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愉快犯と暴走

精神安定剤がいなくなると途端に使えなくなるの勘弁しろよ

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 合言葉を確認すると、何故か険しい顔を浮かべられた。

 何でだよ、結構いい合言葉だろうが。金は神だ。

「まぁ、別に使う機会はないだろうし、今は次に進むための道をさがっ――」


 ────ガクン


「──す?」

 あ、あれ、体に浮遊……感?
 下を向くと、さっきまで立っていたはずの床がなっ………い、だと?

「へ? わぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」
「カガミヤさん!?」

 リヒトから伸ばされた手を掴もうとするが、間に合わなっ──!?

「グレール!! 後ろだ!」
「えっ――――」


 ――――――――ドンッ

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 いってててて……。
 か、体を打ち付けた。というか、落ちた。

「あぁ、死んでは……いないな、俺…………」

 体を起こさずに目を開けると、周りは暗闇。
 俺達が元いた場所から注がれる光も、ここまで届いていない。

 いや、届いていないのではなく、穴がふさがった……の、かもしれんな。

 つーか、お腹辺りが重たい。
 目線だけを向けると――あ。

「おい、グレール。起きろ……。おい、起きろって……」

 お、起きない。
 え、死んでないよな、死んで、ないよな?

「おい、グレール、起きろ。………おいってば!!」
「ん、んん……」

 あ、起きた……か?
 ────お、頭を抑えながらも起き上がった。

「いてて、何が起きたのでしょうか…………」
「何が起きたのかは俺もすぐには答えられん。落ちた、以上」
「…………私は落とされた――という言葉でよろしいでしょうか」

 あ、そうだ。
 俺の場合は床が抜けて落ちたんだが、グレールは落とされていた。

 そう、突如何も空間から姿を現したかのように見えた、ウズルイフに。

「あの、一瞬私、落ちる手前に紫色の何かが視界に入ったような気がしたのですが……。あの、あれは誰だったのでしょうか

 …………あぁ、そうか。
 グレールは、ウズルイフを見た事がないんだったな。

「紫の髪にキザ歯が特徴の、お前を突き落とした奴は、人の精神を壊す事が大好きな変態、ウズルイフだ」
「――――え。う、そですよね?」
「本当だ」

 俺が落ちる前、グレールの後ろに現れたのは、人をあざ笑い楽しむウズルイフ。
 あいつがグレールを俺と共に、こんな所に突き落とした。

 自意識過剰だとは思っているし、そこまで気にしなくてもいいかもしれない。
 でも、俺とグレールがいない中で戦闘が始まると思うと、どうしても気持ちが焦る。

 しかも、相手はウズルイフ。
 ────いや、ウズルイフだけではないはずだ。

 だって、ここはウズルイフではなく、フィルムとの戦闘場所のはず。
 まさか、二人同時に相手をしなければならないのか?

 アマリアとフェアズみたいな感じ、ダブルで相手――いや、アマリアはこっち側についていたから実質相手は一人だった。

 今回は完全に二人。しかも、戦闘に慣れているグレールが不在。

 流石に、落ち着かないだろ、これ……。

「グレール。早くここがどこだが確認して、みんなと合流…………?」

 あ、あれ?
 グレールからの返事がない。

 見てみると顔を俯かせ、口を手で押さえている。

 ? 微かに震えてない? 体、大丈夫?

「わ、私が、またしてもロゼ姫とはぐれてしまった…………? またしても、私はロゼ姫を危険な目に合わせているという事でしょうか。なぜ、どうして私はここまで役に立たないのでしょう。なぜ、ここまで……。だめ、だめですよ。私は絶対にロゼ姫を守らなければならないのです。早く、早くここから抜け出さなければ、早く早く早く…………」

 精神安定剤ロゼ姫を失ったグレールって、壊れたロボットのようになるよな。
 これ、またしても暴走するんじゃないか?

 今、魔力が枯渇するほどの魔法を使わされると困るんだけど……。

「お、落ち着けグレール。ロゼ姫は強い。それに、上にはアルカとリヒトもいる。戦闘に慣れてきているし、問題ないだろ。それに――――」

 あ、あれ?

「…………」

 そう言えば、アマリアがいな、い……?

 ・
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 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

「お~お~、綺麗に落ちたなぁ。すぐに穴を閉じたし、しばらくは出てこないだろうなぁ~」

 ケラケラと黒いローブをかぶり笑っているのは、知里の精神を崩壊しようと企んでいるウズルイフ。

 アルカとリヒト、ロゼ姫を見据え歯を見せ笑う。

「……貴方は管理者……さん、ですか?」

 ロゼ姫がこの場にいる皆の心を代弁し、笑っているウズルイフに問いかけた。

「おっと。そういや、おめぇらは俺の事を知らんかったか」

 顎に手を当て、ウズルイフは三人を見定めるように足元から頭のてっぺんまで見る。
 にやっと笑ったかと思うと、口を開いた。

「俺は、ウズルイフ。お前らが最近ちょー警戒していた管理者だぞ」
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