98 / 130
真陽留
「狐の面か」
しおりを挟む
明人は二人の声に合わせるように、瞼を少し開けた。漆黒の瞳に不安そうな表情を浮かべている音禰と真陽留の顔が映る。
その目は虚ろで、状況を確認するように瞳をゆっくりと動かしていた。そのあと、上半身を起こし、今度は周りをしっかりと見回した。その時、自身の右手で視線を止めた。
二人は不思議に思い、視線を辿る。そこには、音禰が明人の手を大事そうに握っているのが見えた。
「あ、い、いや、これは違うの!!」
顔を真っ赤にし、すぐさま手を離す音禰。言い訳を並べ、一人で慌てている。そんな彼女の様子表情一つ変えずに、明人は自身の手を見つめる。その後、色々確認した彼は、最後に自身の傷口に手を置き確認を終えた。
音禰は赤い顔のまま、なんの反応も見せない明人を見て頬を膨らませる。否定しつつも、何も反応がないのも嫌だった。真陽留は呆れた顔を浮かべ、慰めるように音禰の肩にポンッと、手を置いた。
明人はそんな二人の様子など気にせずため息を吐いたあと、ファルシーに目を向け文句をぶつけた。
「────おせぇわ」
「ごめんなさいね。でも、死ななかったのだから良かったじゃない」
明人がファルシーを睨んでいると、音禰が震える両手を伸ばし彼の頬に手を添えた。
「あっ?」
「相想、相想。私の事、覚えて──ないよね」
名前を呼び確認しようとするが、記憶が無いのは予め聞いていたためすぐに自信をなくし、悲しげに目を伏せてしまう。その様子見た彼は、頬に添えられている手を優しく包み込みながら、言葉を伝えた。
「確かに忘れてるが、お前の事ぐらいわかるわ、舐めんな。…………音禰」
付け足すように明人が名前を呼ぶと、その事に音禰は嬉しさと感動が入り交じった綺麗な笑顔を浮かべた。我慢できず、彼女は思わず明人に抱き着いてしまった。
「なっ、おい!!」
「相想、相想!!!」
抱きつきながら涙を流す音禰は、何度も何度も名前を呼んだ。確認するように。もう、今のぬくもりを失わないように、何度も。
明人はこのような経験が今までなかったため、どうすればいいのかわからず、行き場のない手を真陽留の方向へと伸ばす。声には出さず口パクで『た、す、け、ろ』と言っていた。
真陽留は珍しいこの状況に面白さが目覚め、嫌味ったらしい笑みを浮かべたあと、顔を逸らし「ファルシーちゃん、今回の事なんだけど~」とわざとらしく話題を逸らした。
「クソがっ!!!」
明人は音禰に聞こえないような小声で真陽留に怒りをぶつけた。それを、彼は今までの仕返しというように舌を出し無視し続ける。
そんな二人のやり取りなど知らない音禰は、今も明人の本名を何度も口にしていた。絶対に離さないというように抱きしめながら。
それに耐え切る事が出来なくなった彼は、音禰の肩を掴み、自身から無理やり引き離した。
「ちょっ、何するのそう──」
「るっせわ」
少し乱暴に引き離してしまったため、音禰は少し顔を歪ませ文句を口にしようとしたが、彼が顔を背けてしまったため続きを言う事は躊躇われた。それだけでなく、髪から覗いている耳はほんのり赤くなっており、音禰はそれを目にした時、控え目に笑みを作り、嬉しそうに「しょうがないなー」と明人から少し離れた。
「何笑ってやがる、てめぇ」
「なんでもないよ。相想はツンデレさんなんだねって思っただけ」
音禰が口にした言葉で真陽留とファルシーは吹き出し、明人は石のように固まった。
そして──
「っ誰がツンデレだぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
明人の怒声が小屋の中に響き渡り、音禰含む彼以外の人達の笑い声が、外にまで漏れる。林に広がっていた重苦しい空気は、そんな三人の笑い声により、少しだけ軽くなったように感じた。
☆
「なるほどな。カクリは悪魔に連れ去られたか」
三人は明人がいくら待っても落ち着かず、ずっと笑い続けていた、そのため、その姿に堪忍袋の緒が切れた彼は、顔を怒りで赤くし右手を振り上げる。そして、次の瞬間に一度だけ、何かを殴るような音が響き、それと同時に笑い声は消えた。
小屋の中には、頭に大きなたんこぶを作った真陽留がふてくされながらも、明人が気絶したあとの事を彼に伝えている光景があった。
真陽留との契約が解除され、カクリは連れ去られてしまった事。それと、狐の面を見せながら『力を失った神』についても同時に伝えた。
「狐の面か。力を失った神──まさか、あの化け狐が殺られたのか? そんな訳ないと思うが…………」
