3 / 130
巴
「開けてやるよ」
しおりを挟む
小屋内で明人は秋達が出て行ってから数秒後、貼り付けていた笑顔を消し、大きなため息を吐いた。すると、奥の方にあるドアが突然開き、そこからは小学校低学年くらいの少年が無表情のまま歩いてきた。
足音が聞こえず、気配もない。儚い雰囲気をまとい、触れてしまえば消えてしまいそうに感じる。そんな少年が、ソファーに座り直した明人に近付いた。
「良かったのかい、帰らせてしまって」
質問を口にした少年の声は鈴の音のように儚く、耳に自然と入ってくるような。透き通った響きのある綺麗な声だった。
少年の名はカクリ。明人と共に小屋に住んでいる同居人。
カクリは長いワイシャツに黒いベスト。首には黒いネクタイが緩めに巻かれていた。ベストと同じく黒いスキニーズボンに、脛あたりまで長いブーツを履いている。
白銀のサラサラとした髪が切れ長の黒い瞳とマッチしているように見え、異世界から迷い込んでしまった異人なのではないかと思うほど現代感がない姿だった。
カクリに声をかけられた明人は、横に寝っ転がりながらめんどくさそうに文句を口にした。
「うるせぇよ、仕方がないだろ。また勘違いされたんだから。噂流すなら正確に流せってんだ、ふざけんなよマジで」
先程秋達と話していた態度と全く違う声質に口調。別人かと思わせるほどの豹変を見せた明人だが、カクリは慣れているため驚きはしない。ただ、呆れ気味に息を吐くだけ。
「はぁ、なぜ依頼人の前以外ではそのような態度なのだ……」
「逆に俺があの態度でお前と話してたらどうなんだよ」
「私が楽になるからいいのだけれど」
明人の豹変した態度に淡々と返すカクリ。綺麗な見た目からは考えられない冷めた返答。だが、明人はカクリの言葉を聞き流し、適当に返す。
「それに、私が帰らせて良かったのかを聞いたのは──」
「神楽坂秋だろ」
カクリの言葉を遮り、今まで適当に返していた明人が依頼人の一人である神楽坂秋の名を口にした。
「ここに立ち入れるのは開けられない匣を持ってる奴だけ。辿り着いたという事は持ってんだよ。だが、まだそれに気付いてねぇ」
ソファーに寝っ転がりながらぼやく。
「まぁ、本当に必要になったらまた来んだろ。その時になったら、開けてやるよ」
口角を上げ、明人は今の状況を楽しみながら口を開けた。
「心にある、闇に染まった匣をな」
楽しみだなぁと呟き、明人はそのまま黒い瞳を閉じた。そんな彼をカクリは横で見ており、小さく息を吐きながら木製の椅子に座った。
※
次の日、麗と秋は教室でいつも通りに一つの机を挟んで話していた。
「一体何がダメだったのよ!!」
麗は不貞腐れた顔で喚き散らしながら机をバンバンと叩く。その様子を秋はめんどくさそうに見ながら、片手に持っていたパックジュースを一口飲んだ。
今二人は、昨日の小屋について話していた。噂は本当だったが、小屋に居た男性。筐鍵明人《きょうがいあきと》の言葉が理解できず麗はずっとイライラしていた。
「筐鍵明人さんだったっけ……」
「そう! 見た目はすごくかっこいいけど性格に難アリね! もっと詳しく教えてくれないと分からないじゃない」
「まぁ、なにか含みのある言い方だったよね。実物ではない箱、どういう事なんだろう」
パックジュースを咥えながら秋が考えていると、麗が我慢の限界というように勢いよく立ち上がった、
「あぁぁぁああ! 考えてたら腹たってきた。もう部活行くよ!」
「え!? う、うん」
秋は麗の突然の行動に置いていかれないよう、すぐパックジュースを飲み干し鞄に手を伸ばす。
そんな秋の手首を掴み、体育館へと引っ張って行こうとする。手に持っていた空のパックジュースを教室の角にあるごみ箱に投げ、引きずられるように麗についていく。
投げられたパックジュースは、カコンと音を鳴らしゴミ箱の中に入った。
廊下に出ても腕を引っ張り続けられている秋は、麗の背中を見て目を伏せる。影が差し、我慢するように下唇を噛んだ。
「自分勝手」
