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麗華
「これで終わりだ」
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「噂は本当だったけどぉ、思ってたのと違ったねぇ~」
学校の教室で、ポッキーを口に咥えながら携帯をいじっている麗華が、他の二人に問いかけた。
今は放課後。三人以外の生徒は下校しており、いつものメンバーである。麗華、麗羅、静空が教室に残っていた。
「でも、辿り着けない人もいるって言ってた中あった訳だし。もしかして、私達結構すごい事しちゃったのかな!?」
興奮気味に静空は、身を乗り出し。目を輝かせ身を乗り出した。
「だからって、また行こうなんて言わないでよ? 私はごめんだからね」
麗羅は引き気味に言って、ポッキーを掴み彼女を指す。
「人にポッキーを指してはいけません」
「あ、私のポッキー取られた」
指された静空は、麗羅からポッキーを奪い取り自分で食べた。そんな二人を横目に、麗華が携帯の画面を二人に向け困惑気味に言う。
「私、昨日内緒であの人をカメラに納めたのに、なぜか写ってないんだけどぉ……」
麗華の言葉に、二人は最初疑いの目で画面を覗き込んだ。だが、みるみるうちに顔を青くし、顔を上げ画面を指さした。
「なんで、小屋の壁しか──写ってないの?」
静空が震え声で質問し、麗羅も口を抑え震える。
「ま、まさか…………。あの人ってゆ、幽霊?」
麗羅の声に三人はこれ以上口を開かず、今日は解散になった。
☆
小屋の中、明人はソファーの上で横になっていた。息が荒く汗が止まらない。辛そうに顔を歪ませている。
「まさか。こんなに呪いが進行していたとは……」
カクリは白いタオルで汗を拭いてあげ、近くに置いてある桶で濡らし明人の目元に置いた。不安げに眉を下げ、彼の看病している。
「にしても、昨日から目を覚まさぬ。このまま目を開けない事は無いだろうな……」
息の荒い明人に手を伸ばし、呪いが広がっている肩辺りに触れた。
今の明人は体の半分以上が呪いで侵されており、少し動くだけでも体に激痛が走る。体への負担は相当のはずだが、倒れてしまうまでカクリ自身明人の変化に気づく事が出来なかった。明人が気づかれないように生活を送っていたと知った今、カクリの心中には後悔が芽生え、それは徐々に広がり思わず顔を俯かせる。
そんな最悪なタイミングで、突如としてドアが開かれた。
「お~お~。辛そうだなぁ~、相思」
ドアを開けたのは、明人に強い恨みを持っている人。悪陣魔蛭《おじんまひる》だった。
カクリは魔蛭の姿を確認すると、咄嗟に明人を守るように前に立ち、尻尾と耳を出す。
「何故ここに。お主、何しに来た」
カクリは殺気を放ちながら、喉の奥を鳴らし唸りながら魔蛭に問いかけた。
「相──いや、明人がどんな様子かなぁ~っと思ってな。いい具合に弱ってるみたいじゃねぇか。今のままだと辛いだろ。直ぐ楽にしてやるよ」
ソファーに横になっている明人をあざ笑うように見下ろし、ポケットからカッターナイフを取り出した。カチカチと刃を出し、ゆっくりと明人に近付いて行く。だが、それをカクリが許す訳もなく、魔蛭の前に立った。
「おい、そこを退け」
「断る。今すぐここから去れ」
「それこそ無理だな。断る」
カクリは眉間に皺を寄せ歯を食いしばり、魔蛭は余裕そうな笑みを浮かべ、お互い睨み合う。その数秒後、魔蛭は口だけではカクリが引かないのを悟り息を吐いた。
「はぁー。おら、そこを退け。ガキはさっさと家に帰りな!!」
「ぐっ!! ゴホッゲホッ……」
我慢できなくなった魔蛭は、目の前で邪魔してくるカクリのお腹を思いっきり蹴りあげた。
カクリは体術などを習得している訳では無いためもろに食らいお腹を抱え、その場にうずくまってしまった。
「さて、邪魔者は消えたし。これでっ──おい」
魔蛭が明人にカッターナイフを向けたが、それをカクリは足を引っ張り制した。
「早く、帰るのだ……」
「俺には時間が無い。邪魔だ」
