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愉快犯と暴走
もうこれ、完璧無理ゲーじゃん
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何もしていないのに、殺されそうになった。
これは、俺と同じ。
俺も、母親に殺されかけた。
だから、フィルムの気持ちはなんとなくわかる。
わかるが、理解はできない。それに、したくない。
まぁ、今考えたところで意味はないな。
今は、早くあいつをどうにかしないと。
魔導書には、リヒトとグレールの魔力を込めさせてもらった。
これで、精霊に俺の魔力を使う事が出来る。
魔法は魔導書の中に蓄えている魔力を付けば問題はない。
今回使う精霊は、リンク。
話し合いの時、リンクはものすごく目を輝かせ『やっぱり私がいないと駄目ね! 任せなさい!!』と大威張り。
だが、最近あまり出番がないスピリトは落ちこみ、泣き始めてしまったんだよなぁ。
軽く慰め、今は姿を消してくれている。
リンクは”私は頼られている”と、まだ目を輝かせて俺の隣に浮いていた。
「知里、大丈夫なの? フィルム、多分フェアズの時と同じように暴走するよ」
「みたいだな。暴走というより、覚醒? 魔力が徐々に膨らんでいるのを肌で感じる。またモンスターとかが現れたらたまったもんじゃねぇ。早く空間を捻じり別次元に送りたい」
「――――え、そんなこと出来るの?」
「リンクに多くの魔力を送り込むことが出来れば、数分のみ、別次元の空間を作り出しことが出来るかもしれないんだよ。試したことが無いから、ぶっつけ本番にはなるが、今はもうやる道しか残されていない」
口ではそう言うが、出来る気しかしないから不安はない。
だって、めっちゃ目を輝かせているし、やる気マックスだし。
今まで新しい事を試そうとすると不安がっていたはずなのに、今回はそんな顔を浮かべることなく頷いてくれていたんだよ。
なんで今回は、そんな顔を浮かべているのかわからないけど、やってくれるのならそれでいい。
上を見ると、球体状に包み込まれているフィルム。
今もまだ大きくなっていく、魔力が増量しているから、ちょっと怖い。
どれだけ覚醒するのか。
お願いだから、フェアズ以上になるのだけは勘弁してくれ。
そんな事を思っていると、植物の隙間から光が放たれた。
「出て来るか?」
「らしいね。魔法の準備、しておいた方がいいかもだけど……」
隣から視線を感じる。
あぁ、おそらく、アマリアは魔法を使ってもいいのか悩んでいるんだろう。
アマリアは俺の魔力を使って姿を維持、魔法を発動しているからね。
リンクを使うのなら大量に魔力を使う。
でも、何が来てもいいように魔法発動の準備はしたい。
そんな視線だな。
「…………何があっても俺が魔法を発動し、被害を最小限に抑えるから安心して」
「わかった」
話していると、植物から強い光を放ち視界を覆われてしまった。
流石に眩しい、くそ。
目を逸らしたくないというのに!!
目元を手で隠し光が落ち着くのを待っていると、植物がボトボトと地面に落ち、隠されていたフィルムが姿を現した。
黒いフードから見えていた深緑色の髪は長くなり、風になびく。
肌は白く、背中には植物魔法で作り出されているのか、翼が生えていた。
「あれは、完璧フェアズの時と同じだな」
「みたいだね。管理者の人達は、感情が限界まで高まると覚醒するように体に細工されているのかな」
「元管理者であるお前が知らんものを俺が知るわけないだろうが」
フェアズの時と同じという事は、魔力も今までの倍以上になっている可能性があるな。
それに加え、フィルムの魔力は密度が高い。少しの魔力で魔法が強力となる。
早くここから時空を歪めて、あいつをリンクが作り出す空間に投げ入れないと!
『私は強い、私は怖くない。私は、もう何もしない弱虫じゃない。私は、私は――……』
口角を上げ、ぶつぶつ呟いている。
聞き取っても、何を言いたいのかわからない。
『私は、もう、やられるだけじゃない。私を殺そうとしてくる人を、殺す事が出来る。私の力は正しい。私の力は、強い!!』
右手を上に上げたかと思うと、地響きが起こり始めた。
同時に、またしても出入り口から嫌な音。いや、足音。
「最悪、本当に、最悪……」
出入り口に目を向けると――――ゴブリンの山。
いや、本当に、山。
十、二十なんて言う可愛い数ではない。
五十はいそうな程多い。
「最悪!!!」
「叫んでもゴブリンは引いてくれないよ」
「わかってるつーの!!」
ゴブリンにドデカイflameをボーリングのようにぶん投げ、ストライクを狙ってやる!!
そう思ったけど、背後からも嫌な予感。
振り向くと、どこから現れたのか。
大きな樹木がフィルムの左右に二本、作られていた。
「はぃぃいい?!」
その枝が伸び、俺達を狙ってくる!!
目とかがあるわけじゃないただの枝なのに、殺気を感じ寒気が背中を伝う。
ゴブリンを気にしながら、俺はあんな樹木を相手にしないといけないのか?
隙をつき、リンクの魔法でフィルムを異空間へと放り込むの?
いくら魔力があっても足りねぇよ!!