黒く、憎しみの籠った秋の呟きは、誰の耳にも届かなかった。
※
体育館にたどり着き、更衣室で着替えを終え部活が始まる。麗は先輩達と輪になって話していた。
「流石麗だね。次の試合も麗が居れば勝てるよ!」
「うんうん。頑張ろうね!!」
「任せてください!」
麗は部活でエース級の力を持っていた。
バスケは秋と同じ時期に始めたのだが、元々の運動力が人並外れており、ぐんぐん力を付けていった。今では先輩達と互角にやり合えるまで成長している。
それに比べて秋はドリブルすら上手く出来ず、練習試合にさえ出して貰えていない。
「神楽坂さん。ボールの片付けをお願い出来る? まだ私達は練習しないといけないから」
人を嘲笑うような笑みを浮かべ言ってきたのは、女子バスケ部のキャプテン、佐々木巴。
明るい茶髪に、黒い膝までの短パンとTシャツを着用。靴はバスケで使う赤いバッシュと呼ばれる靴を履いていた。
部活中なため、髪は後ろの上あたりで一本に結んでいる。
「わかりました……」
「良かった、それじゃよろしくね」
当たり前というようにお願いした巴は、秋の返事を聞き手を振りながら去って行く。
秋は彼女の背中を見て舌打ちをし、白くなるほど手を強く握る。憎しみの籠った闇のように黒い瞳が、麗達と一緒に楽しく話している巴の背中へと向けられた。
「ふざけんなよ……」
その言葉に込められた感情は、怒りや憎しみといった負の感情そのもの。だが、その感情を相手にぶつけられるほどの勇気が秋にはないため、我慢するしかない。
一度深呼うなし、言われた通りにボールを片付け始めた。
※
片付けが終わり、秋はボールがまだ転がっていないか周りを確認している。すると、麗がボールを差し出した。
「あ、麗」
「お疲れ様。これ、廊下の方まで転がってたよ」
「あ、ありがとう」
秋はボールを受け取り、そのまま後ろにあった籠へと入れた。その時、麗が少し沈んだ声で話しかけた。
「ねぇ、秋。貴方……」
「え?」
話を聞こうと秋は麗の方に振り向いた。
麗は重い口を開け何かを伝えようと口をパクパクとさせる。だが、言葉が喉で引っかかり上手く外に出す事が出来ない。その事に秋はイラつきを見せた。
「何? どうしたの」
急かすような声には、ほんの少しの怒気が含まれており、麗は少し目を開き肩を震わす。そして、続きを口にしようと開いた。
「秋はさ……」
麗はなんとか続きを話そうとしたが、やはり口を閉じてしまい話そうとしない。その事にイラついた秋は、早く会話を終わらせようとその場を離れた。
「何も無いならもう行くよ。麗も早く先輩達と一緒にストレッチして帰った方がいいよ」
そのまま秋は離れてしまい、麗は引き留めようと手を伸ばす。だが、その手は何も掴まず空を切ってしまった。
「秋、私は貴方と楽しく──」
小さな声で呟く彼女は、それ以上言葉を発する事はなく目を伏せ、そのまま先輩達の輪へと戻ってしまった。
※
秋と麗は体育館の一件から関係がこじれてしまい、教室でも二人は話さなくなってしまった。
麗は何度も話しかけようと手を伸ばすが、秋が避けるようにいなくなってしまう。麗は無理やり話しかける事が出来ず、すぐに引く。
麗から逃げるように廊下へと出た秋は、自身の胸を強く握りその場にしゃがんでしまった。
何でこんな事をしてしまうのか。なんで逃げてしまうようになってしまったのか。今の秋は何でも我慢してしまい、今にでも感情が爆発してしまうほど危うくなっていた。
そんな中、部活の終わり。巴はいつもと同じく笑顔で秋へと声をかけた。
「神楽坂さん、片付けよろしくね」
いつも片付けは秋に頼み、自分は練習と言いながら部員達と楽しく話をしている。
顧問は練習が終わると一度体育館を出て行ってしまうため、部長である巴が顧問代わりになっていた。その状況を利用し、顧問が体育館を出て行った事を確認すると、巴は必ず秋の所に行き片付けを全て押し付けるのだ。
秋は巴のその様子を見て、込み上げてくる怒りを抑えるため強く手を握るだけ。我慢に我慢を重ね、秋の瞳は黒く濁り冷静さを欠いていた。
