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愉快犯と暴走

はずれを引かないよう必死に言葉を選ぶのも大変だ

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 またしても沈黙タイム。
 だから、無言って困るからやめてってば。

 何すればいいの、今以上の言葉を投げかけろって?
 そんなの無理に決まってんだろうが。
 おい、どうすればいいんだよ。

「…………お?」

 …………あ、あれ、肩を震わせている?
 また、泣いているのか?

「…………ぐすっ。私は、悪く無いの?」
「あー、そうだなぁ……。悪い悪く無いで言ったら、人を殺す事は世間一般的には悪い事だから、悪い事をしたことにはなるな」

 おっ、また落ちこんじまった。
 話は最後まで聞きやがれってんだ。

「だが、子供の責任は普通、親が取らんといけない。子供にそのような事をさせた周りの大人も悪い。だから、お前も悪いけど、一番悪いのは、お前に人殺しをさせるまで追い込めた周りの大人達。と、俺は思っている。知らんけどな!!」

 まったく……はぁ。
 こいつの過去とか人間時代とか知らんけど、なんとなくこんな感じなことを言っていればはずれはないだろう。

 子供が大人に影響されることは本当だし。

「私も悪いけど、周りの人も悪かったって、事?」
「そういう事じゃねぇかなって思ってる。マジで知らんけど!! 何度も言ってるけど! 知らんのよ俺!! お前の人間時代とか見てねぇから!!」

 ……つーか、これ。
 お腹にこやつが乗ったまま話しているんだけどさ。
 言葉一つ間違えると殺されそうだから、マジで早くどけてほしい。

 今、ものすごく俺、頭使ってるよ?
 間違えないように、はずれを引かないように頑張っているよ。

 だから、満足したのなら、早くお腹からどいてくれないかな。
 早く俺をこのストレスから解放してくれ。

「…………みんな、私が悪いって。私が、変だって」
「変は変だが、人間なんてみんなどこかしらは変だろ。そこは特に気にする必要はないだろ」
「そう、なのかな」
「俺はな。他の奴がどう思うかは知らんが、俺はそう思ってる。だから、人間はめんどくさい」

 俺も他の奴とは違う部分があると自分でわかっているし、普通だとも思っていない。

 ほんと、人間という生き物はめんどくさいよなぁ。

 というか、こんな話をしている間にも、俺の魔力は限界近くなっているんだが?
 普通に眠くなってきたんだが?

 これはまずい、強制睡眠に入りそう。
 そんな事を思っていると、フィルムがやっと顔を上げ目を合わせてきた。

「おっ」

 目に、光が宿った?

「――――私、もう、人殺すの、辞める」

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 知里がワープしてから、もう少しで十分は経過する。
 大丈夫だろうか、魔力は足りているのか。

 ダンジョンの方は、フィルムが異空間に飛ばされたことでおとなしくはなった。

 残ったゴブリンは暴れていたけど、そんなもん雑魚。
 グレールとロゼが簡単に倒し、今は静か。

 静かだからこそ、不安に駆られる。

「アマリア様」
「ん? どうしたの、アルカ」

 ぼろぼろの身体を引きずり、アルカが隣まで来た。
 ものすごく不安そう、リヒトも後ろで同じ顔を浮かべ地面にしゃがんでいる。

 ――――あっ、リヒトがしゃがんでいる所は、知里が消えた所だ。
 ずっと動かない、不安でたまらないのかもしれない。

「アマリア様、カガミヤは大丈夫です」
「――――ん? ”です”?」
「はい、です!」

 ────あ、笑った。
 疑っているような顔ではなく、本当に大丈夫だと思っているような笑顔。

「なんで、そんなこと言えっ――?」

 リヒトが、立ちあがった……?

「…………うん、大丈夫だったみたい」
「やっぱりな!!」

 え、なに。
 あの二人が何か怖いこと言っているんだけど、本当にどうしたの?

 助けを求めるようにグレールとロゼを見るけど、二人は笑みを浮かべるだけで何も言わない。

 え、なになに。
 この中でわかってないのって、まさか僕だけ?
 嘘でしょ? なんか、負けた気分で嫌なんだけど。

「…………むぅ」
「アマリア様、ふてくされたのかです?」
「そんな子供のようなことするわけないでしょ、馬鹿なの」
「…………アマリア様、カガミヤに少し似てきたですか?」
「脳を沸騰させてあげようか?」
「わるかった!!!」

 アルカが僕から逃げた。
 まったく、なにを言っているのさ。似てきているのはそっちでしょ。

 僕は僕を貫くよ、似てきているなんてありえない。

 ――――あ。

 なるほど、この気配、戻ってきてるみたい。
 まさか、これをアルカとリヒトは先に感じ取っていたって事? すごくない?

 僕、今やっと微かに感じたレベルなんだけど……。
 グレールとロゼは、リヒトとアルカの反応で笑ったなぁ……。もう……。

 …………戻ってくる。
 二人分の気配、殺意とかはないかな。大丈夫そうだね。

「早く戻ってきてよ」
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