想妖匣-ソウヨウハコ-

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麗華

「噂は噂なのかなぁ〜」

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「ねぇ麗羅。噂になってる箱を開けてくれる小屋って知ってるぅ?」

 いつも通り、教室で三人。机を囲って楽しく話していた時、麗華が携帯をいじりながら二人に問いかけた。

「あぁ、今すごく噂になってるよね。確か箱を開けて貰えた人は気持ちが軽くなったんだって? でも、失敗すると行方不明になるみたいじゃん。噂と言うより都市伝説だよね」
「確かにそうなんだけどさぁ、楽しそうじゃなぃ? 今度一緒に行ってみなぁい?」

 静空が軽く聞き流していると、麗華がサラッとそのような事を口にしたため、麗羅と静空は口に含んでいたお菓子を吹き出しそうになった。

「ばっっっかじゃないの?! 失敗した時の代償半端じゃないじゃん!! いーやーよ!!」

 静空は口元を拭いて慌てて立ち上がり叫ぶ。麗羅も口元を拭きながら、麗華を凝視していた。

「楽しそうじゃなぃ。それに、あるかどうかも分からないし行っても良くなぁい?」
「でも、あった場合どうするの?」

 麗羅はため息を吐いたあと、真剣に問いかけた。

「逃げればいいと思うよぉ。それに、噂ではそれだけじゃなくて。願いも叶えて貰えるみたいだしぃ!! そうなればぁ~、頭を良くしてもらうんだぁ」

 そんな事を口にする麗華に、静空は幻滅の表情を浮かべ麗羅は困ったような目を向けた。だが、一度言ったら聞かない麗華なので、二人は諦めて放課後。噂を確認するため、噂の林に行くという事で話がまとまった。

 ☆

 放課後になり三人は、噂について話しながら林へと向かった。

「ここでいいのかなぁ」
「そうじゃない?」
「見た目は普通の林だよね~」

 目的地である噂の林に辿りつき、周りを見回しながら確認するように麗羅は隣に立っている麗華に問いかけた。だが、噂を知っているだけの麗華は曖昧な返答しか出来ない。
 静空はそんな二人を気にせず、近くに立っている木に手を置いたり、見上げたりと。疑いの目を浮かべながら周りを確認していた。

「ひとまずぅ、入ろうよぉ。ここまで来たんだからさぁ」
「そ、うだね…………」

 麗華が二人を急かし、いち早く林の中に足を踏み入れた。そんな彼女の背中を見て、麗羅は戸惑いながらも付いていく。静空も置いて行かれないように木から手を離し、眉を顰めながら歩き出した。

 林の中は道が狭く、三人は麗華、麗羅、静空の順番で縦に並んで歩いている。カサッ……、カサッ……と。三人が歩く音が響き、鼓膜を揺らしている。
 辺りは薄暗く不気味。陽光が葉に遮られているため、まだ四時ぐらいだとしても先が見えず。気を付けなければ躓いてしまいそうになる。

「なんか……、怖い」
「確かにねぇ。太陽の光が入ってこないからぁ……とか?」
「それはあるだろうね。あとは、思い込みとか。不思議な噂がここから流れていると知っているだけで、なんとなく不気味だし…………」

 麗羅が声を震わせ、前に立っている麗華の肩を掴む。そんな彼女に麗華は空を見上げながら現状を言い、静空がまとめる。

「小屋はまだなの?」
「まだ見えてこないよぉ」

 もう二十分弱歩いているのにも関わらず、目当てである小屋が見えてこない。歩きにくい道でもあるため、静空は疲労が含まれている声色で問いかけるが、その返答はさらに疲れさせるものだった。
 目印になるようなものがあればまだ希望はあるが、今回は実在するかわからない小屋を探しているため、精神的にもきつくなってきていた。

「やっぱりぃ~、噂は噂なのかなぁ~?」
「う、うん……」

 歩き続けても噂になっている小屋は見えてこないため、麗華はその場に立ち止まり周りを見回した。
 後ろを歩いていた二人も立ち止まり、つられるように周りを見る。

「もう帰ろうよ。これ以上ここに居たら迷っちゃうよ?」
「そうだね。麗華、帰るよ?」

 景色が変わらない林を見て、静空と麗羅は諦め振り返り、来た道を戻ろうとした。その後ろを麗華も付いていく。その顔はつまらないというような表情になっており、手に握られているスマホをポケットの中にしまう。まだあきらめきれておらず、何度も後ろをチラチラと振り向いていた。

「…………ん?」
「あれ、どうした?」

 帰ろうとした麗羅がいきなり立ち止まったため、静空と麗華も立ち止まり彼女を見た。静空が問いかけるが返答はなく、風の音が三人を包み込む。

 何も答えなくなってしまった麗羅を不思議に思い、静空は再度問いかけようと手を伸ばす。だが、掴まれるより先に麗羅が歩きだしてしまい。二人は顔を見合わせた後、はぐれないようについて行った。

 麗羅が歩き始めて五分くらい経った頃。彼女がいきなり足を止め、前方を指さす。

「もしかして……、あれかな?」

 後ろを歩いていた二人は、指さされている方向に目線を向けた。そこには古い小屋がポツンと。木々に覆い隠されるように建てられていた。
 見た目は人が住んでいるようには到底見えないほどボロいが、近づいてみると出入口だけは人が出入りしている痕跡があるため、三人の代表として麗羅がおそるおそるドアノブに手を伸ばす。

「開けるね」

 二人に確認を取り、ドアをゆっくり開けると。そこには、外からでは想像出来ないほど温かさがある普通の部屋が広がっていた。

「人は住んでいそうだけど……。肝心の人はどこに?」
「あの奥の部屋にいるんじゃない?」

 麗羅の言葉に静空が奥のドアを指さしながら答えた。
 真ん中に置かれているソファーの後ろの壁にはドアがあるため、その奥にも部屋がある事が容易に分かる。だが、それを勝手に開けてしまっていいものなのかは分からない。

「勝手にはダメでしょ。あれだよきっと、スタッフルーム的な」
「それは有り得るね。麗華、今日はここまでにして帰ろう? 噂が本当だったってわかった訳だしさ」

 静空が麗華に声をかけるが、その言葉は聞こえておらず。奥のドアを凝視していた。

「麗華?」

 麗羅が再度声をかけると、麗華はドアノブを握り。何を思ったのか、ドアを勢いよく開けてしまった。
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