巴に言い返す事ができず、言われた通り掃除をしている秋。モップを握り、床を拭いている時。秋は巴達と話して笑っている麗を見た。
「なんで、麗ばっかり……」
誰にも聞こえない程小さく呟き秋は、はっとなって首を横に振った。
「馬鹿みたい。どうせ出来ないくせに……」
自らを嘲るような表情を浮かべ、消え入るような声を発したあと片付けを再開する。
片付けが終わったあと、秋はボールを持って体育館を出て行った。
足音が聞こえず、気配もない。儚い雰囲気をまとい、触れてしまえば消えてしまいそうに感じる。そんな少年が、ソファーに座り直した明人に近付いた。
「良かったのかい、帰らせてしまって」
質問を口にした少年の声は鈴の音のように儚く、耳に自然と入ってくるような。透き通った響きのある綺麗な声だった。
少年の名はカクリ。明人と共に小屋に住んでいる同居人。
カクリは長いワイシャツに黒いベスト。首には黒いネクタイが緩めに巻かれていた。ベストと同じく黒いスキニーズボンに、脛あたりまで長いブーツを履いている。
白銀のサラサラとした髪が切れ長の黒い瞳とマッチしているように見え、異世界から迷い込んでしまった異人なのではないかと思うほど現代感がない姿だった。
カクリに声をかけられた明人は、横に寝っ転がりながらめんどくさそうに文句を口にした。
「うるせぇよ、仕方がないだろ。また勘違いされたんだから。噂流すなら正確に流せってんだ、ふざけんなよマジで」
先程秋達と話していた態度と全く違う声質に口調。別人かと思わせるほどの豹変を見せた明人だが、カクリは慣れているため驚きはしない。ただ、呆れ気味に息を吐くだけ。
「はぁ、なぜ依頼人の前以外ではそのような態度なのだ……」
「逆に俺があの態度でお前と話してたらどうなんだよ」
「私が楽になるからいいのだけれど」
明人の豹変した態度に淡々と返すカクリ。綺麗な見た目からは考えられない冷めた返答。だが、明人はカクリの言葉を聞き流し、適当に返す。
「それに、私が帰らせて良かったのかを聞いたのは──」
「神楽坂秋だろ」
カクリの言葉を遮り、今まで適当に返していた明人が依頼人の一人である神楽坂秋の名を口にした。
「ここに立ち入れるのは開けられない匣を持ってる奴だけ。辿り着いたという事は持ってんだよ。だが、まだそれに気付いてねぇ」
ソファーに寝っ転がりながらぼやく。
「まぁ、本当に必要になったらまた来んだろ。その時になったら、開けてやるよ」
口角を上げ、明人は今の状況を楽しみながら口を開けた。
「心にある、闇に染まった匣をな」
楽しみだなぁと呟き、明人はそのまま黒い瞳を閉じた。そんな彼をカクリは横で見ており、小さく息を吐きながら木製の椅子に座った。
※
次の日、麗と秋は教室でいつも通りに一つの机を挟んで話していた。
「一体何がダメだったのよ!!」
麗は不貞腐れた顔で喚き散らしながら机をバンバンと叩く。その様子を秋はめんどくさそうに見ながら、片手に持っていたパックジュースを一口飲んだ。
今二人は、昨日の小屋について話していた。噂は本当だったが、小屋に居た男性。筐鍵明人《きょうがいあきと》の言葉が理解できず麗はずっとイライラしていた。
「筐鍵明人さんだったっけ……」
「そう! 見た目はすごくかっこいいけど性格に難アリね! もっと詳しく教えてくれないと分からないじゃない」
「まぁ、なにか含みのある言い方だったよね。実物ではない箱、どういう事なんだろう」
パックジュースを咥えながら秋が考えていると、麗が我慢の限界というように勢いよく立ち上がった、
「あぁぁぁああ! 考えてたら腹たってきた。もう部活行くよ!」
「え!? う、うん」
秋は麗の突然の行動に置いていかれないよう、すぐパックジュースを飲み干し鞄に手を伸ばす。
そんな秋の手首を掴み、体育館へと引っ張って行こうとする。手に持っていた空のパックジュースを教室の角にあるごみ箱に投げ、引きずられるように麗についていく。
