上 下
431 / 520
封印解除

好奇心は俺をも殺すから諦めろ

しおりを挟む
「こいつが首羽骨。俺の魔法で作り出した亡霊だ」
「……………………ん? 亡霊を、魔法で作り出した??」

 ど、どういうことだ?
 グラースとはまた違うのか?

「亡霊と言うと少し語弊があるな。マシに言いすぎたわ」
「と、いうと?」
「死体だ」
「……………………ん?」
「し、た、い、だ」
「聞こえとるわ」

 し、死体?
 死体を魔法で作り出した? 

 い、意味が理解できない。
 どう解釈すればいいんだ??

「スペクターは、この世界で最も珍しい闇魔法の使い手なんだよ」
「闇魔法?」

 光魔法とか闇魔法は、ゲームとかで主にある属性の一つだよな。
 この世界では珍しいのか。そういや、今まで会ったことがなかったなぁ。

「闇属性って、外れ属性とも言われているんだよね」
「そうなの?」
「ちげぇよ」

 アマリアの説明をスペクターが否定した。
 違うの? え、なんなの?
 何も知らない俺の前でそんな対立しないで。

「でも、使い勝手悪いでしょ? 禁忌魔法が多いし。首羽骨も、禁忌魔法でしょ?」「…………」

 え、え? 禁忌魔法? それって、死者蘇生的な?
 いやいや、本当にわからないんだけど。

「おそらくその魔法は、蘇生魔法。禁忌の中の禁忌、人を生き返らせる魔法だよ」

 ……………………あぁ、例えで出したもんが当たっちまった~。
 確かに禁忌だよなぁ~、有名な禁忌魔法だよなぁ。

 んじゃ、この女は、スペクターにとって彼女とか姉とか妹とか。
 なんか、生き返らせたいほどの関係性だった女って事か?

 思わずスペクターを見ていると、ため息を吐かれてしまった。

「しっかりと代償も払っている」
「その代償は、なに?」
「俺の肉体」
「に、肉体!?」

 アマリアは質問しておいて、わかっていたらしい反応をしている。
 俺が大きな声を出しちまっただろうが。
 リヒトはもう、頭がショートしているらしい。

 アシャーも驚いている。
 驚くよな、やっぱり。でも、肉体と言っときながら、腕とか足は生身っぽいし、本当に渡したのか?

 まさか、体全部を渡したって感じ?
 でも、普通の人間、だよな? どういうことだ?

「首羽骨がいつまでも現世をさ迷えるように、不老不死になったって感じかな?」

 アマリアの質問に、スペクターは頷く。

「…………そういうの、あり? 普通、肉体の一部を奪われるとかじゃないの? それか、体全体を奪われて、この世から消えてしまうとか」

 今回の件は、さすがに落ち着いてはいられない。

 だって、え? 
 魔法で禁忌を犯して、死体? に肉体を渡して不老不死?
 もう、わけわかんねぇ…………。

「この世界で死んだ人がさ迷い続けるには、生者の肉体が必要だ。だが、それは何も、肉体に入り込むだけがやり方じゃねぇ」

 お、思わず隣にいるグラースを見てしまった。
 冷静に話を聞いているけど、普段笑っているから無表情になると怖いな。
 何を考えているんだ?

「…………それ、もっと詳しく聞いてもいいか?」
「俺の魔力がこいつの命となり、俺が生きていなければこいつは魔力不足で死ぬ。俺以外の魔力は適合しねぇから無理。俺の身体に入り込むと言っても、そのままだと寿命で結局死ぬ。考えた結果、俺の肉体に入り込むことは諦め、俺の身体を不老不死にした。んで、長くこの世界を生きていく方法を見つけたんだ」

 ……………………深く考えては駄目だ。
 この世界は、何でもありなんだ。そう、不老不死になって、死体と共に行動する奴が現れてもいいんだ。

 普通なんだ、そう、普通。

「――――面白いね。禁忌をそうやって利用するなんて」
「奇跡だけどな。それに、魔力がずっと吸われているから常に眠い。マイナス思考が送られるから気分が上がらん、体が重たい」

 あぁ、なるほど。だから、めっちゃ欠伸を零しているのか。
 どんだけ欠伸するんだよとか思っていたが、納得だ。

 今の説明だと、俺とアマリアの関係みたいな感じか?
 というか、今の話だと、グラースはどうなるんだ?

 今は幽体で、俺に一度とりついているから、なんとなく繋がりが出江来ているけど。
 ずっとさ迷う事が出来ないんだよな。いずれ、グラースもいなくなるって事か?

 なんか、頭が痛くなってきた。

「その話、もっと聞きたいなぁ~」
「断る。仮に話すとしたら、それ以上の協力は一切しない」
「それでもいいから話をきかっ――――」
「それだけは勘弁しろ!」

 たかが興味だけで、大事な戦力を削ろうとするなよアマリア君や!
 こいつなら絶対に話したら姿を晦ませて、逃げまくるぞ。

 現在、エトワール達から逃げているんだからな。逃げきれているんだからな!

 絶対に管理者に追われながらカケル解放し、プラスでスペクターを見つけるなんて不可能だぞ。

 だから、今はその好奇心は出さないでくれ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...