背後から迫りくる脅威。
全方攻撃はやっぱりアマリアの音魔法が役立つが、魔力を無駄に使うだけだとわかるからお願いが出来ない。
どうすればいいんだっ――………
「dolphin acid」
っ、待って。
この声、この魔法って………。
後ろを向くと、二体のイルカが次々にゴブリンをなぎ倒していく姿。
まさか──……
これは、俺と同じ。
俺も、母親に殺されかけた。
だから、フィルムの気持ちはなんとなくわかる。
わかるが、理解はできない。それに、したくない。
まぁ、今考えたところで意味はないな。
今は、早くあいつをどうにかしないと。
魔導書には、リヒトとグレールの魔力を込めさせてもらった。
これで、精霊に俺の魔力を使う事が出来る。
魔法は魔導書の中に蓄えている魔力を付けば問題はない。
今回使う精霊は、リンク。
話し合いの時、リンクはものすごく目を輝かせ『やっぱり私がいないと駄目ね! 任せなさい!!』と大威張り。
だが、最近あまり出番がないスピリトは落ちこみ、泣き始めてしまったんだよなぁ。
軽く慰め、今は姿を消してくれている。
リンクは”私は頼られている”と、まだ目を輝かせて俺の隣に浮いていた。
「知里、大丈夫なの? フィルム、多分フェアズの時と同じように暴走するよ」
「みたいだな。暴走というより、覚醒? 魔力が徐々に膨らんでいるのを肌で感じる。またモンスターとかが現れたらたまったもんじゃねぇ。早く空間を捻じり別次元に送りたい」
「――――え、そんなこと出来るの?」
「リンクに多くの魔力を送り込むことが出来れば、数分のみ、別次元の空間を作り出しことが出来るかもしれないんだよ。試したことが無いから、ぶっつけ本番にはなるが、今はもうやる道しか残されていない」
口ではそう言うが、出来る気しかしないから不安はない。
だって、めっちゃ目を輝かせているし、やる気マックスだし。
今まで新しい事を試そうとすると不安がっていたはずなのに、今回はそんな顔を浮かべることなく頷いてくれていたんだよ。
なんで今回は、そんな顔を浮かべているのかわからないけど、やってくれるのならそれでいい。
上を見ると、球体状に包み込まれているフィルム。
今もまだ大きくなっていく、魔力が増量しているから、ちょっと怖い。
どれだけ覚醒するのか。
お願いだから、フェアズ以上になるのだけは勘弁してくれ。
そんな事を思っていると、植物の隙間から光が放たれた。
「出て来るか?」
「らしいね。魔法の準備、しておいた方がいいかもだけど……」
隣から視線を感じる。
あぁ、おそらく、アマリアは魔法を使ってもいいのか悩んでいるんだろう。
アマリアは俺の魔力を使って姿を維持、魔法を発動しているからね。
リンクを使うのなら大量に魔力を使う。
でも、何が来てもいいように魔法発動の準備はしたい。
そんな視線だな。
「…………何があっても俺が魔法を発動し、被害を最小限に抑えるから安心して」
「わかった」
話していると、植物から強い光を放ち視界を覆われてしまった。
流石に眩しい、くそ。
目を逸らしたくないというのに!!
目元を手で隠し光が落ち着くのを待っていると、植物がボトボトと地面に落ち、隠されていたフィルムが姿を現した。
黒いフードから見えていた深緑色の髪は長くなり、風になびく。
肌は白く、背中には植物魔法で作り出されているのか、翼が生えていた。
「あれは、完璧フェアズの時と同じだな」
「みたいだね。管理者の人達は、感情が限界まで高まると覚醒するように体に細工されているのかな」
「元管理者であるお前が知らんものを俺が知るわけないだろうが」
フェアズの時と同じという事は、魔力も今までの倍以上になっている可能性があるな。
それに加え、フィルムの魔力は密度が高い。少しの魔力で魔法が強力となる。
早くここから時空を歪めて、あいつをリンクが作り出す空間に投げ入れないと!
『私は強い、私は怖くない。私は、もう何もしない弱虫じゃない。私は、私は――……』
口角を上げ、ぶつぶつ呟いている。
聞き取っても、何を言いたいのかわからない。
『私は、もう、やられるだけじゃない。私を殺そうとしてくる人を、殺す事が出来る。私の力は正しい。私の力は、強い!!』
右手を上に上げたかと思うと、地響きが起こり始めた。
同時に、またしても出入り口から嫌な音。いや、足音。
「最悪、本当に、最悪……」
出入り口に目を向けると――――ゴブリンの山。
いや、本当に、山。
十、二十なんて言う可愛い数ではない。
五十はいそうな程多い。
「最悪!!!」
「叫んでもゴブリンは引いてくれないよ」
「わかってるつーの!!」
ゴブリンにドデカイflameをボーリングのようにぶん投げ、ストライクを狙ってやる!!
そう思ったけど、背後からも嫌な予感。
振り向くと、どこから現れたのか。
大きな樹木がフィルムの左右に二本、作られていた。
「はぃぃいい?!」
その枝が伸び、俺達を狙ってくる!!
目とかがあるわけじゃないただの枝なのに、殺気を感じ寒気が背中を伝う。
ゴブリンを気にしながら、俺はあんな樹木を相手にしないといけないのか?
隙をつき、リンクの魔法でフィルムを異空間へと放り込むの?
いくら魔力があっても足りねぇよ!!
背後から迫りくる脅威。
全方攻撃はやっぱりアマリアの音魔法が役立つが、魔力を無駄に使うだけだとわかるからお願いが出来ない。
どうすればいいんだっ――………
「dolphin acid」
っ、待って。
この声、この魔法って………。
後ろを向くと、二体のイルカが次々にゴブリンをなぎ倒していく姿。
まさか──……
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