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ツムリエ帝国

最近意外な人物に会う確率が高くなってきたな

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「え、ヒュース皇子!?」

 俺達に声をかけてきたのは、グランド国の皇子、ヒュース・アグリオス皇子だった。

 皇子と言っても、こいつは女。
 ロゼ姫と婚約させられそうになっていたんだったな。

 あっちも目を丸くして俺達を見ているし、本当に偶然の出会いらしい。

「こんな所で何をしている」
「それはこっちの台詞なんだが……。なんで、皇子がこんな所に一人で? 護衛はいないのか?」

 周りを見てみるけど、ヒュース皇子以外に人はいない。
 護衛とかはいいのか? 

 父であるアステール・アグリオス王が許さないと思うんだが……。

「ここまでは護衛がいたが、中に入った時に巻いて来た」
「なぜ」
「うざいからだ」

 まぁ、たしかに、一人で行動したい気持ちはわかるな。
 護衛とか、めんどくさそうだし。

「でも、それだと護衛の奴らが困るだろ」
「困るだろうけど、知らん」

 …………まっ、こいつの事情は俺には関係ないな。

「それより、何でヒュース皇子はここにいるんだ?」
「ちょっとな。理事長に用事があったんだが、ちょうど出張が入って席を外したと聞いて、時間を潰していた」
「へぇー」
「時間潰しついでに魔法について色々調べていたところだ」
「ふーん」

 ここに来る理由は、やっぱり魔法関連だよな。俺もだし。

「私は答えたぞ。そっちは?」
「編入試験を受けるのと、魔法について調べようと思ってここに来た」
「ほう、それは珍しいな。ぬしは調べ物などはしないと思っていたぞ。すぐに寝るだろう」
「言いたい放題だな…………」

 あれ、俺ってお馬鹿キャラ認定されている?
 ……あ、でも、お馬鹿キャラの方が色々都合がいいか。

「それにしても、理事長がいないだけでここまで魔法使いが自由になれるのだな。今だけだろうから、目に焼き付けておこう」
「え、これが普通じゃないのか?」

 思わず聞いてみると、ヒュースがクルッと振り向いた。

「ここの噂を知らないのか?」
「理事長についてならもう聞いているぞ、厳しい奴で、冷酷なんだったか?」
「そんな感じだ。だから、皆、理事長に逆らえん。それでも、魔法使いとして名前を出したい者はここに来る」

 魔法について特化した帝国。
 この世界は魔力がすべて。でも、今までの戦闘で学んだ。

 魔力だけあっても意味は無い。
 魔力と魔法、どっちも持っていなければならない。

 そうなると、魔法に特化したツムリア帝国は、そりゃ、少しの噂程度では人はいなくならないだろうな。

「はぁ、めんどくさい」
「ところで、今は二人だけか? リヒトと言う女も、前はいなかったか?」
「あぁ、リヒトは今、編入試験を受けに行っている」
「――――え? 編入試験を、か? あぁ、そういや、さっき言っていたな」
「え、う、うん」

 な、何をそんなに驚いている?

「ま、まぁ、理事長よりはましか」
「どうしたんだ?」
「今回の編入試験の審査員が少々厄介だったはずだからな。つい」
「厄介?」
「あぁ」

 え、なんでそんな神妙な顔してんの、怖いって。

「どんな奴が審査員なんだ?」

 アルカが聞くと、ヒュースは腕を組み、唸りながら教えてくれた。

「名前は確か、アラリック。魔力探知を得意とする魔法使いのはずだ。実力は、クインの次に位置するほど高いと聞いているぞ」
「…………魔力探知が得意?」
「そうだ」

 それって、まずいんじゃないか?
 微かにでも出ているグレールの魔力をリヒトから感じ取られてしまったら、取り返しのつかない事態にならないよな?

「…………なにか、気がかりな事でもあるのか?」
「…………ずるがばれるかもしれない」
「何をしでかす予定だったのだ…………」

 なんとなく、不安でいっぱいになっちまって、ヒュース皇子に言ってしまった。

 ヒュース皇子には関係ないだろうし、伝えてもいいだろうと言うのも理由。
 俺達の話を聞いたヒュース皇子は、眉間に深い皺を寄せた。

「それは、賭けに出たな。でも、運が悪かった。明日が編入試験だし、今のうちに作戦を見直した方がいい」
「だが、俺達は確実にリヒトに編入試験をクリアしてもらわんとなんだ。なにか、いい案はあるか?」
「それは……、もう、実力で挑むしかないだろ。前までの実力なら、難しいかもしれないけれどな」

 はぁ、まぁ、どっちにしろ理事長がいる時点できつかっただろうし。
 どのみち実力で入らないと、駄目だよなぁ。

「リヒトは、実力はあるぞ?」
「知ってる。リヒトが強いのも、仲間として頼りにもしている。だが、今回のは技術ではなく魔力量。正直、リヒトの魔力量はそこまで多くないし、基本攻撃魔法を出したのもアクアのアドバイスでやっと。さすがになぁって」

 アルカの言う通り、リヒトの実力は頼りになる。だが、今回ばかりはな、難しい。

「それ、何十年前の話をしているんだ?」
「え?」
「編入試験は、もう魔力量だけで物を言う時代では無くなったぞ」

 ………………………………え?
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