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アザエル
「関係ないわね」
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雨に打たれた次の日、学校は休み。
暁音はいつも朝六時半に起きており、それは休みでも変わらずだった。だが、今日はなぜか起きる気配を見せない。
布団をかぶって寝ているが、寝苦しそうに唸っており薄く汗を流している。息が少しだけ荒く、眉間に深い皺を寄せていた。
時計はもう九時を回っており、普段ならもう起きている時間。
「ん。……あれ」
薄く目を開けた暁音は、近くに置いていたスマホの画面を見てゆっくりと体を起こした。まだ視界がはっきりとしておらず、何時か理解が出来ていない。
「っ!」
体を起こすと、頭痛が走り顔を歪ませる。眉間に皺を寄せ、目を閉じ視界を遮った。唸り声が彼女の口から洩れ、相当痛いのがわかる。
何とか痛みがなくなるのを待っていると、数秒で落ち着き始め浅く息を吐く。
ベットに座り直し、頭を支えていた手を下ろし空を見つめ始めた。
「はぁ、寝すぎたのかな……」
やっと意識がはっきりしてきた暁音は、先ほど見えにくかったスマホの画面を再度見て時間を確認した。
画面には九時十三分と書かれており、微かに驚きの声を零す。時間が書かれている画面の下には、日付と曜日を見て安堵の息を吐いた。学校が休みだと確認すると、のそのそと動き始めベットから降りた。
暁音の部屋はシンプル。壁側に白い机と本棚。それに合わせ、テーブルやベットも白。だが、ラグや掛布団などは黒色。
モノトーンが意識されている部屋には余計な物ないため、女性の部屋というには少しばかり落ち着いた雰囲気を醸し出している。
壁側にあるタンスからジーンズと白い長袖。深緑色のフード付きパーカーを暁音は取りだし身につける。
部屋を出て、廊下を歩きリビングへと続く扉を開いた。
「おはようございます」
「あら、おはよう。今日はこんな時間まで寝ていたの? もしかして、どこか痛い?」
リビングには、ピンク色のエプロンを身につけた女性が一人、お皿を手にし暁音に挨拶を返した。珍しい時間の起床なため、心配そうに眉を下げ問いかける。
「大丈夫ですよ、知里さん。それより、今日はパートじゃないのですか?」
「……そぅ、それならよかったわ。パートは休みよ。でも、この後用事があるから出なければならないの。暁音はどこか行く予定ある?」
「はい、少し出かけようと考えています」
「わかったわ、なるべく早く帰ってくるのよ? 最近本当に遅いんだから、お母さんは心配よぉ」
「…………大丈夫ですよ」
彼女の言葉に暁音は一瞬眉を顰めたが、すぐさま気を取り直すように肩を落とし歩き出す。リビングの中心にある四人かけのテーブルに席着くと、知里と呼ばれた暁音の義母は、一度キッチンへと行き何かを手に戻ってきた。
「簡単な物でごめんなさい」
「いえ、いつもありがとうございます」
キッチンから持ってきたのは、お盆に乗せられている香ばしい匂いを漂わせた白米と目玉焼きの乗ったお皿。お味噌汁だった。
簡単な物と口にしていたが、しっかりと作ってくれている。その事に暁音はお礼を口にし、箸を持ち食べ始めた。
「しっかり食べてね。お母さんはもう行くから」
微笑みながら優しく伝え、ピンクのエプロンを取り椅子の背もたれにかけた。
「わかりました。お気を付けて」
「うん、ありがとう。行ってくるわね」
「いってらっしゃい」
「いってきます」
少しだけ悲しい顔を浮かべた知里は、そのままリビングを後にして玄関の方へと向かい姿を消した。そんな背中を暁音は、白米を口に含みながら見届ける。
一息ついた後に、お味噌汁を飲もうとお椀を持つ。すると、いきなり箸を落としお椀を勢いよくテーブルに置いてしまった。目を強く閉じ、頭を抱え始めてしまう。眉間には深い皺が刻まれており、一目見ただけで苦しそうだとわかる。
「っ! うぅ……」
数秒耐えていると、すぐに落ち着いてきたらしく、息を吐き顔を上げた。額からは大粒の汗が流れ出ており、気持ち悪そうに右手で拭う。
息苦しそうに顔を歪めているが、目の前に広がっている温かいご飯を見て目を細めた。
「一体、朝から何なのかしら」
不安が含まれているような言葉を零しつつ箸に手を伸ばし、残りのご飯を食べ始めた。
☆
「月海さん。今日も寝ているのですか」
暁音は朝、身にまとったパーカーと肩掛け鞄を持ち、月海のいる旧校舎へと向かった。今は、”3-B”の教室におり、誰もいないように見える空間に声をかけている。
彼女の声に反応するものはなく、微かな風がカーテンを揺らすのみ。音は何も聞こえず、シーンしていた。
その事に対し、暁音はため息をつき教卓へと向かう。黒板の前でしゃがみ、中を覗き込んだ。
「月海さん、起きて……あれ」
声をかけようとしたが、目的の人がおらず途中で止めてしまう。だが、教卓の中には埃がないため、ここにいたのはあきらか。
暁音はその場から立ち上がり、教室内を見回した。
「また、トイレかな」
ため息をつき彼女は、比較的綺麗な窓側にある椅子に座り、月海が来るのを外を眺めながら待つ事にした。
外は晴天。風も強く吹いているわけではないため心地よい。
雲が横へと逸れ、太陽が強調し過ぎず森や旧校舎を照らす。風で木々が踊るように揺れており、それを見ているだけで気持ちが落ち着く。
