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元殺し屋

こんな状況、マジであり得ないんだけど

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 アシャーには悪いが、話を切りあげさせてもらい、城の裏へ走る。
 そこにはロゼ姫がいた。

 それと、苦し気に胸を押さえ地面に四つん這いになっているアマリアの姿。

「アマリア! 何があった!!」

 俺が来たことで、ロゼ姫は顔を上げ、青い顔を向ける。

「チサトさん………」
「ロゼ姫、何があったんだ。というか、リヒト、何があった。なんで……」

 後ろで服を掴み立っているリヒトに聞くが、困惑の表情を浮かべるだけ。

「わからないんです。指示通り、私は魔法華に魔力を送り、育てていただけなんです」
「い、色々聞きたいが、今はいい。だったら、いったい…………」

 まさか、俺が足を掴まれたのと何か関係あるのか?

「ち、ちさ、と」
「な、なんだ、アマリア」

 苦し紛れに俺の名前を呼ぶアマリア。
 耳を傾けると、急に服を掴まれ引き寄せられた!?

「なっ――――」
「なにを、っ、した」

 な、何をしたって、何もしてねぇよ、俺自身……。

「何をしたとかは、ないが……。されたと言えば、されたことはある」
「なにを……」
「足を、掴まれた。その時、何かを仕掛けられたのは確実だ」

 言うと、アマリアが服を離し、地面に倒れ込む。

「アマリア!?」
「ごめん、限界…………」

 げん、かい?

「っ。アマリア? アマリア!!!」

 気を、失っちまった……。

 ※

 部屋に戻り、ベッドに眠らせる。

 意識を失う事なんて今まで無かったのに。
 確か、痛感とかもないんだよな? なんで、倒れた、何があった。

 わからない。
 アマリアに影響のあることを、俺がされたのはそうなんだろうけど。

 ……そういや、管理者にいた時は、アマリアがウズルイフに狙われていたんだっけか。
 また、狙いをアマリアに変えたのか?

 それとも、アマリアを狙う事で、俺を動揺させ、心を壊そうとしているのか?
 わからないが、こんなことをするのはウズルイフくらいだろう。

 なんだよ、くっそ。

「カガミヤ!」

 アルカとグレール、クラウドが戻ってきた。
 リヒトが呼びに行ってくれていたらしい。

「何があったんだよ」
「わからん。いや、要因はわかるが、原因がわからない」
「要因?」

 アルカに簡単に説明すると、顔は真っ青。横に垂らしている拳を震わせている。

「な、なんだよそれ。一体、何が…………」
「わからん。だが、ソフィアが今調べてくれているはずだから、それを待つしかないだろうな」

 アマリア、まだ苦しそう。
 アシスト魔法でどうにか出来ないのか……。

「どうすればいいんだ……」

 接続を切る? いや、そんなの本末転倒だ。
 今は、やっぱりソフィアを待つしか出来ない。

 でも、血で何か分かるのか?

「あの、魔力の供給でアマリア様は生き長らえているんですよね?」
「え、あ、あぁ……」

 なんだ、グレールが深刻そうに…………。

「チサト様、魔法、使えますか?」

 え、魔法?

「使えるに決まってんだろ。今日だって、普通に使っていたし………」

 グレールは何を言っている。
 焦りもあり働かない頭で言うと、今度はクラウドが口を開いた。

「魔力で生き長らえていたっつーことは、逆に考えれば魔力さえあれば問題ねぇーという事じゃねぇの」
「そ、うだが…………」

 今まではそうだった。
 苦しがっていたのは、クロヌが現れ精神的ダメージを食らった時のみ。

「それなら、おめぇの魔力に何か変化があったから苦しんでいるんじゃねぇの?」
「っ、試してみる」

 まさか、まさか、だろ?
 そんな、でも、嫌な予感が頭を走り、確かめずにはいられない。

 手のひらを上に向け、flameフレイムを発動。

 ――――だが。

「っ! flameフレイムが出ない!!」

 何度も何度もflameフレイムを唱え、魔力を集中するのに出てくれない。
 というか、自分の中に流れているはずの魔力を感じない。

 …………体に流れているはずの魔力も、感じない。

「――――俺の中の魔力が、消えた?」

 ※

「ヒュー、これは面白い。こんな事も出来るのかよぉ~。
「はぁ……。ウズルイフ」
「わかっておりますってクロヌ様~。これは、大事に俺様が保管しておきますよぉ~」

 ウズルイフとクロヌは、会議を行う時によく使われる青空の間で、一つの水晶を片手に話していた。

 ウズルイフの手には、拳くらいの大きな水晶。
 色は赤と青。中で勾玉のように二つに分けられていた。

「まさか、相手の魔力を吸い取る事が出来るなんて。さすがに知らなかったんですけどぉ~?」
「使う機会がなかったからな。魔力を吸い取るより、ワシが自ら手をかけた方が早い」
「クロヌ様が動く時に限り、ですよねぇ~」
「あぁ」

 クロヌはそれだけ答えると、振り向き歩き出す。

「気を付けるんだぞ。完全に魔力を抜き取ったわけではない。あやつが自身の中に残っている魔力を増幅させれば、水晶は壊れ、持ち主の元へと戻る。それまでに始末をしておけ」
「了解了解」

 手を振り見送り、ウズルイフはまた手元にある水晶を見た。

「一番自慢していた魔力を抜き取られ、知里はどれだけショックを受けるのか。アマリアも道連れに出来たのは好都合」

 にやぁと、白いギザ歯を見せ、厭らしく笑う。

「さぁ、また動き出すぞ。俺様を楽しませやがれ」
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