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麗華
「俺が貰う」
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「「三つの選択肢?」」
明人の言葉を二人は確認をするように復唱した。
「そうだ。今ここでお前らにしてやれるのは三つしかない。それ相応の代償ももらうけどな」
「だい、しょう?」
二人は不安そうに顔を見合わせ、再度彼の方に顔を向ける。
「まず、簡単に俺達がやっている事と、代償について話してやる」
そこから彼は、簡潔かつ分かりやすく二人に説明した。
明人のわかりやすい説明に首を傾げる事はなかったが、現実味がないため二人は信じきる事が出来ていない。
「わかったか? わかんなかったとしてももう教えねぇけどな」
「なんでですか……」
明人の勝手な言葉にはもう本気でつっこむのが面倒になり、苦笑いを浮かべながら静空はそれだけを口にした。
「そんで、この説明を聞いてお前らには三つ選んでもらう」
明人は二人に真剣な眼差しを送り、「まず一つ目」と言いながら指を一本立てた。
「お前らの匣を頂く」
いきなり理不尽な事を言われ、二人は目を開く。
匣は感情。それを頂くという事は、感情が無くなるという事。それを瞬時に理解し麗羅は反論した。
「そんなの困ります!!」
「そうっすよ!! それに、感情を取られたら──」
「人の話は最後まで聞けアホども」
麗羅の反発に静空も続く。それを明人は最後まで聞かずに遮り、続きを無理やり話した。
「二つ目、何もせずこのまま帰る。そして、三つ目は──」
そこで明人は何故か、言葉を切ってしまう。二人は不思議に思い、恐る恐る声をかけた。
明人は顔を俯かせてしまい、髪が彼の表情を隠す。体が微かに震えているように見え、静かな空間に息遣いが響いた。
「明人……?」
カクリも心配になり、顔を覗き込もうと近づいたら明人の大きな手が頭を押さえてしまい視界が暗くなる。カクリは再度名前を呼ぶが、後ろに押されてしまい顔色を確認出来ない。
「………はぁ」
明人はカクリから手を離し、自身の袖で顔を拭く。それでも吹き出す汗は止まらず流れ落ちる。
「えっ、あの。大丈夫ですか?」
「ちょっとあんた、気分悪いんじゃっ……」
二人が心配そうに声をかけた。それもそのはず。
今の明人は笑みを浮かべているものの顔は青く、体も微かに震えている。これが正常な状態では無いのは誰が見てもわかるため、二人は腰を上げそうになった。
「問題ない。話を続ける」
そんな二人を右手で制し、話を強引に続けようとする。
「でも……」
「心配無用だ。それに、心配するなら俺の話を遮るな。さっさと終わらせろ」
明人の苦し気な声に、二人は口を閉じた。そして、彼は話の続きをする。
「三つ目、お前の妹をここに連れてくる事」
「えっ、麗華を……? なんで……」
突然麗華の名前が出て、すぐ返す事が出来ない。明人も予想通りと言わんばかりに、上げていた手を下げ説明を続ける。
「妹の匣を俺が貰う」
「貰うって……。そんな事したら麗華は感情を失うんじゃ──」
「そうよ! それに。連れて来いって言ってもあの男子生徒を掻い潜ってって事でしょ? 無理に決まってるじゃない」
「お前をはめた奴の肩を持ってどうする。麗華とやらはお前を売ったんだよ。だから、今この状況になってんだろうが」
明人の言葉に麗羅は何も言い返せない。それは静空も同じで口を閉ざしてしまう。
「なら、少しは仕返ししてもいいはずだ。少しで済むかは知らねぇがな。あとは、あの男子ともに関しては問題ねぇよ。俺がどうにかする」
二人は顔を見合わせ考えた。
麗華は自分を売った。その事実が麗羅の頭にこびり付いており、目を泳がせる。
「あの、匣を開けるのが主な仕事なんですよね? だったら、取り除くではなく開けるだけでは──」
「無理だな、諦めろ」
即答する明人に静空は「そうですか」と返すしかできなかった。
麗羅はどうすればいいのか何も思いつかず、顔を俯かせたまま動かない。
「なら、私達の匣を開けるとか。ほら、麗羅なんてずっと迷ってるし……」
「お前らの匣はそこまで黒くない。そんな状態で開ける必要はねぇよ。それに、代償についてもお忘れなく」
「うっ……」
静空は全て論破されてしまい、もう何も言えなくなってしまった。
「どうすんだよ。お姉さん?」
そのような呼び方をした明人に対し、麗羅はゆっくりと顔を上げた。
「…………二番の選択肢でお願いします」
麗羅は選択肢の中から二番目を選んだ。二番目の選択肢は『何もせずにここから戻る事』だ。
その言葉に静空は麗羅の肩を掴み「マジで?」と問いかける。それに対し、麗羅は力強く頷いた。
「ほう? それじゃ、今回はやる事なしって事か。それは良かったよ。んじゃ……」
「ですが、協力はお願いしたいです」
「──何?」
麗羅は彼を見続け言いきった。
明人は今回何もしなくてもいいと思い、少し喜んだ表情を浮かべたが、麗羅の言葉を聞き怪訝そうな顔に変わる。
「協力。お願いします」
