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元殺し屋

ここからまたしても大きく何かが動き出したような気がする

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 アンキが気まずそうに言うと、ソフィアは沈黙。
 何も言わず、表情一つ変えない。

 数秒、気まずい空気が流れ、最初は我慢していたアンキだったが、徐々に恥ずかしくなり顔が赤くなる。

 それでも、ソフィアは何も言わない。
 我慢の限界というように、アンキが子供のように地団太を踏み始めた。

「なんで何も言わないんすか!? 恥ずかしいから何か言ってくださいっす!!」
「いや……。さすがに予想外だったからな。唖然としてしまった」

 なにも言わなかったのは、言えなかったからだというのが今の言葉でアンキは理解。
 そうだとしてもと、また抗議しようと口を開く。

 だが、それより先にソフィアが口を開いてしまった。

「安心しろ。利用される気はさらさらない」
「でも、ソフィアさんは天然だから、いいように言いくるめられるかもしれないじゃないすか…………」
「天然? 誰がだ」
「…………何でもないっす」

 ソフィアは、自分が天然だということを理解していない。
 問いかけるが、アンキは答えず肩を落とし項垂れた。

「よくわからないが、まぁいい。俺は、バラバラ野郎の言うことを素直に聞くほど愚かではない」

 バラバラ野郎というのが誰なのかすぐに理解できなかったが、アマリアの瞳が左右で違うのを思い出す。

「バラバラ野郎は面白すぎっす。髪の色じゃないんすね」
「目の方が印象が強かった」
「ソフィアさんらしいっすね。表情一つ変わらないのに」

 ケラケラと笑うアンキがわからず、ソフィアは首を傾げる。
 ひとしきり笑うと、アンキは満足したように腰に手を持っていき、地面を見た。

「あー、まぁ。いいっす。おれっちの気にしすぎだったっす」
「よくわからん奴だ」

 最後の言葉に、またアンキは笑う。
 時間を無駄にしたと、ソフィアはアンキの隣を通り、歩みを進める。

 アンキは、その場で振り返り、ソフィアの背中を見続けた。
 足は前に出ず、進まない。

 目を細め、じぃっと見続ける。

「…………ソフィアさんは、俺っちが見つけたんすよ、誰にも、渡さないっすっから」

 誰にも聞こえないほど小さな声で、呟く。
 ソフィアは、そんなアンキの心情など全く気付いておらず、何事もなかったかのように振り返り、「行かないのか?」と、問いかけた。

「今行くっすよぉ~」

 笑顔を浮かべ、駆け寄り隣を歩く。
 そのまま、足音一つさせず二人は歩みを進めた。

 先ほどとはまた違う沈黙、気まずさはなく、今まで通りの二人に戻る。

 だが、すぐに二人の歩みが止まってしまった。
 理由は一つ、人ではない何かの気配を感じたから。

 その場で止まった以外に、二人の行動に変化はない。
 空気は一定、気配も変えない。

 そこは、今まで培ってきた経験が二人の行動を決めていた。

 気配殺気を感じ取った二人は、相手に悟られないように目を合わせ、次の動きを確認。

 そんなことをしていると、闇が濃くなり始める。
 すぐに顔を上げ警戒を強めると、闇が霧のように一つに集まり始めた。

 徐々に大きくなり、そこから一人の青年が姿を現した。

 銀髪を揺らし、藍色の瞳を向ける。
 手は獣のように大きく、爪は鋭くなっていた。

 黒いローブを翻しながら、地面に足を付ける。

「いきなりすいませ~ん。ソフィア=ウーゴ。あなた、管理者になりませんかぁ~?」

 ※

 深夜、アルカやリヒト達が寝静まった時だった。

「……………………」
「目、覚ましたんだ」
「あぁ」

 アマリアも気づいたらしいな。
 外からの、異様な気配を。

「誰だ」
「誰かは定かではないけど、実力は高いだろうね。知里以上かも」

 だよなぁ。
 どこだ、どこで戦闘をしている。

「まさか、管理者というわけじゃないよな?」
「…………管理者だと、一番可能性があるのはアクアかな。気持ちが昂ると殺気を隠し切れないし」

 アクアかぁ。
 もし、アクアが動いているんだったらやばすぎる。関わりたくないし、危険だ。

 だが、俺の所に来ないという事は、他が目的という事だよな。

「タイミング的に、一人だけ思い当たるね」
「え、誰だ?」
「わからないかな。なら、ヒントをあげる」

 ヒントじゃなくて、答えをくれよ。

「管理者は今、知里のせいで三人失っている。人数が足りない状態、実力の高い人材を探していてもおかしくはないよね?」
「…………え」

 それって、仲間に出来る人材を今、勧誘しているって事?

「少しはわかったらしいね。でも、アクアと決まったわけじゃないし、確認しないと確定は出来ないよ」

 あぁ、左右非対称の目が俺を見て来る。
「行かないと駄目だよね?」と、訴えて来る。

 くっそ…………俺の睡眠時間……。

 悲しみながら扉を潜ろうとすると、後ろで動く気配。
 振り向くと、クラウドが目を擦りながら俺達の方を見て立っていた。

「俺様も行く」
「………………………………はい」
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