その説明に少しの疑問を持つが、納得するしかなく。明人はそれ以上何も言わなかった。
”力を失った神”とはレーツェルの事。彼は正体不明で、年齢、過去、存在など。分からない事ばかりだが、明人はそんな彼が殺られるなどありえないと考えていた。
「確か、この狐の面がなければあいつはただの化け狐になる──とか、言ってた気がする。いつだったか…………」
「ただの化け狐? それってどういう事?」
「単純に考えて。恐らくだが、力を抑えているのがその狐の面なんだろう」
真陽留に向けられた質問を、明人が簡潔に答えた。
「力を抑えないといけないほど強い人って事?」
「可能性の一つとして考えられるってだけだ。それに、厳密に言えば人ではない」
「そこはどうでもいいだろ……」
明人は訂正するところをしっかりと訂正し、真陽留が呆れ気味にツッコミを入れる。
「おそらく、カクリは小屋の奥にある洞窟にお持ち帰りされたんだろうな」
「言い方おかしいだろ」
「どうしてそう思うのかしら?」
真陽留のツッコミが無かったかのように、ファルシーが空中に浮かびながら問いかけた。
「ここの奥にある洞窟は、人間の俺でも少し何かを感じた──気がする」
「気の所為だろ」
「気の所為かもしれねぇが、それでも可能性の一つとして考える必要がある。今は情報がまるでない。そうやってなんでも気の所為で済ませたら何もわからずただ無駄に時間が過ぎるだけだ。後先考えてから発言するんだな」
真陽留の言葉を肯定、今の現状の説明、否定と。
しっかりと説明した明人に対し真陽留は何も言えず肩を落とし、音禰も苦笑いを浮かべてしまった。
「あれ、相想ってこんなに嫌味ったらしかったっけ。なんか、レベルが上がってない?」
「どこでレベル上げを行ったんだか。あぁ、この小屋がレベル上げの宝庫だったのか納得」
「俺はお前の頭脳がレベルアップしてくれる事を心から祈っているよ。この小屋にその効果があればいいな」
考えながらも音禰と真陽留の会話はしっかりと耳に入っており、明人は倍の嫌味で返す。真陽留は何とか我慢しその言葉を聞き流そうとしているが、怒りは込み上げてきているため、体を小さく震わせていた。
そんな様子など一切気にせず、明人はファルシーに質問する。
「今ここで力を使えるのは音禰だけか……。ファルシーはどんな事が出来るんだ?」
「私? そうねぇ。相手の攻撃を無効化、治癒。そんな中でも一番得意なのは、私の美貌に見惚れさせ──」
「なるほど。攻撃の無効化はだいぶ美味しいな。治癒は音禰に頼めば出来るだろうし。その治癒には何か条件はあるのか?」
「…………回数制限を付けさせてもらったわ」
「分かった」
明人はその説明を受け、いつものように考え込む。
それをじっと、期待の籠った瞳で音禰は見ており、真陽留はそんな彼女を見て悲しげに笑みを浮かべる。
この状況をどうにか出来るのは明人しかいないのはわかっているため、目線を逸らしつつ、静かに待つ事にした。
その目は虚ろで、状況を確認するように瞳をゆっくりと動かしていた。そのあと、上半身を起こし、今度は周りをしっかりと見回した。その時、自身の右手で視線を止めた。
二人は不思議に思い、視線を辿る。そこには、音禰が明人の手を大事そうに握っているのが見えた。
「あ、い、いや、これは違うの!!」
顔を真っ赤にし、すぐさま手を離す音禰。言い訳を並べ、一人で慌てている。そんな彼女の様子表情一つ変えずに、明人は自身の手を見つめる。その後、色々確認した彼は、最後に自身の傷口に手を置き確認を終えた。
音禰は赤い顔のまま、なんの反応も見せない明人を見て頬を膨らませる。否定しつつも、何も反応がないのも嫌だった。真陽留は呆れた顔を浮かべ、慰めるように音禰の肩にポンッと、手を置いた。
明人はそんな二人の様子など気にせずため息を吐いたあと、ファルシーに目を向け文句をぶつけた。
「────おせぇわ」
「ごめんなさいね。でも、死ななかったのだから良かったじゃない」
明人がファルシーを睨んでいると、音禰が震える両手を伸ばし彼の頬に手を添えた。
「あっ?」
「相想、相想。私の事、覚えて──ないよね」
名前を呼び確認しようとするが、記憶が無いのは予め聞いていたためすぐに自信をなくし、悲しげに目を伏せてしまう。その様子見た彼は、頬に添えられている手を優しく包み込みながら、言葉を伝えた。
「確かに忘れてるが、お前の事ぐらいわかるわ、舐めんな。…………音禰」
付け足すように明人が名前を呼ぶと、その事に音禰は嬉しさと感動が入り交じった綺麗な笑顔を浮かべた。我慢できず、彼女は思わず明人に抱き着いてしまった。
