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封印解除

時空を歪めさせられたのか?

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「ひとまず、合わせ鏡を試してみる。この部屋にはもう鏡はないから、動かせそうな鏡を他の部屋で探すぞ」
「わかりました」

 こんな、何もわからないダンジョン。違ったとしても、試すしかない。
 今は、他の部屋から鏡を持って来よう。

 他の部屋に向かって鏡を調達──したいんだけど……。

「他の部屋の姿見は持ち運びできませんね。畳とくっついています、剥がしますか?」
「いや、くっついているという事は、これはダミーだろ。他のもんを探すぞ」

 SSSダンジョンだし、余計な事をしないで慎重にいきたい。

「あっ、カガミヤさん! ここに手鏡ありますよ。これは使えませんか?」

 リヒトが拾い上げたのは、昔ながらの手鏡。
 和風テイスト。枠縁は淡い紅色、牡丹がちりばめられている。
 こんな所に合ったからなのか、薄汚れている。

 リヒトから受け取り、裏側を見てみるけど特に何もない――わけではなかった。

「これって、お札か?」

 手鏡の裏には、古いお札が貼られていた。
 文字は滲んでいて読めない。滲んでいなくても読める自信はないけど。

「お札って、なんでしょうか」
「ロゼ姫はお札を知らないのか?」
「どのような物かは知っていますが、どのような効果があるかまでは流石に……」

 それなら俺もだぞ。

 たしか、陰陽師が式神や術を出すのに使っていたよなぁ……。
 それか封印するのにも使っていたか。今回の場合は、後者の可能性が高いな。

 この封印を解くと何が出てくるのか。
 幽霊ではないことは確かなんだけど、なんのモンスターが出て来るかが問題だ。

「お札、取るのですか?」
「まずは合わせ鏡を試してからだ。何もなかったら剥がしてみようと思う」

 少し触ってみるけど、お札は剥がせそう。
 これはトラップなのか、進むための鍵なのか。

 今は、怪しいものは後回し。一番最初に試そうとしていた合わせ鏡をしてみよう。

 他の奴らと寝室に戻り、姿見の前に立つ。
 リヒトとアルカ、ロゼ姫はなぜか部屋の出入り口で立ち止まってしまった。

 グレールは部屋に入っているけど、ロゼ姫の近くにいる。アマリアは俺の後ろ。

「んじゃ、合わせるぞ」

 言いながら合わせ鏡をしてみた。
 鏡の奥に鏡の姿が映る。その奥にも鏡の姿、その奥にも同じ光景。

 ずっと続く鏡の世界。これが道となり、悪霊を封印すると言った説があったな。

 だが──……

「…………特に、何もない?」
「みたいだな。──ん?」

 ? なんか、鏡が震えてる?
 俺が持っている鏡が震え始めた。なんだ、これ。スマホのバイブ機能?

「うわっ!?」
「知里!」

 アマリアが慌てて鏡を掴むが、強くなる震えは止まらない。
 グレールも慌てて来てくれた。

 そんな時、襖が大きな音を立てて閉まる音が耳に入る。でも、確認できない。

「ロゼ姫!」
「グレール! ひとまず今は鏡を!!」

 アマリアの言葉に、グレールは苦い顔を浮かべながらも鏡を掴み、凍らせる。
 意味があるのかと思ったが、強くなっていた震えは徐々に弱まった。

「はぁ……。なんだぁ?」
「わからない。けど、確実に何かの鍵になっているのは確かだね」

 アマリアも頭を悩ませている。
 そんな中、一人の発狂声が……。

「ロゼ姫、ロゼ姫どこですか! ロゼ姫!!」
「グレール、落ち着け……」

 部屋の中を見回すグレールは、もう発狂している。
 精神安定剤がなくなった今、暴走するのは仕方がない。

 けど、襖が閉まっただけだろ。
 何で入ってこないかはわからんが、廊下に居るはずだ。

「まったく……」

 鏡をアマリアに渡して、襖を開ける。
 ほれ、やっぱりここにいっ――あ、あれ?

「誰も、いない?」

 しかも、さっきまで見ていた古民家の廊下じゃなくなってる。
 綺麗で、埃とかも舞っていない。

 確認するために後ろを見ると、部屋の中はさっきまでと変わらず汚い。

 な、なんじゃこれ。時空が歪んだのか?
 ラムウのような、空間を捻じ曲げるモンスターがここに存在しているのか?

「ロゼ姫!! 返事をしてください!」
「…………落ち着いてくれ、グレール」

 考えるのは後だ。
 今は、グレールを落ち着かせないとうるさくてたまらんわ。
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