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守護霊?
兄弟間に大きな何かがあったんだろうな
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みんなが俺を見て来る。
煩わしいけど、見て来る要因はわかっているから、とりあえずそれを拭う。
「わりいな、アルカ」
「それは大丈夫だが……。どこか痛いのか?」
「いや、痛くない。痛がっているのは、あいつだ」
と言っても、俺の視界にしか映らないからわからないだろうけど。
ベッドに座り直し、壁の端で顔を俯かせているグラースを見てみる。
さっきまでの記憶が全くないが、ひとまず表情筋が痛い。
『……………………』
はぁ…………。
あいつの感情が大量に流れ込んできた。
俺が今感じているのは、あいつが今まで感じてきた様々な痛みなんだろうな。
寂しい、怖い、辛い。
でも、自分は死んでしまったから一人なのは当たり前、気づかれないのも当たり前。
頭と心がちぐはぐ。
何とか保っていた均衡が、直接グレールと話しちまったせいで崩れ、感情が爆発したな。
「はぁ…………」
「あの、カガミヤさん…………」
「あ? ――――っ」
リヒトがハンカチ片手に俺の目元を拭いて来る。
あぁ、まだ涙が出ていたのか、気づかなかったな。
「もう大丈夫だ、サンキューな」
「でも、まだ……」
「これは俺の涙じゃねぇよ」
ロゼ姫とグレールは、俺が指した方向をずっと見続けている。
まだ、グラースは顔を上げない。
口に出さなくても意思疎通ができるような方法を探していたはずなのに、触れてはいけないものに触れてしまった感じだ。
「――――ん? アマリア?」
アマリアが神妙な面持ちでこっちに来た。
「知里、君って本当に不運体質だね。いや、巻き込まれ体質と言った方がいいのかな」
「勘弁してくれよ、マジで…………」
ため息をいくら出してもすっきりしないなぁ。
やっぱり、取り憑かせるんじゃなかった。
結局、欲しい成果は得られなかったわけだし。
「知里、さっきまでの記憶、ある?」
「ないな」
「見たい?」
「ロゼ姫の魔力に余裕があったらな」
「それなら、お預けだね」
「おー」
…………グレールが今何を思っているのか、背中からは読み解くことができない。
聞くのも野暮だし……。
この気まずい空気、どうするかなぁ。
「――――グラース、私の声が聞こえている事を信じ、聞きますね。貴方は、生きたかったですか?」
静かな空間に、グレールの声が響く。
グラースは、何も言わないし、動きを見せない。
肩越しに俺を見て来るけど、グラースが何も反応しないから首を横に振るしかない。
「――――グラース、これは単なる意思確認です。深い意味はありません。生きたかったか、生きたくなかったか。それだけが聞きたいのです」
それでも、グラースは反応を見せない。
付け足すようにグレールが口を開く。
「ちなみに、私は死にたいとは考えていません」
今のグレールの言葉に、やっとグラースが顔を上げた。
「責任をもって死ななければならないか。弟を死なせておいて自分だけ生きていていいのか。そう考えた時期もありました。ですが、私は生きる意義を見つけたのです」
言いながら隣に立つロゼ姫を見る。
「今度こそ、守り抜かなければならないのです。私は、私にとって大事なお方であるロゼ姫を」
力強く言い切ったグレール。
グラースは最初、顔を上げるだけで何も言わなかったけど、数秒でやっと口を開いた。
『――――僕は、生きたかった。兄さんと一緒に、ずっと一緒に、生きたかった。死にたくなかった。ずっと、一緒にいたかった』
グレールが確認してくるから、今の言葉を一言一句変えずに伝えると、苦い顔を浮かべた。
『でも、僕は、自分が一人生き残るより、兄さんが生き残ってくれたことが嬉しい。欲を言えば一緒に居たかったけど、それが叶わないのなら、兄さんに生きてほしかったから』
そのまま伝えると、グレールがグラースのいる方向に目を向けた。
「私も、欲を言えば貴方と共に生きたかった。生きてほしかったですよ、グラース」
ニコッと笑いかけるグレールを見て、グラースも同じく笑う。
近付き、触れられないが、ギュッと抱き着く。
何かを感じたのか、グレールは目を細め、抱きしめるような仕草をする。
隣に立つロゼ姫は目を細め、嬉しそうに笑う。
この場でわかっていないのは、アルカとリヒト、クラウドとアマリアとアンキ。
五人は首を傾げ、俺に詳細を求めて来る。
でも、いくら見られても、応えることは出来ないぞ、これ。言葉に出来ないし。
「あ、あの、涙……」
「…………俺の中にある水分がすべてなくなる…………」