投げられたパックジュースは、カコンと音を鳴らしゴミ箱の中に入った。
廊下に出ても腕を引っ張り続けられている秋は、麗の背中を見て目を伏せる。影が差し、我慢するように下唇を噛んだ。
「自分勝手」
黒く、憎しみの籠った秋の呟きは、誰の耳にも届かなかった。
※
体育館にたどり着き、更衣室で着替えを終え部活が始まる。麗は先輩達と輪になって話していた。
「流石麗だね。次の試合も麗が居れば勝てるよ!」
「うんうん。頑張ろうね!!」
「任せてください!」
麗は部活でエース級の力を持っていた。
バスケは秋と同じ時期に始めたのだが、元々の運動力が人並外れており、ぐんぐん力を付けていった。今では先輩達と互角にやり合えるまで成長している。
それに比べて秋はドリブルすら上手く出来ず、練習試合にさえ出して貰えていない。
「神楽坂さん。ボールの片付けをお願い出来る? まだ私達は練習しないといけないから」
人を嘲笑うような笑みを浮かべ言ってきたのは、女子バスケ部のキャプテン、佐々木巴。
明るい茶髪に、黒い膝までの短パンとTシャツを着用。靴はバスケで使う赤いバッシュと呼ばれる靴を履いていた。
部活中なため、髪は後ろの上あたりで一本に結んでいる。
「わかりました……」
「良かった、それじゃよろしくね」
当たり前というようにお願いした巴は、秋の返事を聞き手を振りながら去って行く。
秋は彼女の背中を見て舌打ちをし、白くなるほど手を強く握る。憎しみの籠った闇のように黒い瞳が、麗達と一緒に楽しく話している巴の背中へと向けられた。
「ふざけんなよ……」
その言葉に込められた感情は、怒りや憎しみといった負の感情そのもの。だが、その感情を相手にぶつけられるほどの勇気が秋にはないため、我慢するしかない。
一度深呼うなし、言われた通りにボールを片付け始めた。
※
片付けが終わり、秋はボールがまだ転がっていないか周りを確認している。すると、麗がボールを差し出した。
「あ、麗」
「お疲れ様。これ、廊下の方まで転がってたよ」
「あ、ありがとう」
秋はボールを受け取り、そのまま後ろにあった籠へと入れた。その時、麗が少し沈んだ声で話しかけた。
「ねぇ、秋。貴方……」
「え?」
話を聞こうと秋は麗の方に振り向いた。
麗は重い口を開け何かを伝えようと口をパクパクとさせる。だが、言葉が喉で引っかかり上手く外に出す事が出来ない。その事に秋はイラつきを見せた。
「何? どうしたの」
急かすような声には、ほんの少しの怒気が含まれており、麗は少し目を開き肩を震わす。そして、続きを口にしようと開いた。
「秋はさ……」
麗はなんとか続きを話そうとしたが、やはり口を閉じてしまい話そうとしない。その事にイラついた秋は、早く会話を終わらせようとその場を離れた。
「何も無いならもう行くよ。麗も早く先輩達と一緒にストレッチして帰った方がいいよ」
そのまま秋は離れてしまい、麗は引き留めようと手を伸ばす。だが、その手は何も掴まず空を切ってしまった。
「秋、私は貴方と楽しく──」
小さな声で呟く彼女は、それ以上言葉を発する事はなく目を伏せ、そのまま先輩達の輪へと戻ってしまった。
※
秋と麗は体育館の一件から関係がこじれてしまい、教室でも二人は話さなくなってしまった。
麗は何度も話しかけようと手を伸ばすが、秋が避けるようにいなくなってしまう。麗は無理やり話しかける事が出来ず、すぐに引く。
麗から逃げるように廊下へと出た秋は、自身の胸を強く握りその場にしゃがんでしまった。
何でこんな事をしてしまうのか。なんで逃げてしまうようになってしまったのか。今の秋は何でも我慢してしまい、今にでも感情が爆発してしまうほど危うくなっていた。
そんな中、部活の終わり。巴はいつもと同じく笑顔で秋へと声をかけた。
「神楽坂さん、片付けよろしくね」
いつも片付けは秋に頼み、自分は練習と言いながら部員達と楽しく話をしている。