「なっ、おい!!」
「相想、相想!!!」
抱きつきながら涙を流す音禰は、何度も何度も名前を呼んだ。確認するように。もう、今のぬくもりを失わないように、何度も。
明人はこのような経験が今までなかったため、どうすればいいのかわからず、行き場のない手を真陽留の方向へと伸ばす。声には出さず口パクで『た、す、け、ろ』と言っていた。
真陽留は珍しいこの状況に面白さが目覚め、嫌味ったらしい笑みを浮かべたあと、顔を逸らし「ファルシーちゃん、今回の事なんだけど~」とわざとらしく話題を逸らした。
「クソがっ!!!」
明人は音禰に聞こえないような小声で真陽留に怒りをぶつけた。それを、彼は今までの仕返しというように舌を出し無視し続ける。
そんな二人のやり取りなど知らない音禰は、今も明人の本名を何度も口にしていた。絶対に離さないというように抱きしめながら。
それに耐え切る事が出来なくなった彼は、音禰の肩を掴み、自身から無理やり引き離した。
「ちょっ、何するのそう──」
「るっせわ」
少し乱暴に引き離してしまったため、音禰は少し顔を歪ませ文句を口にしようとしたが、彼が顔を背けてしまったため続きを言う事は躊躇われた。それだけでなく、髪から覗いている耳はほんのり赤くなっており、音禰はそれを目にした時、控え目に笑みを作り、嬉しそうに「しょうがないなー」と明人から少し離れた。
「何笑ってやがる、てめぇ」
「なんでもないよ。相想はツンデレさんなんだねって思っただけ」
音禰が口にした言葉で真陽留とファルシーは吹き出し、明人は石のように固まった。
そして──
「っ誰がツンデレだぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
明人の怒声が小屋の中に響き渡り、音禰含む彼以外の人達の笑い声が、外にまで漏れる。林に広がっていた重苦しい空気は、そんな三人の笑い声により、少しだけ軽くなったように感じた。
☆
「なるほどな。カクリは悪魔に連れ去られたか」
三人は明人がいくら待っても落ち着かず、ずっと笑い続けていた、そのため、その姿に堪忍袋の緒が切れた彼は、顔を怒りで赤くし右手を振り上げる。そして、次の瞬間に一度だけ、何かを殴るような音が響き、それと同時に笑い声は消えた。
小屋の中には、頭に大きなたんこぶを作った真陽留がふてくされながらも、明人が気絶したあとの事を彼に伝えている光景があった。
真陽留との契約が解除され、カクリは連れ去られてしまった事。それと、狐の面を見せながら『力を失った神』についても同時に伝えた。
「狐の面か。力を失った神──まさか、あの化け狐が殺られたのか? そんな訳ないと思うが…………」
その説明に少しの疑問を持つが、納得するしかなく。明人はそれ以上何も言わなかった。
”力を失った神”とはレーツェルの事。彼は正体不明で、年齢、過去、存在など。分からない事ばかりだが、明人はそんな彼が殺られるなどありえないと考えていた。
「確か、この狐の面がなければあいつはただの化け狐になる──とか、言ってた気がする。いつだったか…………」
「ただの化け狐? それってどういう事?」
「単純に考えて。恐らくだが、力を抑えているのがその狐の面なんだろう」
真陽留に向けられた質問を、明人が簡潔に答えた。
「力を抑えないといけないほど強い人って事?」
「可能性の一つとして考えられるってだけだ。それに、厳密に言えば人ではない」
「そこはどうでもいいだろ……」
明人は訂正するところをしっかりと訂正し、真陽留が呆れ気味にツッコミを入れる。
「おそらく、カクリは小屋の奥にある洞窟にお持ち帰りされたんだろうな」
「言い方おかしいだろ」
「どうしてそう思うのかしら?」
真陽留のツッコミが無かったかのように、ファルシーが空中に浮かびながら問いかけた。
「ここの奥にある洞窟は、人間の俺でも少し何かを感じた──気がする」
「気の所為だろ」
「気の所為かもしれねぇが、それでも可能性の一つとして考える必要がある。今は情報がまるでない。そうやってなんでも気の所為で済ませたら何もわからずただ無駄に時間が過ぎるだけだ。後先考えてから発言するんだな」
真陽留の言葉を肯定、今の現状の説明、否定と。
しっかりと説明した明人に対し真陽留は何も言えず肩を落とし、音禰も苦笑いを浮かべてしまった。
「あれ、相想ってこんなに嫌味ったらしかったっけ。なんか、レベルが上がってない?」
「どこでレベル上げを行ったんだか。あぁ、この小屋がレベル上げの宝庫だったのか納得」