グラースを見ると、涙を流している。
まったく、俺の事も考えてくれよ……。
煩わしいけど、見て来る要因はわかっているから、とりあえずそれを拭う。
「わりいな、アルカ」
「それは大丈夫だが……。どこか痛いのか?」
「いや、痛くない。痛がっているのは、あいつだ」
と言っても、俺の視界にしか映らないからわからないだろうけど。
ベッドに座り直し、壁の端で顔を俯かせているグラースを見てみる。
さっきまでの記憶が全くないが、ひとまず表情筋が痛い。
『……………………』
はぁ…………。
あいつの感情が大量に流れ込んできた。
俺が今感じているのは、あいつが今まで感じてきた様々な痛みなんだろうな。
寂しい、怖い、辛い。
でも、自分は死んでしまったから一人なのは当たり前、気づかれないのも当たり前。
頭と心がちぐはぐ。
何とか保っていた均衡が、直接グレールと話しちまったせいで崩れ、感情が爆発したな。
「はぁ…………」
「あの、カガミヤさん…………」
「あ? ――――っ」
リヒトがハンカチ片手に俺の目元を拭いて来る。
あぁ、まだ涙が出ていたのか、気づかなかったな。
「もう大丈夫だ、サンキューな」
「でも、まだ……」
「これは俺の涙じゃねぇよ」
ロゼ姫とグレールは、俺が指した方向をずっと見続けている。
まだ、グラースは顔を上げない。
口に出さなくても意思疎通ができるような方法を探していたはずなのに、触れてはいけないものに触れてしまった感じだ。
「――――ん? アマリア?」
アマリアが神妙な面持ちでこっちに来た。
「知里、君って本当に不運体質だね。いや、巻き込まれ体質と言った方がいいのかな」
「勘弁してくれよ、マジで…………」
ため息をいくら出してもすっきりしないなぁ。
やっぱり、取り憑かせるんじゃなかった。
結局、欲しい成果は得られなかったわけだし。
「知里、さっきまでの記憶、ある?」
「ないな」
「見たい?」
「ロゼ姫の魔力に余裕があったらな」
「それなら、お預けだね」
「おー」
…………グレールが今何を思っているのか、背中からは読み解くことができない。
聞くのも野暮だし……。
この気まずい空気、どうするかなぁ。
「――――グラース、私の声が聞こえている事を信じ、聞きますね。貴方は、生きたかったですか?」
静かな空間に、グレールの声が響く。
グラースは、何も言わないし、動きを見せない。
肩越しに俺を見て来るけど、グラースが何も反応しないから首を横に振るしかない。
「――――グラース、これは単なる意思確認です。深い意味はありません。生きたかったか、生きたくなかったか。それだけが聞きたいのです」
それでも、グラースは反応を見せない。
付け足すようにグレールが口を開く。
「ちなみに、私は死にたいとは考えていません」
今のグレールの言葉に、やっとグラースが顔を上げた。
「責任をもって死ななければならないか。弟を死なせておいて自分だけ生きていていいのか。そう考えた時期もありました。ですが、私は生きる意義を見つけたのです」
言いながら隣に立つロゼ姫を見る。
「今度こそ、守り抜かなければならないのです。私は、私にとって大事なお方であるロゼ姫を」
力強く言い切ったグレール。
グラースは最初、顔を上げるだけで何も言わなかったけど、数秒でやっと口を開いた。
『――――僕は、生きたかった。兄さんと一緒に、ずっと一緒に、生きたかった。死にたくなかった。ずっと、一緒にいたかった』
グレールが確認してくるから、今の言葉を一言一句変えずに伝えると、苦い顔を浮かべた。
『でも、僕は、自分が一人生き残るより、兄さんが生き残ってくれたことが嬉しい。欲を言えば一緒に居たかったけど、それが叶わないのなら、兄さんに生きてほしかったから』
そのまま伝えると、グレールがグラースのいる方向に目を向けた。
「私も、欲を言えば貴方と共に生きたかった。生きてほしかったですよ、グラース」
ニコッと笑いかけるグレールを見て、グラースも同じく笑う。
近付き、触れられないが、ギュッと抱き着く。
何かを感じたのか、グレールは目を細め、抱きしめるような仕草をする。
隣に立つロゼ姫は目を細め、嬉しそうに笑う。
この場でわかっていないのは、アルカとリヒト、クラウドとアマリアとアンキ。
五人は首を傾げ、俺に詳細を求めて来る。
でも、いくら見られても、応えることは出来ないぞ、これ。言葉に出来ないし。
「あ、あの、涙……」
「…………俺の中にある水分がすべてなくなる…………」
グラースを見ると、涙を流している。
まったく、俺の事も考えてくれよ……。
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