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音禰
「お主を、殺す」
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「────明人よ。この者から二つの感情を感じる」
「二つの感情? どういう事だ?」
カクリの言葉に明人は片眉を上げ、魔蛭を押しのけ手を伸ばした。
「おい!! てめぇが触ってんじゃねぇ!!」
明人が音禰の手に触れようとした時、何故か魔蛭が焦ったように止めようと声を荒げる。
「あぁ? なに焦って──」
怪訝そうな顔を浮かべながらも、明人は手を伸ばし音禰の手に触れた。刹那、大きめな静電気が流れたように「バチンッ」という音が響く。
「なっ――……」
驚きで目を見開いていると、急に明人が頭を抱え始めその場に膝をついてしまった。
「な、んだこれ……。おい。なんだよ。こんな記憶……俺」
「明人!? しっかりするのだ!!」
カクリが駆け寄るのと同時に、明人の身体がぐらっと傾き床に倒れ込む。藍色の髪が明人の真っ白になっている顔を隠し、漆黒の瞳も瞼が閉じられ見る事が叶わない。
明人に襲った頭痛により、彼は耐え切れず気絶してしまった。
「貴様、何をした」
魔蛭は明人に近づこうとしたが、それをカクリが制した。鋭く睨み、威嚇するように喉を鳴らしている。
「俺は何もしてねぇよ。お前の主が勝手に触っただけだろ。どうやらこの天才様でも、いきなり身に覚えのない記憶が頭の中に遠慮なく、土足で入りこんじまったら処理不可という事だな」
楽しげに笑い、二人を見下ろしながら言う。その様子にカクリは怒りを露わに、拳を強く握る。
「何を企んでいる。なぜ、明人を殺そうとする。お主は何がしたいのだ!!!」
「さっきお前の主が言っていたじゃねぇか。質問は一つずつ言えってな。まぁ、言ったところで俺は答えねぇけど」
「ふざけるな!!!」
カクリは頭に血が上り、いつもの冷静な判断が出来ていない。そのため、勢いのまま魔蛭へと飛び付いてしまった。
「がッ!!」
だが、それをいともたやすく魔蛭は蹴り飛ばし、カクリは唸り声をあげお腹を抑え床に転がってしまう。
魔蛭の蹴りはちょうど溝に入り、咳き込んでしまった。
「お前はそこで、主が死ぬのを黙って見てろ」
ポケットから小さなナイフが姿を現し、口角を上げる。
「さて。まさかここで絶好のチャンスが舞い降りてくるなんてな。流石のこいつも頸動脈一発やれば、終わりだろ」
「やっ、めろ……」
カクリは這うように明人へ近づくが、それを魔蛭は許さずまた蹴飛ばした。
「ガハッ、ゴホッゴホッ!!!」
「餓鬼は黙ってそこで見ていろ。そうすれば、お前の事は殺さないどいてやる。俺はな──…………」
歪んだ笑みをカクリに向けたあと、魔蛭は明人の横に座りナイフを首筋に添えた。少し当たっただけでも血が少し流れ出ている。それほどまでに切れ味が良く、簡単に人の皮膚など切れてしまう。
「──いや、このまま殺るのは少し惜しいか。音禰を早く目覚めさせたいが……。まだ早い。まだ、俺の復讐は終わっていない」
魔蛭はナイフを首筋から離し横に置いた。目を細め口角を上げた彼は、明人の頭付近に手を添える。
「また、記憶を奪うとしよう」
「やっ、辞めるのだ!!!」
何とか立ち上がり、カクリは再度魔蛭に飛びかかるが簡単に殴られ床に転がされる。
「大人しくしてろ。お前には、ベルゼみたいな戦闘に特化した力なんて無いだろ」
氷のように冷たい瞳、言葉にカクリは体を震わせた。だが、床に手を付き再度立ち上がろうとする。
「諦めの悪い餓鬼だな。まぁいい。俺はこいつの今までの記憶を全て貰い、そして、今回は抹消してやる。そうだな、今音禰に預けている記憶も全て抹消しよう。そうすればもう、こいつは終わりだな」