いつもより沢山寝たはずなのだが、睡魔が襲ってきてしまい目元をこすり始める。太陽の日差しを受けつつ、暁音は顔を俯かせ瞳を閉じた。
暁音はいつも朝六時半に起きており、それは休みでも変わらずだった。だが、今日はなぜか起きる気配を見せない。
布団をかぶって寝ているが、寝苦しそうに唸っており薄く汗を流している。息が少しだけ荒く、眉間に深い皺を寄せていた。
時計はもう九時を回っており、普段ならもう起きている時間。
「ん。……あれ」
薄く目を開けた暁音は、近くに置いていたスマホの画面を見てゆっくりと体を起こした。まだ視界がはっきりとしておらず、何時か理解が出来ていない。
「っ!」
体を起こすと、頭痛が走り顔を歪ませる。眉間に皺を寄せ、目を閉じ視界を遮った。唸り声が彼女の口から洩れ、相当痛いのがわかる。
何とか痛みがなくなるのを待っていると、数秒で落ち着き始め浅く息を吐く。
ベットに座り直し、頭を支えていた手を下ろし空を見つめ始めた。
「はぁ、寝すぎたのかな……」
やっと意識がはっきりしてきた暁音は、先ほど見えにくかったスマホの画面を再度見て時間を確認した。
画面には九時十三分と書かれており、微かに驚きの声を零す。時間が書かれている画面の下には、日付と曜日を見て安堵の息を吐いた。学校が休みだと確認すると、のそのそと動き始めベットから降りた。
暁音の部屋はシンプル。壁側に白い机と本棚。それに合わせ、テーブルやベットも白。だが、ラグや掛布団などは黒色。
モノトーンが意識されている部屋には余計な物ないため、女性の部屋というには少しばかり落ち着いた雰囲気を醸し出している。
壁側にあるタンスからジーンズと白い長袖。深緑色のフード付きパーカーを暁音は取りだし身につける。
部屋を出て、廊下を歩きリビングへと続く扉を開いた。
「おはようございます」
「あら、おはよう。今日はこんな時間まで寝ていたの? もしかして、どこか痛い?」
リビングには、ピンク色のエプロンを身につけた女性が一人、お皿を手にし暁音に挨拶を返した。珍しい時間の起床なため、心配そうに眉を下げ問いかける。
「大丈夫ですよ、知里さん。それより、今日はパートじゃないのですか?」
「……そぅ、それならよかったわ。パートは休みよ。でも、この後用事があるから出なければならないの。暁音はどこか行く予定ある?」
「はい、少し出かけようと考えています」
「わかったわ、なるべく早く帰ってくるのよ? 最近本当に遅いんだから、お母さんは心配よぉ」
「…………大丈夫ですよ」
彼女の言葉に暁音は一瞬眉を顰めたが、すぐさま気を取り直すように肩を落とし歩き出す。リビングの中心にある四人かけのテーブルに席着くと、知里と呼ばれた暁音の義母は、一度キッチンへと行き何かを手に戻ってきた。
「簡単な物でごめんなさい」
「いえ、いつもありがとうございます」
キッチンから持ってきたのは、お盆に乗せられている香ばしい匂いを漂わせた白米と目玉焼きの乗ったお皿。お味噌汁だった。
簡単な物と口にしていたが、しっかりと作ってくれている。その事に暁音はお礼を口にし、箸を持ち食べ始めた。
「しっかり食べてね。お母さんはもう行くから」
微笑みながら優しく伝え、ピンクのエプロンを取り椅子の背もたれにかけた。
「わかりました。お気を付けて」
「うん、ありがとう。行ってくるわね」
「いってらっしゃい」
「いってきます」
少しだけ悲しい顔を浮かべた知里は、そのままリビングを後にして玄関の方へと向かい姿を消した。そんな背中を暁音は、白米を口に含みながら見届ける。
一息ついた後に、お味噌汁を飲もうとお椀を持つ。すると、いきなり箸を落としお椀を勢いよくテーブルに置いてしまった。目を強く閉じ、頭を抱え始めてしまう。眉間には深い皺が刻まれており、一目見ただけで苦しそうだとわかる。
「っ! うぅ……」
数秒耐えていると、すぐに落ち着いてきたらしく、息を吐き顔を上げた。額からは大粒の汗が流れ出ており、気持ち悪そうに右手で拭う。
息苦しそうに顔を歪めているが、目の前に広がっている温かいご飯を見て目を細めた。
「一体、朝から何なのかしら」
不安が含まれているような言葉を零しつつ箸に手を伸ばし、残りのご飯を食べ始めた。
☆
「月海さん。今日も寝ているのですか」
暁音は朝、身にまとったパーカーと肩掛け鞄を持ち、月海のいる旧校舎へと向かった。今は、”3-B”の教室におり、誰もいないように見える空間に声をかけている。
彼女の声に反応するものはなく、微かな風がカーテンを揺らすのみ。音は何も聞こえず、シーンしていた。
その事に対し、暁音はため息をつき教卓へと向かう。黒板の前でしゃがみ、中を覗き込んだ。
「月海さん、起きて……あれ」
声をかけようとしたが、目的の人がおらず途中で止めてしまう。だが、教卓の中には埃がないため、ここにいたのはあきらか。
暁音はその場から立ち上がり、教室内を見回した。
「また、トイレかな」
ため息をつき彼女は、比較的綺麗な窓側にある椅子に座り、月海が来るのを外を眺めながら待つ事にした。
外は晴天。風も強く吹いているわけではないため心地よい。
雲が横へと逸れ、太陽が強調し過ぎず森や旧校舎を照らす。風で木々が踊るように揺れており、それを見ているだけで気持ちが落ち着く。
いつもより沢山寝たはずなのだが、睡魔が襲ってきてしまい目元をこすり始める。太陽の日差しを受けつつ、暁音は顔を俯かせ瞳を閉じた。
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