再度、カクリを蹴り飛ばし。今度こそ明人を殺そうとカッターナイフを振り上げた。だが、横から何かが投げられ、魔蛭は小さく舌打ちを零し上半身を後ろへと傾け回避。物が飛んできた方向を見ると、壁側に置かれていた本棚まで飛ばされたカクリが、本を片手に魔蛭を睨み上げていた。
「うぜぇな。まずはお前から始末してもいいが、今の俺には本当に時間がない。邪魔をするな」
「時間が無いのであれば、今すぐ帰ればいいのではないかい?」
「今がこいつを殺すための最大のチャンスなんだよ。見過ごすわけにはいかねぇな」
カッターナイフを持ち直し、彼は再度明人へと目線を向けた。すぐさま、カクリも持っていた本を投げようと振り上げるが、突如腕に痛みが走りそれは叶わなかった。
持っていた本が赤い液体と共に床へと落ちる。
「なっ──」
腕には見覚えのある黒いナイフが刺さり、血がポタポタと流れ出ている。
「勝手に居なくなるなと言っているのに。我に手間を取らせるな」
そんな、気だるげな口調が小屋の出入口から聞こえた。カクリがそちらに目を向けると、自身の周りに黒いナイフを浮かせいつでも投げれるようにしている悪魔。魔蛭の相棒的存在のベルゼが不機嫌そうな表情を浮かべ立っていた。
ベルゼはカクリに殺気を放ち、ナイフの刃を向ける。その隙に魔蛭は、明人を殺そうとカッターナイフを振り上げた。
「これで終わりだ相思──筺鍵明人!!!」
カクリはなんとか邪魔しようと近くにある物を掴もうとするも、それを全てベルゼのナイフにより防がれた。それだけではなく、動けないように足や横腹にもナイフが深々と刺さり、床へと倒れ込む。
どんどん床が赤く染まり、カクリの服や手などを汚す。それでもカクリは明人を守ろうと手を伸ばし続け、床を這いつくばりながら魔蛭へと近づく。
「――っ!! 起き、るのだ、明人……。起きるのだ!!!」
吐血しながらも声を張り上げるカクリ。魔蛭は邪魔がなくなった事に安堵し、笑みを浮かべながら、カッターナイフをそのまま振り下ろした。
「明人ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
カクリの、喉が張り裂けんばかりな声が、小屋内に響き渡った────
学校の教室で、ポッキーを口に咥えながら携帯をいじっている麗華が、他の二人に問いかけた。
今は放課後。三人以外の生徒は下校しており、いつものメンバーである。麗華、麗羅、静空が教室に残っていた。
「でも、辿り着けない人もいるって言ってた中あった訳だし。もしかして、私達結構すごい事しちゃったのかな!?」
興奮気味に静空は、身を乗り出し。目を輝かせ身を乗り出した。
「だからって、また行こうなんて言わないでよ? 私はごめんだからね」
麗羅は引き気味に言って、ポッキーを掴み彼女を指す。
「人にポッキーを指してはいけません」
「あ、私のポッキー取られた」
指された静空は、麗羅からポッキーを奪い取り自分で食べた。そんな二人を横目に、麗華が携帯の画面を二人に向け困惑気味に言う。
「私、昨日内緒であの人をカメラに納めたのに、なぜか写ってないんだけどぉ……」
麗華の言葉に、二人は最初疑いの目で画面を覗き込んだ。だが、みるみるうちに顔を青くし、顔を上げ画面を指さした。
「なんで、小屋の壁しか──写ってないの?」
静空が震え声で質問し、麗羅も口を抑え震える。
「ま、まさか…………。あの人ってゆ、幽霊?」
麗羅の声に三人はこれ以上口を開かず、今日は解散になった。
☆
小屋の中、明人はソファーの上で横になっていた。息が荒く汗が止まらない。辛そうに顔を歪ませている。
「まさか。こんなに呪いが進行していたとは……」
カクリは白いタオルで汗を拭いてあげ、近くに置いてある桶で濡らし明人の目元に置いた。不安げに眉を下げ、彼の看病している。
「にしても、昨日から目を覚まさぬ。このまま目を開けない事は無いだろうな……」
息の荒い明人に手を伸ばし、呪いが広がっている肩辺りに触れた。
今の明人は体の半分以上が呪いで侵されており、少し動くだけでも体に激痛が走る。体への負担は相当のはずだが、倒れてしまうまでカクリ自身明人の変化に気づく事が出来なかった。明人が気づかれないように生活を送っていたと知った今、カクリの心中には後悔が芽生え、それは徐々に広がり思わず顔を俯かせる。
そんな最悪なタイミングで、突如としてドアが開かれた。