「俺はお前の頭脳がレベルアップしてくれる事を心から祈っているよ。この小屋にその効果があればいいな」
考えながらも音禰と真陽留の会話はしっかりと耳に入っており、明人は倍の嫌味で返す。真陽留は何とか我慢しその言葉を聞き流そうとしているが、怒りは込み上げてきているため、体を小さく震わせていた。
そんな様子など一切気にせず、明人はファルシーに質問する。
「今ここで力を使えるのは音禰だけか……。ファルシーはどんな事が出来るんだ?」
「私? そうねぇ。相手の攻撃を無効化、治癒。そんな中でも一番得意なのは、私の美貌に見惚れさせ──」
「なるほど。攻撃の無効化はだいぶ美味しいな。治癒は音禰に頼めば出来るだろうし。その治癒には何か条件はあるのか?」
「…………回数制限を付けさせてもらったわ」
「分かった」
明人はその説明を受け、いつものように考え込む。
それをじっと、期待の籠った瞳で音禰は見ており、真陽留はそんな彼女を見て悲しげに笑みを浮かべる。
この状況をどうにか出来るのは明人しかいないのはわかっているため、目線を逸らしつつ、静かに待つ事にした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
アルファポリス文庫より、書籍発売中です!
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
大正石華恋蕾物語
響 蒼華
キャラ文芸
■一:贄の乙女は愛を知る
旧題:大正石華戀奇譚<一> 桜の章
――私は待つ、いつか訪れるその時を。
時は大正。処は日の本、華やぐ帝都。
珂祥伯爵家の長女・菫子(とうこ)は家族や使用人から疎まれ屋敷内で孤立し、女学校においても友もなく独り。
それもこれも、菫子を取り巻くある噂のせい。
『不幸の菫子様』と呼ばれるに至った過去の出来事の数々から、菫子は誰かと共に在る事、そして己の将来に対して諦観を以て生きていた。
心許せる者は、自分付の女中と、噂畏れぬただ一人の求婚者。
求婚者との縁組が正式に定まろうとしたその矢先、歯車は回り始める。
命の危機にさらされた菫子を救ったのは、どこか懐かしく美しい灰色の髪のあやかしで――。
そして、菫子を取り巻く運命は動き始める、真実へと至る悲哀の終焉へと。
■二:あやかしの花嫁は運命の愛に祈る
旧題:大正石華戀奇譚<二> 椿の章
――あたしは、平穏を愛している
大正の時代、華の帝都はある怪事件に揺れていた。
其の名も「血花事件」。
体中の血を抜き取られ、全身に血の様に紅い花を咲かせた遺体が相次いで見つかり大騒ぎとなっていた。
警察の捜査は後手に回り、人々は怯えながら日々を過ごしていた。
そんな帝都の一角にある見城診療所で働く看護婦の歌那(かな)は、優しい女医と先輩看護婦と、忙しくも充実した日々を送っていた。
目新しい事も、特別な事も必要ない。得る事が出来た穏やかで変わらぬ日常をこそ愛する日々。
けれど、歌那は思わぬ形で「血花事件」に関わる事になってしまう。
運命の夜、出会ったのは紅の髪と琥珀の瞳を持つ美しい青年。
それを契機に、歌那の日常は変わり始める。
美しいあやかし達との出会いを経て、帝都を揺るがす大事件へと繋がる運命の糸車は静かに回り始める――。
※時代設定的に、現代では女性蔑視や差別など不適切とされる表現等がありますが、差別や偏見を肯定する意図はありません。
世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~
ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。
「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。
世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった!
次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で
幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──!
「この世に、幽霊事件なんてありえません」
幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の
ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる