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守護霊?

何も映さない瞳

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『何をする気なの?』
(「三つの技を出す」)
『…………どうやって?』
(「こうやって」)

 グラースが怪しむように聞いて来る。
 怪しんでいるのは仕方がない。正直、俺も上手くいくかなんてわからない。

 でも、やる。
 思いついたのなら、やるしかない。

 まず、今俺は二つの魔法を同時に発動している。
 水魔法のalawaterアーラ・ワータ
 炎魔法のturboflameトュルボー・フレイム

 もう一つ、魔法を放つ。
 いや、放つわけではない。

 

 一度無くなったけど、再度アクアが水を出してくれたから、使えるもんはある。
 利用する形なのなら、魔法にはカウントされない。

 つまり、この場にある沢山の水は、俺次第で味方に出来る。

 今は、アクアも余裕はなさそう。
 傷も酷いし、視点も定まっていない。
 意識が散漫としているはず。

 turboflameトュルボー・フレイムで、アクアの水の竜巻を抑え込む。
 同時に、下で波打っているアクアが作り出した水を操り、仕留める。

「ふぅ……」

 アクアの背後に、高波を作り出す。
 このまま、呑み込んでやる!!

「――――うまくはいかないか……」
「少し驚きましたが、止めるのは簡単ですねぇ~」

 簡単に高波を止められた。
 だが、構わない。

 一瞬、目線が逸れた。

 すぐさま右手に魔力を最大限注ぎ、炎の竜巻に魔力を送る。
 ドカンッと、大きな音を鳴らし、アクアの竜巻を押し返した。

 すぐに止められたが、良いわ。
 また、高波を操る。

「…………小賢しいですね」
「お前もそんな顔を浮かべるんだな。さっきまでの威勢はどこ行った?」
「少し、疲れてきました」

 あ、あれ。両手を広げた?
 何をする気だ。

「水の竜巻を消します」

 え――――

 あっ、巻き上げられていた水が落ち、竜巻がなくなる。
 それだと、俺の炎の竜巻が突っ込むぞ?!

 いや、そんなこと分かりきっているはず。
 表情に焦りは浮かんでいない。なんだ、何を企んでいる。

「さすがに疲れたので、少々やり方を変えます。――――swordwaterスワード・ワーター

 言うと、作られたのは水の剣。何をする気だ……。

 迫りくる炎の竜巻を、アクアは余裕そうに見据え、剣を横一線に動かす。

 すると、簡単に俺の竜巻を切った…………切った!?

「次です」

 え、いなくなっ――……

『後ろ!!』
「っ!?」

 振り向くと目の前に剣先。顔を逸らすが、頬が切れる。
 まずい、イルドリ王を抱えながらだと動けない。

 剣をアクアが振り上げていた。

 ――――ガキンッ!!

「――――邪魔」
「っ!?」

 水の翼で防ぐと、アクアは真顔で再度、剣を振りかぶる。

 ――――ザシュッ

「しまっ――――」

 水の翼、右翼を切られた!!
 バランスが取れない、イルドリ王を抱えているから普通に落ちる!!

「もう一枚」

 ――――ザシュッ

 左翼まで、切られた。
 また、翼を作らないとやばい!!

 「――――あっ……」

 藍色の瞳と、目が合っちまった。
 狂気だけでは無い。どこか、怯えているような瞳。

『チサト!!!』

 ────グラースの焦っている声。わかってる、早く次の一手を考えないといけない。なのに、動かない。魔力のコントロールが出来ない。

 あの瞳に見つめられると、体が動かなくなる。

 徐々に遠くなる空、近くなる水。

「――――さようなら、知里」

 そう言ったのを最後に、体を水に打ち付けられた。

 ※

「外で、大きな戦闘が行われていますね」

 城の一室、王妃と王が一つの水晶に手をかざし、汗をにじませながら呟く。

「戦闘……。一体誰が」
「もしかしたら、知里達が戻ってきたのかもしれないね」

 ロゼ姫も、体が震えてる。
 これは恐怖や不安だけではなく、魔力の枯渇もあるだろうなぁ。

 僕に魔力を送り続けてくれているし、仕方がない。
 今は、他の事だ。この場にいないグレールとリヒトが気になる。

 二人とは、アクアからの奇襲を受けた時に離れてしまった。
 今この場にいるのが、僕とロゼ姫、王妃と王。クラウド、ソフィアにアンキの七人。

 リヒトとグレールは、海底人の避難に回っていた。
 もう、周りは湖。城以外に身を隠せるような所はない。

 ここにいないのは、正直不安しかないな。
 でも、グレールとリヒトが合流していたらまだ安心出来る。

 グレールは海底を熟知しているし、どこか、僕の知らない避難があるのかもしれないし。

 どうか、グレールとリヒト、合流していますように――……
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