顧問は練習が終わると一度体育館を出て行ってしまうため、部長である巴が顧問代わりになっていた。その状況を利用し、顧問が体育館を出て行った事を確認すると、巴は必ず秋の所に行き片付けを全て押し付けるのだ。
秋は巴のその様子を見て、込み上げてくる怒りを抑えるため強く手を握るだけ。我慢に我慢を重ね、秋の瞳は黒く濁り冷静さを欠いていた。
巴に言い返す事ができず、言われた通り掃除をしている秋。モップを握り、床を拭いている時。秋は巴達と話して笑っている麗を見た。
「なんで、麗ばっかり……」
誰にも聞こえない程小さく呟き秋は、はっとなって首を横に振った。
「馬鹿みたい。どうせ出来ないくせに……」
自らを嘲るような表情を浮かべ、消え入るような声を発したあと片付けを再開する。
片付けが終わったあと、秋はボールを持って体育館を出て行った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。
大正石華恋蕾物語
響 蒼華
キャラ文芸
■一:贄の乙女は愛を知る
旧題:大正石華戀奇譚<一> 桜の章
――私は待つ、いつか訪れるその時を。
時は大正。処は日の本、華やぐ帝都。
珂祥伯爵家の長女・菫子(とうこ)は家族や使用人から疎まれ屋敷内で孤立し、女学校においても友もなく独り。
それもこれも、菫子を取り巻くある噂のせい。
『不幸の菫子様』と呼ばれるに至った過去の出来事の数々から、菫子は誰かと共に在る事、そして己の将来に対して諦観を以て生きていた。
心許せる者は、自分付の女中と、噂畏れぬただ一人の求婚者。
求婚者との縁組が正式に定まろうとしたその矢先、歯車は回り始める。
命の危機にさらされた菫子を救ったのは、どこか懐かしく美しい灰色の髪のあやかしで――。
そして、菫子を取り巻く運命は動き始める、真実へと至る悲哀の終焉へと。
■二:あやかしの花嫁は運命の愛に祈る
旧題:大正石華戀奇譚<二> 椿の章
――あたしは、平穏を愛している
大正の時代、華の帝都はある怪事件に揺れていた。
其の名も「血花事件」。
体中の血を抜き取られ、全身に血の様に紅い花を咲かせた遺体が相次いで見つかり大騒ぎとなっていた。
警察の捜査は後手に回り、人々は怯えながら日々を過ごしていた。
そんな帝都の一角にある見城診療所で働く看護婦の歌那(かな)は、優しい女医と先輩看護婦と、忙しくも充実した日々を送っていた。
目新しい事も、特別な事も必要ない。得る事が出来た穏やかで変わらぬ日常をこそ愛する日々。
けれど、歌那は思わぬ形で「血花事件」に関わる事になってしまう。
運命の夜、出会ったのは紅の髪と琥珀の瞳を持つ美しい青年。
それを契機に、歌那の日常は変わり始める。
美しいあやかし達との出会いを経て、帝都を揺るがす大事件へと繋がる運命の糸車は静かに回り始める――。
※時代設定的に、現代では女性蔑視や差別など不適切とされる表現等がありますが、差別や偏見を肯定する意図はありません。
世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~
ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。
「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。
世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった!
次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で
幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──!
「この世に、幽霊事件なんてありえません」
幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の
ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる