒い空間が無限に続いているように見え、廊下に出るのも戸惑ってしまう。だが、保健室にいても探し人は見つからないため、暁音は意を決して一歩、足を前に出した。
不安げに左右を見ながら歩いていると、見覚えのある教室にたどり着いた。プレートには3―Bと書かれている。
教室のドアを開け、中に入る。
「ここにも、居ないの?」
すきま風がカーテンを揺らすだけで、人の気配は一切感じない。だが、月海の行動パターンを思い出し、すぐさま教卓に向かい中を覗き見る。しかし、そこにも誰もいない。
暁音は肩を落とし、ため息を吐く。少し期待した自分がおり、悲し気に目を伏せた。
「…………飽きられちゃったのかな」
静かに呟き、立ち上がる。そのまま廊下に向かい、姿を消えてしまった。
☆
数日が経ち、暁音は毎日同じ時間、同じ道で何も変わらない日々を過ごしていた。
一般的な生活、平和で危険の無い生活を送っているにもかかわらず、なぜか毎日不満があるような顔を浮かべ生活していた。
放課後も、最初は旧校舎に向かっていたが、もう誰もいない旧校舎に行っても意味はないと察し、今はもう真っ直ぐ家に帰っている。
授業が終わり、真っすぐ帰宅。部屋に籠り、勉強の日々。特に強制されているわけではないが、他にやることがないため、暁音は教科書を開きノートにシャーペンを走らせていた。
集中していると時間が進むのが早く、いつも数時間は必ず勉強していた。
無表情で、満足したような顔は浮かべず、いくら勉強しても不満のある顔は変わらない。
今も勉強をするため机に向かっていた暁音だったが、目元に疲労が蓄積されていたらしく、視界がぼやけ始めた。
シャーペンを一度机に置き、目元を手でつまむ。天井を見上げ、淡く光る電気を見た。
「…………こんなに一日は、長かったのね」
物哀しい雰囲気を漂わせ、背もたれに思いっきり寄りかかる。そのため、長く使われていた椅子がギシギシと音を鳴らす。音楽などが流れていない静かな空間なため、椅子の音が大きく響き鼓膜を揺らした。
横には大きな窓、夜空が広がり雲が漂う。天候が悪く、月を雲が隠してしまっていた。薄暗く、外には誰もいない。不気味な空気に、暁音は目を逸らし再度机に体を向ける。
またシャーペンを走らせようとしたが、一向に進まない。無理にでも走らせたが、すぐさま消しゴムで消してしまう。
「やっぱり、邪魔だったのかな……」
自然と零れた言葉にハッとなり、目を閉じ頭を抱える。
もう勉強に集中するのは無理と諦め、ベットへと横になってしまった。
☆
朝、教室で本を読んでいると、教師が険しい顔を浮かべながら入ってきた。手には沢山のプリントを抱えており、教卓に置く。
暁音は教師が入ってきたことで読んでいた本を閉じ、顔を上げた。その時、癖のように右手で右の横髪を耳にかける。
「えぇ、皆さんは朝のニュースを見ましたでしょうか」
重苦しい口を開き、教師は朝のニュースについて話しだした。
「ニュースになっていました、大量殺人失踪事件について、朝の会議で話し合いました。ニュースを見ていない生徒は、今から配るプリントに目を通してください」
教師は教卓に置いたプリントを手にし、一番前に座っている生徒に人数分渡した。そのまま一枚だけを手にした生徒は、慣れた手つきで後ろに回す。
暁音は一番後ろなため、もらった瞬間にプリントの内容に目を通し始めた。そこには、大見出しで”大量殺人失踪事件”と、ゴシック体で書かれいる。下には小さな文字で本文と、新聞の切り抜きまでプリントされていた。
「こちら、ここ一週間のニュースをまとめた物になります。事件現場には血痕だけが残り、他には何も証拠は残されていない。狙いもわからず、殺害方法や誰を狙っているのかもわからない。事件が起きた場所がここから近いこともあり、これからは一人で登校下校はせず、必ず集団で帰宅するように。時間は夜に起きているため、部活動も早くに切り上げるようになり、みんなも夜は出歩かないようにしてください。これは、以前世間を騒がせた殺人事件に似ている事から、同じ犯人だと考えられている。今だ犯人は見つかっていない。気を付けるように、以上」
教師はこのまま朝のHRを終らせ、教室をあとにした。
教室内では「このニュース見たぞ」や「怖いよぉ」などの声が飛び交う。そんな中、暁音は冷静に配られたプリントを見て、考え込むように眉間に皺を寄せていた。
「血痕だけを、残して…………」
自然の匂いが窓の隙間から保健室に入り、鼻をくすぐる。
ベッドで横になっている暁音の髪がさらさらと揺れ、破れているカーテンもふわりと動き彼女の横をそよぐ。
「…………ん」
暁音が風に誘われるように動き出し、目を覚ます。ゆっくりと体を起こし、目をこすりながら周りを見回した。そこには、いつもの人がいない。
「…………月海さん?」
探し人の名前を呼ぶが、いつもの気だるげな声は聞こえない。
