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アザエル
「主の命令」
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肉が切れる音、赤い血飛沫が飛び散る。月海にも降り注ぎ赤く染めていく。
見えないはずの赤く染まる光景を、口元に付いた血を軽く舐めながら月海は見上げる。
倒れかけるアザエルの身体から、最後のあがきというように噴水のような霧が噴射され、その場にいた三人を包み込む。
予想していなかった自体に逃げることが出来ず、月海は顔を覆い、暁音は地面で横になっているムエンを庇うため覆いかぶさった。
暁音の腕の隙間から赤と藍の色が暗闇から光り、アザエルを覗き見た。
「アカネ…………」
「っ、ムエン。起きたんだね、おはよう」
「アカネ、あいつ。ルカ一人じゃ、危ない、かも…………」
「えっ。でも」
暁音はムエンの言葉に胸騒ぎがし、ゆっくりと月海の方へ顔を向けた。
今はまだ、何も見えない。黒い霧に囲まれ、視界が悪く月海がどこにいるのかすらわからない。アザエルすら、霧の中に入ってしまったのか姿を捕えることが出来なくなってしまった。
目を細め、先を見ようとした時。霧がどんどん晴れていき、視界がはっきりとしてきた。
「あ、月海さん!! だいじょっ――……」
やっと月海の影を見つけることができ、心配の声を上げた。だが、言葉は最後まで続くことはなく途中で止まる。
目を大きく開き、口をわなわなと震わせた。強ばってしまい喉が締まり、声が出ない。心臓が大きく波打ち、ムエンを支えている手から力が抜けた。
ムエンは目を伏せ、翼をゆっくりと動かし飛び月海へと向かう。
フラフラと、空中を漂いながら目を伏せ、手を口元に持っていき悲しげに呟く。
「…………即死」
月海は地面に仰向けで倒れていた。左胸に、大きな穴を開けて。
暁音の目からは、涙は出ない。ムエンの目からも。ただただ悲しげに、倒れている月海を見る二人。
何も言葉を発することもせず、動こうともしない。まるで、人形のようになってしまった暁音は、顔を俯かせる。ポタポタと、暁音の髪で隠れている瞳から、透明な雫が落ち地面を濡らした。
月海の死を目の前で見てしまい、暁音は今まで持っていなかった人の死の恐怖が、悲しみが芽生え、涙がとめどなく流れ落ちる。
風が今の空気を洗い流そうと吹き、彼女の顔を隠している髪をそよがせる。そんな彼女に、ムエンは声をかけることも近づくことも出来ず、倒れている月海の近くに足をつけた。手を伸ばし、彼の手を握る。その時、なにかに気づいたのか。
ムエンは信じられないと目を開き、月海の顔を見た。
「……──おめぇらが騙されるんじゃねぇわ、ばーか」
人を小馬鹿にする声、同時に地面に倒れていたはずの月海が、ぐぐぐっと体を起こし、驚愕の表情を浮かべる暁音達を見た。
「ルカ、生きてるの?」
「生きてるからこうして体を動かしたり、話したりができるんだろうが。つーか、こんなに近くなのに、おめぇはまだ気づかねぇの?」
「え、気づくって……あ。これって、返り血?」
「そうだ、あいつの血を利用させてもらったんだよ」
月海の胸元をよく見ると、ただ血が胸元にべったりと付いているだけだった。穴が空いているように見えたのは、ただの赤黒い返り血。
鎌を勢いよく引き抜いた際に勢いよく飛び散ったアザエルの鮮血を、自身の胸元に塗りたくり穴が空いていると相手に思わせるようにしていた。
月海の体に傷はなく、体も余裕で動かしている。その証拠に、地面に落ちたカッターナイフを拾い上げ、上に腕をのばし伸びをしていた。
「なぜだ。あの霧はお主の動きを完全に封じるはず。なのに、なぜ我からの攻撃を避けることが出来た。なぜだ!!」
薄くなった霧から姿を現したアザエルは、鬱憤を晴らすように喚き散らす。背後には、ウヨウヨと動く黒い手。両手を失った彼が出来る最後の攻撃は、影で出来ている黒い手で引きちぎったり、鋭い爪で相手の肉を抉ったりするのみ。
