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犯した罪

協力願い

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 冒険者としてセーラ村を歩いていた青年は、仲間と共にギルドに向かっていた。

「今回も簡単にダンジョンを攻略出来たな」
「そうですね! カケル様のおかげです!!」

 冒険者の中心を歩いていたのは、リーダーであるカケル=ルーナ。
 彼の言葉に返したのは、三角帽子をかぶっている銀髪女性、ブライト・エトワール。

「ふん、あんな下級モンスターしか出ないダンジョンをクリアしたところで何も嬉しくはないわ」
「くわぁ……。どうでもいいから、早く報酬貰って寝かせろよ」

 腕を組み偉そうにしているのは、占い師のようなマントとマスクを身に着けている女性、スペル。
 隣で欠伸を零し文句を言っている男性は、スペクター。

 性格がバラバラな四人は、ワイワイ話しながらギルドに向かっていた。
 そんな彼らの前に、白い翼を広げる双子が現れ行く道を封じた。

「あぁ?」

 不機嫌そうな声を出したのは、涙を拭っているスペクター。
 カケル達も立ち止まり、目の前に立つ双子、アンジュとアンジェロを見た。

「少し、時間を頂いてもいいかしら」
「話したい事があるんですよねぇ~」

 いきなりそんなことを言われても、カケル達は何が何だかわからない。
 だが、いつも予想外な出来事に冷静に対応している冒険者達だ。
 今回も、誰も取り乱す事はせず、カケルに一任した。

「……話、ねぇ~。どのような感じかだけ、教えてくれるかい?」
「貴方達は、アンヘル族という種族を聞いたことはあるかしら。今回の話は、アンヘル族の今後に関わるものなの」

 問いかけたのは、アンジュ。
 カケルは、腕を組み考えるが、知らないらしい。
 周りの人を見回すが、誰も口を開かない。

「すまない、アンヘル族といった種族は、聞いたことがない」
「そこまで地上に降りていないので、それも無理はありません」

 アンジュがアンジェロに目伏せをする。
 ここからは、アンジェロに説明を任せるらしく、後ろに下がった。

「アンヘル族は、空にフォーマメントという世界があり、そこで過ごしているのですよぉ~」
「そうなんだな。そんな、フォーマメント? で、過ごしているアンヘル族が、地上で暮す俺達にお願いとはなんだ?」
「ここで話すのは、人の目があります。どこか、個室はありませんかぁ~?」

 周り見て、アンジェロはカケルに提案する。
 今度は、カケルが後ろにいるエトワールを見た。

「エトワール、何かいい所はあるか?」
「んー、そうですねぇ~」

 三角帽子を触りながら悩んでいると、ふと、カケルの指輪に目を向けた。

「アビリティの方が沢山の情報を持っていると思いますよぉ~」
「おっ、そうか?」

 今度は、カケルの指にはめられている指輪を見る。
 だが、なぜかその時にスペルが手を上げた。

「それなら私が調べます」
「お、おう?」

 カケルの目線が逸れた。瞬間、アビリティが反応。指輪の石が光り出す。

『ここの近くでは、個室のご用意があるお店がありません。ギルドで部屋をお借りした方がよろしいかと』
「あんたに用はないの。引っ込んでいてくれないかしら」
『最初に呼ばれたのは私です。貴方が引っ込んでいてください』

 なぜか、アビリティとスペルの言い争いが始まってしまった。
 エトワールは「あちゃぁ、これでもかぁ」と、頭を抱え、カケルもため息を吐いた。

「…………時間がない。今回はギルドの部屋を借りるぞ。今回の報酬ももらわないといけないしな」
「…………はい」

 スペルは渋々と言った感じに了承。
 アビリティを睨み、後ろに下がった。

「騒がしくしてすまんな。案内する」
「こちらこそ、無理を言ってしまいすいません~。よろしくお願いしますぅ~」

 そのまま二人は、カケル達について行った。

 ※

 ギルドの受付に説明して、奥の部屋を借りたカケル達とアンジュ達。
 だが、スペクターは「めんどくさい」と言って、別行動。
 流石に一人では不安があり、スペルも仕方がないというようについて行った。

 今、部屋にいるのはエトワールとカケル、アンジュとアンジェロの四人。
 中心のテーブルを囲い、椅子に座る。

 全員が座ったことを見計らい、カケルがアンジェロを見た。

「では、詳細を話してもらおうか」
「よろしくお願いしますねぇ~」

 アンジェロは、アンヘル族という存在、今回の事件について話した。
 それで、今フォーマメントが危険な状態で、このままではアンヘル族の世界がなくなってしまう。

 せめて、王をどうにか出来ないか。
 人間ならこんな時どうするのか。それを問いかけた。

 エトワールは眉を下げ、「可哀想、だけど……」と、カケルを見る。
 流石に今、話を聞いただけではどうする事も出来ないんじゃないかと、エトワールは思っていた。

 だが、カケルは話を聞いてから無言。何も話さず、顎に手を当て考え込む。
 願いを込め、アンジェロ達がカケルを見ていると、数分後、やっと口を開いてくれた。

「わかった。まだ、どうにか出来るとは言い切れないが、まずフォーマメントを見せてはくれないか?」
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