明人の頭に添えた手が、手袋越しに六芒星が浮かび上がり、紫色に光り出す。
「やめろ、やめろ!」
カクリは立ち上がろうとするも、力が入らずその場から動けない。
「さぁ、お前の全て。俺が消してやる」
「やめろぉぉぉおお!!!」
カクリの叫び声、見開かれた瞳。魔蛭の楽しげな声がカクリの鼓膜を震わせる。カクリの中にある何かが、ぷつんと。音を鳴らし、切れた――……
「────なっ」
なぜか魔蛭は動きを止めた。目を大きく開き、一粒の汗が頬を伝い流れる。口が微かに震え、顔が真っ青になっていく。
体が金縛りに合ったかのように動けず、シルバーに光っているナイフを震わせる。すると、カランと音を鳴らしながらナイフが床に滑り落ち、魔蛭が胸を支え蹲る。
「なっ、荷が起きた…………!!」
歯を食いしばり、血走らせた瞳を見開く。その時、前に気配を感じた魔蛭は顔だけを少し上げる。そこには、子供の足があった。
その人物を確認するため、魔蛭は目線だけを上に向け人物を確認する。そこには、先程とは姿が変わったカクリが、氷のように冷たい赤い瞳を見下ろしながら立っていた。
短かった髪は腰まで長くなり、目は純黒から真紅に。爪や牙は鋭く光り、耳は狐みたく尖っていた。背中から覗き見える九本の尾が、ゆらゆらと揺れている。
その姿はまるで、誰もが知っている妖。九尾に似ていた。
「お前、なんで……」
変貌したカクリの姿を見て、魔蛭は困惑の表情で問いかけた。だが、その声は届いておらず、カクリは右手を魔蛭に伸ばす。
「何をする気だ……」
先程までとは全く違うカクリの姿に、魔蛭は何とか動こうと立ち上がるが、伸ばされたカクリの右手によって叶わない。頭を、カクリによって押さえつけられ、地面に叩きつけられた。
「いっ!!」
地面に叩きつけられた魔蛭は、床に手を付き起き上がろうとするも、カクリが押し付けたままなため顔を上げる事が出来ない。
「『お主を、殺す』」
カクリのものとは思えない静かで低い声が、不穏な空気が漂う病室内に響いた。
「二つの感情? どういう事だ?」
カクリの言葉に明人は片眉を上げ、魔蛭を押しのけ手を伸ばした。
「おい!! てめぇが触ってんじゃねぇ!!」
明人が音禰の手に触れようとした時、何故か魔蛭が焦ったように止めようと声を荒げる。
「あぁ? なに焦って──」
怪訝そうな顔を浮かべながらも、明人は手を伸ばし音禰の手に触れた。刹那、大きめな静電気が流れたように「バチンッ」という音が響く。
「なっ――……」
驚きで目を見開いていると、急に明人が頭を抱え始めその場に膝をついてしまった。
「な、んだこれ……。おい。なんだよ。こんな記憶……俺」
「明人!? しっかりするのだ!!」
カクリが駆け寄るのと同時に、明人の身体がぐらっと傾き床に倒れ込む。藍色の髪が明人の真っ白になっている顔を隠し、漆黒の瞳も瞼が閉じられ見る事が叶わない。
明人に襲った頭痛により、彼は耐え切れず気絶してしまった。
「貴様、何をした」
魔蛭は明人に近づこうとしたが、それをカクリが制した。鋭く睨み、威嚇するように喉を鳴らしている。
「俺は何もしてねぇよ。お前の主が勝手に触っただけだろ。どうやらこの天才様でも、いきなり身に覚えのない記憶が頭の中に遠慮なく、土足で入りこんじまったら処理不可という事だな」
楽しげに笑い、二人を見下ろしながら言う。その様子にカクリは怒りを露わに、拳を強く握る。
「何を企んでいる。なぜ、明人を殺そうとする。お主は何がしたいのだ!!!」
「さっきお前の主が言っていたじゃねぇか。質問は一つずつ言えってな。まぁ、言ったところで俺は答えねぇけど」
「ふざけるな!!!」
カクリは頭に血が上り、いつもの冷静な判断が出来ていない。そのため、勢いのまま魔蛭へと飛び付いてしまった。
「がッ!!」