「お~お~。辛そうだなぁ~、相思」
ドアを開けたのは、明人に強い恨みを持っている人。悪陣魔蛭《おじんまひる》だった。
カクリは魔蛭の姿を確認すると、咄嗟に明人を守るように前に立ち、尻尾と耳を出す。
「何故ここに。お主、何しに来た」
カクリは殺気を放ちながら、喉の奥を鳴らし唸りながら魔蛭に問いかけた。
「相──いや、明人がどんな様子かなぁ~っと思ってな。いい具合に弱ってるみたいじゃねぇか。今のままだと辛いだろ。直ぐ楽にしてやるよ」
ソファーに横になっている明人をあざ笑うように見下ろし、ポケットからカッターナイフを取り出した。カチカチと刃を出し、ゆっくりと明人に近付いて行く。だが、それをカクリが許す訳もなく、魔蛭の前に立った。
「おい、そこを退け」
「断る。今すぐここから去れ」
「それこそ無理だな。断る」
カクリは眉間に皺を寄せ歯を食いしばり、魔蛭は余裕そうな笑みを浮かべ、お互い睨み合う。その数秒後、魔蛭は口だけではカクリが引かないのを悟り息を吐いた。
「はぁー。おら、そこを退け。ガキはさっさと家に帰りな!!」
「ぐっ!! ゴホッゲホッ……」
我慢できなくなった魔蛭は、目の前で邪魔してくるカクリのお腹を思いっきり蹴りあげた。
カクリは体術などを習得している訳では無いためもろに食らいお腹を抱え、その場にうずくまってしまった。
「さて、邪魔者は消えたし。これでっ──おい」
魔蛭が明人にカッターナイフを向けたが、それをカクリは足を引っ張り制した。
「早く、帰るのだ……」
「俺には時間が無い。邪魔だ」
再度、カクリを蹴り飛ばし。今度こそ明人を殺そうとカッターナイフを振り上げた。だが、横から何かが投げられ、魔蛭は小さく舌打ちを零し上半身を後ろへと傾け回避。物が飛んできた方向を見ると、壁側に置かれていた本棚まで飛ばされたカクリが、本を片手に魔蛭を睨み上げていた。
「うぜぇな。まずはお前から始末してもいいが、今の俺には本当に時間がない。邪魔をするな」
「時間が無いのであれば、今すぐ帰ればいいのではないかい?」
「今がこいつを殺すための最大のチャンスなんだよ。見過ごすわけにはいかねぇな」
カッターナイフを持ち直し、彼は再度明人へと目線を向けた。すぐさま、カクリも持っていた本を投げようと振り上げるが、突如腕に痛みが走りそれは叶わなかった。
持っていた本が赤い液体と共に床へと落ちる。
「なっ──」
腕には見覚えのある黒いナイフが刺さり、血がポタポタと流れ出ている。
「勝手に居なくなるなと言っているのに。我に手間を取らせるな」
そんな、気だるげな口調が小屋の出入口から聞こえた。カクリがそちらに目を向けると、自身の周りに黒いナイフを浮かせいつでも投げれるようにしている悪魔。魔蛭の相棒的存在のベルゼが不機嫌そうな表情を浮かべ立っていた。
ベルゼはカクリに殺気を放ち、ナイフの刃を向ける。その隙に魔蛭は、明人を殺そうとカッターナイフを振り上げた。
「これで終わりだ相思──筺鍵明人!!!」
カクリはなんとか邪魔しようと近くにある物を掴もうとするも、それを全てベルゼのナイフにより防がれた。それだけではなく、動けないように足や横腹にもナイフが深々と刺さり、床へと倒れ込む。
どんどん床が赤く染まり、カクリの服や手などを汚す。それでもカクリは明人を守ろうと手を伸ばし続け、床を這いつくばりながら魔蛭へと近づく。
「――っ!! 起き、るのだ、明人……。起きるのだ!!!」
吐血しながらも声を張り上げるカクリ。魔蛭は邪魔がなくなった事に安堵し、笑みを浮かべながら、カッターナイフをそのまま振り下ろした。
「明人ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
カクリの、喉が張り裂けんばかりな声が、小屋内に響き渡った────
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2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。
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