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真陽留
「俺の呪いを解いた後にな」
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「────は?」
真陽留は口をポカンと開け、明人を見下ろしている。だが、そんな目線を向けられている本人は全く気にせず、「だるいなー」とボヤいていた。
「…………ふざけるなよ?!!?」
我に返った真陽留は、慌てながら叫びに近い声を出し。明人の様子などお構い無しに無理やり体を起こし、肩を揺さぶった。
「ま、まて。待て待て待て。は、吐く──」
弱っていたため、明人はなんの抵抗も出来ず、口元に手を置き顔を青くしてしまう。その様子を目の当たりにし、真陽留も同じく顔を青くし先程より大きな叫び声を上げた。
「は、吐くならトイレで吐けぇぇぇええ!!!!」
それからは明人が落ち着くまで、カクリと真陽留は余計な事をせず静かに待つ事にした。
☆
「死ぬかと思った」
「いっそ死んだ方がいいんじゃないか?」
「お前がな」
顔はまだ青いが何とか落ち着き、頭を支えながら明人は酔っ払いのようにソファーへと力なく座った。
「話は出来るようになったらしいな」
「…………そうだな」
だるそうな顔のまま、真陽留の顔をちらっと見て頷く。
真陽留はソファーの背もたれに寄りかかり話を聞く体勢を作っており、カクリもいつもの椅子に座り直した。
「んで、僕の記憶を覗き見した今でもなんも覚えてねぇーの?」
「てめぇの想いの中で見た記憶は覚えている。だが、それは他人事のような感覚なんだよ。映画を見ているみたいな感じだ。あれが俺の記憶と言われても、ピンと来ねぇ」
ソファーに座り直し顎に手を当て、彼は思い出しながら口にする。
「まぁ、そうだろうな。なら、まずは記憶を戻してやるよ。これ貸しな」
「てめぇが勝手に暴走して、勝手に悪魔と契約して。勝手に俺の記憶を奪ったんだろうが。なにが貸しだよ。俺が貸しを作りまくってんだよ。そのうちの一つを返させてやるって言ってんだよ。逆に感謝して欲しいものだな」
明人の次から次へと溢れ出る言葉に、真陽留は何も言えず苦笑いを浮かべ握り拳を作る。そんな彼の事を無視し、明人は立ち上がろうとした──が、顔を一瞬歪める。
「──ちっ」
立ち上がる事が出来ず、またソファー座ってしまった。
「何やってんだおま──」
魔蛭が冷ややかな瞳を向けながら聞こうとした時、明人が間髪入れずに彼の背中に拳を入れた。
それにより魔蛭は背中を抑え、ソファーの後ろで蹲る。相当痛かったらしく、体が微かに震えていた。
「──足に力が入らねぇ。完全に痛みも無くなった訳じゃねぇか。まだ痛むな」
真陽留の様子を一切気にせず、明人は自身の体の異変を気にしていた。
肩を抑えながらもう一度立ち上がろうと試みるも、すぐにソファーへと逆戻りしてしまう。
カクリは心配そうに名前を呼ぶが、明人は返事する事なく考え込んでいた。
「力が入らない割に、僕を痛めつけられるのはどうなんだよクソがっ」
「ツボを押したからな。もっと悶え苦しむ予定だったが、やっぱり力が入らないからこれぐらいで終わっちまったか。ちっ」
「やっぱり殺すぞ」
「どうすればいいかねぇ」
「無視かよ……」
真陽留はそれ以上口にせず、明人と共に考え始める。
「似た者同士気が合うという事か」
そんな二人を横目に、カクリは首を傾げながら言葉を零した。
☆
「わかった、よし。カクリ、呪いを解け」
「無理だ」
「諦めんなよ。試合する前に諦める馬鹿がどこにいんだよ。根性で乗り越えろや」
「まさか明人の口からそのような言葉がな。根性など無縁な言葉だろう」
「まぁな」
カクリはジトッとした目で彼を見て「結局、何がわかったのだ」と問いかける。
「とりあえず、奥にある黒い匣と記憶。あれを利用する」
「利用とは、何をする気なのだ?」
カクリは疑問をそのまま問いかけ、真陽留は二人の会話など気にせず考え続けていた。
「元々、なぜ記憶を集めているのか、お前忘れてないか? 集めた記憶の中に俺の記憶の欠片があるかもしれないという理由と、呪いを解く事が出来るかもしれないという理由で集めてたんだろうが。んで、黒い匣も同じく記憶探しと──まぁ、もう半分は俺の趣味だな」
「おい」
明人の適当加減に、真陽留は思考を止め思わずつっこんでしまう。が、それに対してなんの反応もなく、真面目な顔で明人は話続ける。
「おい真陽留。お前はなんで人の匣を集めてた?」
「それは、お前をおびき出すためと、ベルゼに渡すため。あとは、音禰に飲ませ相想の記憶を維持させるためだ」
「なるほどな。あの悪魔か……。最近変わった事はないのか?」
「変わった事か? ベルゼの事なら特に何も──いや、見た目は変わってた、気がする?」
必死に思い出そうと首を傾げながら、真陽留はポツポツと話す。
「変わってた?」
「あぁ。僕の記憶はなぜか曖昧なんだけど、なんか……。大人の姿になってた気がする……?」
真陽留が思い出しながら言うと、明人は口角を上げカクリに再度目を向けた。
「カクリ、呪いが解けるかもしれねぇぞ」
「本当か?!」
カクリは嬉しそうに明人に近付き、目を輝かせた。
「──僕のところにもこんな妖が来てくれたらな……」
「口うるさいだけの糞ガキだ。欲しけりゃくれてやるわ。俺の呪いを解いた後にな」