彼自身は見ただけでわかるほどの満身創痍。体も鎌によって穴が開いており、血すら止まっていない。動く度、地面にぽたぽたと大量に落ちていた。
「さぁ、なんでだろうなぁ。俺が天才だからとでも言っておこうか」
今だ現状を把握できていないアザエルは、怒りや困惑で固まっている。彼の様子に月海は白い歯を見せ、高々と笑った。
「あーーあ。やっぱり、楽しいなぁ。人の――いや、今回は堕天使、人外か。どっちでもいいけどな。人の形をしている奴の絶望する顔、逃げ纏う様子、死を意識した時の戦慄させた様子。たまらんぞ、愉快で、体がゾクゾクする。今、俺は味わっているぞ。お前のおかげで、俺は今、非常に楽しいぞ」
自身の身体を摩りながら不気味に笑い、高揚する気持ちを何とか押さえつけながらアザエルを見る。彼に笑顔を向けられ、アザエルはこれから何をされるかわからない恐怖や、月海の異様な思考。歪んだ趣味に顔を青くし、がくがくと膝が笑いバランスが崩れ地面に転ぶ。
腕がないため立ち上がる事が出来ず、近づいて来る月海から逃げたくても足の力でしか動けない。ズルズルと地面を這いずりながら逃げようとするが、月海はその様子ルラ楽しみながらゆっくりと追いかける。
「情けねぇなぁ、それでも堕天使かお前。ただのか弱い人間にそんな体たらく、見せてもいいのか? まぁ、俺は楽しいからいいんだけどな」
ペタペタと。這いつくばっているアザエルのを追いかけ、月海は窪んでいる目を向ける。とうとう壁まで追い込まれてしまったアザエルは、後ろに一瞬、目線を向けた。その際に影が差し、目線を戻すことが出来なくなる。戻してしまった時、自身に何が起きるのかを想像してしまった彼は、顔に近づいて来る気配を感じてもなお、動けない。
「お前、もう一人の俺の絶望する顔が好きなんだろ? させてみろよ。今の俺を引っ込め、もう一人の俺を引きずり出させてみろよ。なぁ、堕天使の底力、俺に見せてくれよ!!!!」
「ぐっ!!!」
アザエルの耳元で囁いた後、月海は右足を上げ、無防備な彼の腹部を踏みつける。うめき声をあげ、口からは唾液が流れ落ちる。
「お前にはそんなに恨みはねぇが。お前は俺の気持ちわかるだろ? 人が絶望で叫んだり、顔を歪めたり。泣き叫んだりする所を見ると、興奮するよなぁ。体に甘いような痺れが走って、気持ちがよくなる。この感覚が、たまらなく良い。お前も、こんな感覚が好きで、人を陥れるんだろ? お前なら、俺を理解してくれるだろ? この、歪んだ趣味を、わかってくれるだろ?」
ゴス、ゴスと。何度も何度も踏みつけ、その度にアザエルはカエルが潰れたような声が口から飛び出る。
「ぐっ!!! なめるなよ、人間!!!!」
アザエルは怒りに任せ叫び、月海を睨み上げる。そんな瞳も今の月海にとってはご褒美。興奮で顔を高騰させ、横に引き延ばされている唇をぺろりと舐める。
その顔を見た瞬間、アザエルはこれ以上逆らってはいけないと即座に察し、歯を食いしばる。
「必ず、この屈辱を晴らしてやる。このままで終わると思うなよ、信喜海大ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!」
「っ!? ちっ!!」
アザエルが地面を黒く染め始める。月海が止めようと手を伸ばすが間に合わず、アザエルは憎しみの表情を浮かべながら黒い沼へと落ちてしまった。
「ムエン!!」
「わかってる!! 絶対に逃がさない!! 主の命令は、絶対だ!!」
月海が叫び、ムエンはすぐさま答える。両手を広げ、地面につけた。すると、そこから徐々に地面が黒くなり、見えない何かを追いかけるように伸びていく。
ムエンが操る影は数メートル先まで伸び、止まった。
次の瞬間――……
ギャァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!