「──話だけなら聞いてやる」
明人の言葉に麗羅は考えていた事を伝える。それを聞いた彼は口角を上げ、楽しげな笑みを浮かべ始めた。
明人の言葉を二人は確認をするように復唱した。
「そうだ。今ここでお前らにしてやれるのは三つしかない。それ相応の代償ももらうけどな」
「だい、しょう?」
二人は不安そうに顔を見合わせ、再度彼の方に顔を向ける。
「まず、簡単に俺達がやっている事と、代償について話してやる」
そこから彼は、簡潔かつ分かりやすく二人に説明した。
明人のわかりやすい説明に首を傾げる事はなかったが、現実味がないため二人は信じきる事が出来ていない。
「わかったか? わかんなかったとしてももう教えねぇけどな」
「なんでですか……」
明人の勝手な言葉にはもう本気でつっこむのが面倒になり、苦笑いを浮かべながら静空はそれだけを口にした。
「そんで、この説明を聞いてお前らには三つ選んでもらう」
明人は二人に真剣な眼差しを送り、「まず一つ目」と言いながら指を一本立てた。
「お前らの匣を頂く」
いきなり理不尽な事を言われ、二人は目を開く。
匣は感情。それを頂くという事は、感情が無くなるという事。それを瞬時に理解し麗羅は反論した。
「そんなの困ります!!」
「そうっすよ!! それに、感情を取られたら──」
「人の話は最後まで聞けアホども」
麗羅の反発に静空も続く。それを明人は最後まで聞かずに遮り、続きを無理やり話した。
「二つ目、何もせずこのまま帰る。そして、三つ目は──」
そこで明人は何故か、言葉を切ってしまう。二人は不思議に思い、恐る恐る声をかけた。
明人は顔を俯かせてしまい、髪が彼の表情を隠す。体が微かに震えているように見え、静かな空間に息遣いが響いた。
「明人……?」
カクリも心配になり、顔を覗き込もうと近づいたら明人の大きな手が頭を押さえてしまい視界が暗くなる。カクリは再度名前を呼ぶが、後ろに押されてしまい顔色を確認出来ない。
「………はぁ」
明人はカクリから手を離し、自身の袖で顔を拭く。それでも吹き出す汗は止まらず流れ落ちる。
「えっ、あの。大丈夫ですか?」
「ちょっとあんた、気分悪いんじゃっ……」
二人が心配そうに声をかけた。それもそのはず。
今の明人は笑みを浮かべているものの顔は青く、体も微かに震えている。これが正常な状態では無いのは誰が見てもわかるため、二人は腰を上げそうになった。
「問題ない。話を続ける」
そんな二人を右手で制し、話を強引に続けようとする。
「でも……」
「心配無用だ。それに、心配するなら俺の話を遮るな。さっさと終わらせろ」
明人の苦し気な声に、二人は口を閉じた。そして、彼は話の続きをする。
「三つ目、お前の妹をここに連れてくる事」
「えっ、麗華を……? なんで……」
突然麗華の名前が出て、すぐ返す事が出来ない。明人も予想通りと言わんばかりに、上げていた手を下げ説明を続ける。
「妹の匣を俺が貰う」
「貰うって……。そんな事したら麗華は感情を失うんじゃ──」
「そうよ! それに。連れて来いって言ってもあの男子生徒を掻い潜ってって事でしょ? 無理に決まってるじゃない」
「お前をはめた奴の肩を持ってどうする。麗華とやらはお前を売ったんだよ。だから、今この状況になってんだろうが」
明人の言葉に麗羅は何も言い返せない。それは静空も同じで口を閉ざしてしまう。
「なら、少しは仕返ししてもいいはずだ。少しで済むかは知らねぇがな。あとは、あの男子ともに関しては問題ねぇよ。俺がどうにかする」
二人は顔を見合わせ考えた。
麗華は自分を売った。その事実が麗羅の頭にこびり付いており、目を泳がせる。
「あの、匣を開けるのが主な仕事なんですよね? だったら、取り除くではなく開けるだけでは──」
「無理だな、諦めろ」
即答する明人に静空は「そうですか」と返すしかできなかった。
麗羅はどうすればいいのか何も思いつかず、顔を俯かせたまま動かない。
「なら、私達の匣を開けるとか。ほら、麗羅なんてずっと迷ってるし……」
「お前らの匣はそこまで黒くない。そんな状態で開ける必要はねぇよ。それに、代償についてもお忘れなく」
「うっ……」
静空は全て論破されてしまい、もう何も言えなくなってしまった。
「どうすんだよ。お姉さん?」
そのような呼び方をした明人に対し、麗羅はゆっくりと顔を上げた。
「…………二番の選択肢でお願いします」
麗羅は選択肢の中から二番目を選んだ。二番目の選択肢は『何もせずにここから戻る事』だ。
その言葉に静空は麗羅の肩を掴み「マジで?」と問いかける。それに対し、麗羅は力強く頷いた。
「ほう? それじゃ、今回はやる事なしって事か。それは良かったよ。んじゃ……」
「ですが、協力はお願いしたいです」
「──何?」
麗羅は彼を見続け言いきった。
明人は今回何もしなくてもいいと思い、少し喜んだ表情を浮かべたが、麗羅の言葉を聞き怪訝そうな顔に変わる。
「協力。お願いします」
「──話だけなら聞いてやる」
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