「私はものでは無い」
そんな会話をしたあと、明人は二人に呪いを解く方法を伝えた。
真陽留は口をポカンと開け、明人を見下ろしている。だが、そんな目線を向けられている本人は全く気にせず、「だるいなー」とボヤいていた。
「…………ふざけるなよ?!!?」
我に返った真陽留は、慌てながら叫びに近い声を出し。明人の様子などお構い無しに無理やり体を起こし、肩を揺さぶった。
「ま、まて。待て待て待て。は、吐く──」
弱っていたため、明人はなんの抵抗も出来ず、口元に手を置き顔を青くしてしまう。その様子を目の当たりにし、真陽留も同じく顔を青くし先程より大きな叫び声を上げた。
「は、吐くならトイレで吐けぇぇぇええ!!!!」
それからは明人が落ち着くまで、カクリと真陽留は余計な事をせず静かに待つ事にした。
☆
「死ぬかと思った」
「いっそ死んだ方がいいんじゃないか?」
「お前がな」
顔はまだ青いが何とか落ち着き、頭を支えながら明人は酔っ払いのようにソファーへと力なく座った。
「話は出来るようになったらしいな」
「…………そうだな」
だるそうな顔のまま、真陽留の顔をちらっと見て頷く。
真陽留はソファーの背もたれに寄りかかり話を聞く体勢を作っており、カクリもいつもの椅子に座り直した。
「んで、僕の記憶を覗き見した今でもなんも覚えてねぇーの?」
「てめぇの想いの中で見た記憶は覚えている。だが、それは他人事のような感覚なんだよ。映画を見ているみたいな感じだ。あれが俺の記憶と言われても、ピンと来ねぇ」
ソファーに座り直し顎に手を当て、彼は思い出しながら口にする。
「まぁ、そうだろうな。なら、まずは記憶を戻してやるよ。これ貸しな」
「てめぇが勝手に暴走して、勝手に悪魔と契約して。勝手に俺の記憶を奪ったんだろうが。なにが貸しだよ。俺が貸しを作りまくってんだよ。そのうちの一つを返させてやるって言ってんだよ。逆に感謝して欲しいものだな」
明人の次から次へと溢れ出る言葉に、真陽留は何も言えず苦笑いを浮かべ握り拳を作る。そんな彼の事を無視し、明人は立ち上がろうとした──が、顔を一瞬歪める。
「──ちっ」
立ち上がる事が出来ず、またソファー座ってしまった。
「何やってんだおま──」
魔蛭が冷ややかな瞳を向けながら聞こうとした時、明人が間髪入れずに彼の背中に拳を入れた。
それにより魔蛭は背中を抑え、ソファーの後ろで蹲る。相当痛かったらしく、体が微かに震えていた。
「──足に力が入らねぇ。完全に痛みも無くなった訳じゃねぇか。まだ痛むな」
真陽留の様子を一切気にせず、明人は自身の体の異変を気にしていた。
肩を抑えながらもう一度立ち上がろうと試みるも、すぐにソファーへと逆戻りしてしまう。
カクリは心配そうに名前を呼ぶが、明人は返事する事なく考え込んでいた。
「力が入らない割に、僕を痛めつけられるのはどうなんだよクソがっ」
「ツボを押したからな。もっと悶え苦しむ予定だったが、やっぱり力が入らないからこれぐらいで終わっちまったか。ちっ」
「やっぱり殺すぞ」
「どうすればいいかねぇ」
「無視かよ……」
真陽留はそれ以上口にせず、明人と共に考え始める。
「似た者同士気が合うという事か」
そんな二人を横目に、カクリは首を傾げながら言葉を零した。
☆
「わかった、よし。カクリ、呪いを解け」
「無理だ」
「諦めんなよ。試合する前に諦める馬鹿がどこにいんだよ。根性で乗り越えろや」
「まさか明人の口からそのような言葉がな。根性など無縁な言葉だろう」
「まぁな」
カクリはジトッとした目で彼を見て「結局、何がわかったのだ」と問いかける。
「とりあえず、奥にある黒い匣と記憶。あれを利用する」
「利用とは、何をする気なのだ?」
カクリは疑問をそのまま問いかけ、真陽留は二人の会話など気にせず考え続けていた。
「元々、なぜ記憶を集めているのか、お前忘れてないか? 集めた記憶の中に俺の記憶の欠片があるかもしれないという理由と、呪いを解く事が出来るかもしれないという理由で集めてたんだろうが。んで、黒い匣も同じく記憶探しと──まぁ、もう半分は俺の趣味だな」
「おい」
明人の適当加減に、真陽留は思考を止め思わずつっこんでしまう。が、それに対してなんの反応もなく、真面目な顔で明人は話続ける。
「おい真陽留。お前はなんで人の匣を集めてた?」
「それは、お前をおびき出すためと、ベルゼに渡すため。あとは、音禰に飲ませ相想の記憶を維持させるためだ」
「なるほどな。あの悪魔か……。最近変わった事はないのか?」
「変わった事か? ベルゼの事なら特に何も──いや、見た目は変わってた、気がする?」
必死に思い出そうと首を傾げながら、真陽留はポツポツと話す。
「変わってた?」
「あぁ。僕の記憶はなぜか曖昧なんだけど、なんか……。大人の姿になってた気がする……?」
真陽留が思い出しながら言うと、明人は口角を上げカクリに再度目を向けた。
「カクリ、呪いが解けるかもしれねぇぞ」
「本当か?!」
カクリは嬉しそうに明人に近付き、目を輝かせた。
「──僕のところにもこんな妖が来てくれたらな……」
「口うるさいだけの糞ガキだ。欲しけりゃくれてやるわ。俺の呪いを解いた後にな」
「私はものでは無い」
そんな会話をしたあと、明人は二人に呪いを解く方法を伝えた。
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