「ムエン、月海さんはどこ? …………ムエン??」
ムエンの名前を何度も呼ぶが、いつものように出てきてくれない。いつも間髪入れずに出てくるのにと、暁音は焦り始めベッドから降りる。
廊下に顔を出し左右を見るが、人の影どころか気配すら感じない。いつもはなんとも思わない廊下だが、少し不気味に感じ、暁音は微かに体を震わせる。
肌寒い空間が無限に続いているように見え、廊下に出るのも戸惑ってしまう。だが、保健室にいても探し人は見つからないため、暁音は意を決して一歩、足を前に出した。
不安げに左右を見ながら歩いていると、見覚えのある教室にたどり着いた。プレートには3―Bと書かれている。
教室のドアを開け、中に入る。
「ここにも、居ないの?」
すきま風がカーテンを揺らすだけで、人の気配は一切感じない。だが、月海の行動パターンを思い出し、すぐさま教卓に向かい中を覗き見る。しかし、そこにも誰もいない。
暁音は肩を落とし、ため息を吐く。少し期待した自分がおり、悲し気に目を伏せた。
「…………飽きられちゃったのかな」
静かに呟き、立ち上がる。そのまま廊下に向かい、姿を消えてしまった。
☆
数日が経ち、暁音は毎日同じ時間、同じ道で何も変わらない日々を過ごしていた。
一般的な生活、平和で危険の無い生活を送っているにもかかわらず、なぜか毎日不満があるような顔を浮かべ生活していた。
放課後も、最初は旧校舎に向かっていたが、もう誰もいない旧校舎に行っても意味はないと察し、今はもう真っ直ぐ家に帰っている。
授業が終わり、真っすぐ帰宅。部屋に籠り、勉強の日々。特に強制されているわけではないが、他にやることがないため、暁音は教科書を開きノートにシャーペンを走らせていた。
集中していると時間が進むのが早く、いつも数時間は必ず勉強していた。
無表情で、満足したような顔は浮かべず、いくら勉強しても不満のある顔は変わらない。
今も勉強をするため机に向かっていた暁音だったが、目元に疲労が蓄積されていたらしく、視界がぼやけ始めた。
シャーペンを一度机に置き、目元を手でつまむ。天井を見上げ、淡く光る電気を見た。
「…………こんなに一日は、長かったのね」
物哀しい雰囲気を漂わせ、背もたれに思いっきり寄りかかる。そのため、長く使われていた椅子がギシギシと音を鳴らす。音楽などが流れていない静かな空間なため、椅子の音が大きく響き鼓膜を揺らした。
横には大きな窓、夜空が広がり雲が漂う。天候が悪く、月を雲が隠してしまっていた。薄暗く、外には誰もいない。不気味な空気に、暁音は目を逸らし再度机に体を向ける。
またシャーペンを走らせようとしたが、一向に進まない。無理にでも走らせたが、すぐさま消しゴムで消してしまう。
「やっぱり、邪魔だったのかな……」
自然と零れた言葉にハッとなり、目を閉じ頭を抱える。
もう勉強に集中するのは無理と諦め、ベットへと横になってしまった。
☆
朝、教室で本を読んでいると、教師が険しい顔を浮かべながら入ってきた。手には沢山のプリントを抱えており、教卓に置く。
暁音は教師が入ってきたことで読んでいた本を閉じ、顔を上げた。その時、癖のように右手で右の横髪を耳にかける。
「えぇ、皆さんは朝のニュースを見ましたでしょうか」
重苦しい口を開き、教師は朝のニュースについて話しだした。
「ニュースになっていました、大量殺人失踪事件について、朝の会議で話し合いました。ニュースを見ていない生徒は、今から配るプリントに目を通してください」
教師は教卓に置いたプリントを手にし、一番前に座っている生徒に人数分渡した。そのまま一枚だけを手にした生徒は、慣れた手つきで後ろに回す。
暁音は一番後ろなため、もらった瞬間にプリントの内容に目を通し始めた。そこには、大見出しで”大量殺人失踪事件”と、ゴシック体で書かれいる。下には小さな文字で本文と、新聞の切り抜きまでプリントされていた。
「こちら、ここ一週間のニュースをまとめた物になります。事件現場には血痕だけが残り、他には何も証拠は残されていない。狙いもわからず、殺害方法や誰を狙っているのかもわからない。事件が起きた場所がここから近いこともあり、これからは一人で登校下校はせず、必ず集団で帰宅するように。時間は夜に起きているため、部活動も早くに切り上げるようになり、みんなも夜は出歩かないようにしてください。これは、以前世間を騒がせた殺人事件に似ている事から、同じ犯人だと考えられている。今だ犯人は見つかっていない。気を付けるように、以上」
教師はこのまま朝のHRを終らせ、教室をあとにした。
教室内では「このニュース見たぞ」や「怖いよぉ」などの声が飛び交う。そんな中、暁音は冷静に配られたプリントを見て、考え込むように眉間に皺を寄せていた。
「血痕だけを、残して…………」
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