地を這うような凄まじい叫び声が地面から響き、暁音は思わず顔を歪め耳を塞いだ。
影が動きを止めた地面が盛り上がりそこから、大量の赤色の鮮血が噴射し月海達をの降り注ぐ。
見えないはずの赤く染まる光景を、口元に付いた血を軽く舐めながら月海は見上げる。
倒れかけるアザエルの身体から、最後のあがきというように噴水のような霧が噴射され、その場にいた三人を包み込む。
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暁音の腕の隙間から赤と藍の色が暗闇から光り、アザエルを覗き見た。
「アカネ…………」
「っ、ムエン。起きたんだね、おはよう」
「アカネ、あいつ。ルカ一人じゃ、危ない、かも…………」
「えっ。でも」
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目を細め、先を見ようとした時。霧がどんどん晴れていき、視界がはっきりとしてきた。
「あ、月海さん!! だいじょっ――……」
やっと月海の影を見つけることができ、心配の声を上げた。だが、言葉は最後まで続くことはなく途中で止まる。
目を大きく開き、口をわなわなと震わせた。強ばってしまい喉が締まり、声が出ない。心臓が大きく波打ち、ムエンを支えている手から力が抜けた。
ムエンは目を伏せ、翼をゆっくりと動かし飛び月海へと向かう。
フラフラと、空中を漂いながら目を伏せ、手を口元に持っていき悲しげに呟く。
「…………即死」
月海は地面に仰向けで倒れていた。左胸に、大きな穴を開けて。
暁音の目からは、涙は出ない。ムエンの目からも。ただただ悲しげに、倒れている月海を見る二人。
何も言葉を発することもせず、動こうともしない。まるで、人形のようになってしまった暁音は、顔を俯かせる。ポタポタと、暁音の髪で隠れている瞳から、透明な雫が落ち地面を濡らした。
月海の死を目の前で見てしまい、暁音は今まで持っていなかった人の死の恐怖が、悲しみが芽生え、涙がとめどなく流れ落ちる。
風が今の空気を洗い流そうと吹き、彼女の顔を隠している髪をそよがせる。そんな彼女に、ムエンは声をかけることも近づくことも出来ず、倒れている月海の近くに足をつけた。手を伸ばし、彼の手を握る。その時、なにかに気づいたのか。
ムエンは信じられないと目を開き、月海の顔を見た。
「……──おめぇらが騙されるんじゃねぇわ、ばーか」
人を小馬鹿にする声、同時に地面に倒れていたはずの月海が、ぐぐぐっと体を起こし、驚愕の表情を浮かべる暁音達を見た。
「ルカ、生きてるの?」
「生きてるからこうして体を動かしたり、話したりができるんだろうが。つーか、こんなに近くなのに、おめぇはまだ気づかねぇの?」
「え、気づくって……あ。これって、返り血?」
「そうだ、あいつの血を利用させてもらったんだよ」
月海の胸元をよく見ると、ただ血が胸元にべったりと付いているだけだった。穴が空いているように見えたのは、ただの赤黒い返り血。
鎌を勢いよく引き抜いた際に勢いよく飛び散ったアザエルの鮮血を、自身の胸元に塗りたくり穴が空いていると相手に思わせるようにしていた。
月海の体に傷はなく、体も余裕で動かしている。その証拠に、地面に落ちたカッターナイフを拾い上げ、上に腕をのばし伸びをしていた。
「なぜだ。あの霧はお主の動きを完全に封じるはず。なのに、なぜ我からの攻撃を避けることが出来た。なぜだ!!」
薄くなった霧から姿を現したアザエルは、鬱憤を晴らすように喚き散らす。背後には、ウヨウヨと動く黒い手。両手を失った彼が出来る最後の攻撃は、影で出来ている黒い手で引きちぎったり、鋭い爪で相手の肉を抉ったりするのみ。
彼自身は見ただけでわかるほどの満身創痍。体も鎌によって穴が開いており、血すら止まっていない。動く度、地面にぽたぽたと大量に落ちていた。