だが、それをいともたやすく魔蛭は蹴り飛ばし、カクリは唸り声をあげお腹を抑え床に転がってしまう。
魔蛭の蹴りはちょうど溝に入り、咳き込んでしまった。
「お前はそこで、主が死ぬのを黙って見てろ」
ポケットから小さなナイフが姿を現し、口角を上げる。
「さて。まさかここで絶好のチャンスが舞い降りてくるなんてな。流石のこいつも頸動脈一発やれば、終わりだろ」
「やっ、めろ……」
カクリは這うように明人へ近づくが、それを魔蛭は許さずまた蹴飛ばした。
「ガハッ、ゴホッゴホッ!!!」
「餓鬼は黙ってそこで見ていろ。そうすれば、お前の事は殺さないどいてやる。俺はな──…………」
歪んだ笑みをカクリに向けたあと、魔蛭は明人の横に座りナイフを首筋に添えた。少し当たっただけでも血が少し流れ出ている。それほどまでに切れ味が良く、簡単に人の皮膚など切れてしまう。
「──いや、このまま殺るのは少し惜しいか。音禰を早く目覚めさせたいが……。まだ早い。まだ、俺の復讐は終わっていない」
魔蛭はナイフを首筋から離し横に置いた。目を細め口角を上げた彼は、明人の頭付近に手を添える。
「また、記憶を奪うとしよう」
「やっ、辞めるのだ!!!」
何とか立ち上がり、カクリは再度魔蛭に飛びかかるが簡単に殴られ床に転がされる。
「大人しくしてろ。お前には、ベルゼみたいな戦闘に特化した力なんて無いだろ」
氷のように冷たい瞳、言葉にカクリは体を震わせた。だが、床に手を付き再度立ち上がろうとする。
「諦めの悪い餓鬼だな。まぁいい。俺はこいつの今までの記憶を全て貰い、そして、今回は抹消してやる。そうだな、今音禰に預けている記憶も全て抹消しよう。そうすればもう、こいつは終わりだな」
明人の頭に添えた手が、手袋越しに六芒星が浮かび上がり、紫色に光り出す。
「やめろ、やめろ!」
カクリは立ち上がろうとするも、力が入らずその場から動けない。
「さぁ、お前の全て。俺が消してやる」
「やめろぉぉぉおお!!!」
カクリの叫び声、見開かれた瞳。魔蛭の楽しげな声がカクリの鼓膜を震わせる。カクリの中にある何かが、ぷつんと。音を鳴らし、切れた――……
「────なっ」
なぜか魔蛭は動きを止めた。目を大きく開き、一粒の汗が頬を伝い流れる。口が微かに震え、顔が真っ青になっていく。
体が金縛りに合ったかのように動けず、シルバーに光っているナイフを震わせる。すると、カランと音を鳴らしながらナイフが床に滑り落ち、魔蛭が胸を支え蹲る。
「なっ、荷が起きた…………!!」
歯を食いしばり、血走らせた瞳を見開く。その時、前に気配を感じた魔蛭は顔だけを少し上げる。そこには、子供の足があった。
その人物を確認するため、魔蛭は目線だけを上に向け人物を確認する。そこには、先程とは姿が変わったカクリが、氷のように冷たい赤い瞳を見下ろしながら立っていた。
短かった髪は腰まで長くなり、目は純黒から真紅に。爪や牙は鋭く光り、耳は狐みたく尖っていた。背中から覗き見える九本の尾が、ゆらゆらと揺れている。
その姿はまるで、誰もが知っている妖。九尾に似ていた。
「お前、なんで……」
変貌したカクリの姿を見て、魔蛭は困惑の表情で問いかけた。だが、その声は届いておらず、カクリは右手を魔蛭に伸ばす。
「何をする気だ……」
先程までとは全く違うカクリの姿に、魔蛭は何とか動こうと立ち上がるが、伸ばされたカクリの右手によって叶わない。頭を、カクリによって押さえつけられ、地面に叩きつけられた。
「いっ!!」
地面に叩きつけられた魔蛭は、床に手を付き起き上がろうとするも、カクリが押し付けたままなため顔を上げる事が出来ない。
「『お主を、殺す』」
カクリのものとは思えない静かで低い声が、不穏な空気が漂う病室内に響いた。
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