「さぁ、なんでだろうなぁ。俺が天才だからとでも言っておこうか」
今だ現状を把握できていないアザエルは、怒りや困惑で固まっている。彼の様子に月海は白い歯を見せ、高々と笑った。
「あーーあ。やっぱり、楽しいなぁ。人の――いや、今回は堕天使、人外か。どっちでもいいけどな。人の形をしている奴の絶望する顔、逃げ纏う様子、死を意識した時の戦慄させた様子。たまらんぞ、愉快で、体がゾクゾクする。今、俺は味わっているぞ。お前のおかげで、俺は今、非常に楽しいぞ」
自身の身体を摩りながら不気味に笑い、高揚する気持ちを何とか押さえつけながらアザエルを見る。彼に笑顔を向けられ、アザエルはこれから何をされるかわからない恐怖や、月海の異様な思考。歪んだ趣味に顔を青くし、がくがくと膝が笑いバランスが崩れ地面に転ぶ。
腕がないため立ち上がる事が出来ず、近づいて来る月海から逃げたくても足の力でしか動けない。ズルズルと地面を這いずりながら逃げようとするが、月海はその様子ルラ楽しみながらゆっくりと追いかける。
「情けねぇなぁ、それでも堕天使かお前。ただのか弱い人間にそんな体たらく、見せてもいいのか? まぁ、俺は楽しいからいいんだけどな」
ペタペタと。這いつくばっているアザエルのを追いかけ、月海は窪んでいる目を向ける。とうとう壁まで追い込まれてしまったアザエルは、後ろに一瞬、目線を向けた。その際に影が差し、目線を戻すことが出来なくなる。戻してしまった時、自身に何が起きるのかを想像してしまった彼は、顔に近づいて来る気配を感じてもなお、動けない。
「お前、もう一人の俺の絶望する顔が好きなんだろ? させてみろよ。今の俺を引っ込め、もう一人の俺を引きずり出させてみろよ。なぁ、堕天使の底力、俺に見せてくれよ!!!!」
「ぐっ!!!」
アザエルの耳元で囁いた後、月海は右足を上げ、無防備な彼の腹部を踏みつける。うめき声をあげ、口からは唾液が流れ落ちる。
「お前にはそんなに恨みはねぇが。お前は俺の気持ちわかるだろ? 人が絶望で叫んだり、顔を歪めたり。泣き叫んだりする所を見ると、興奮するよなぁ。体に甘いような痺れが走って、気持ちがよくなる。この感覚が、たまらなく良い。お前も、こんな感覚が好きで、人を陥れるんだろ? お前なら、俺を理解してくれるだろ? この、歪んだ趣味を、わかってくれるだろ?」
ゴス、ゴスと。何度も何度も踏みつけ、その度にアザエルはカエルが潰れたような声が口から飛び出る。
「ぐっ!!! なめるなよ、人間!!!!」
アザエルは怒りに任せ叫び、月海を睨み上げる。そんな瞳も今の月海にとってはご褒美。興奮で顔を高騰させ、横に引き延ばされている唇をぺろりと舐める。
その顔を見た瞬間、アザエルはこれ以上逆らってはいけないと即座に察し、歯を食いしばる。
「必ず、この屈辱を晴らしてやる。このままで終わると思うなよ、信喜海大ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!」
「っ!? ちっ!!」
アザエルが地面を黒く染め始める。月海が止めようと手を伸ばすが間に合わず、アザエルは憎しみの表情を浮かべながら黒い沼へと落ちてしまった。
「ムエン!!」
「わかってる!! 絶対に逃がさない!! 主の命令は、絶対だ!!」
月海が叫び、ムエンはすぐさま答える。両手を広げ、地面につけた。すると、そこから徐々に地面が黒くなり、見えない何かを追いかけるように伸びていく。
ムエンが操る影は数メートル先まで伸び、止まった。
次の瞬間――……
ギャァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!
地を這うような凄まじい叫び声が地面から響き、暁音は思わず顔を歪め耳を塞いだ。
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