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愉快犯と暴走
これは愛されているのかどうなのか…………
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「ま、まて!!!」
「っ!!」
俺と目が合ったスペルが、「ヤベッ」という顔を浮かべ駆けだしやがった。
部屋の中でうまく気配を消し、俺達の視界に入らないように逃げようとしやがったなこの野郎!!
くっそ、出遅れた。
早く捕まえないと、もっと被害が増えちまう!!
四人で追いかけようと廊下に出るが、走るのくっそはえぇぇえ!!
いや、マジで早い。魔法でも使ってんのか!?
あれだと普通に逃げられる!!
「くっそ!! 待ちやがれ!!」
――――ん? 曲がり角から人影っ!?
「おい!! そいつを捕まえてくれ!!」
俺の声が届いたのかわからんが、人影はスペルに手を伸ばし――――ん? 手??
いや、あれは、手ではない…………?
「ンギャッ!!!!」
あっ……、女性が出してはいけないような悲鳴が聞こえた。
同時に、廊下を走っていたスペルが床に倒れ込む。
「はぁ、はぁ…………あ、エトワールか?」
「はい!! 知里さんがご命令してくださったので、このエトワール! 全力でスペルを止めましたよ!!!」
これは、"止めた"ではなく、"殴った"が、正しそうだけど、それはいいや。
満面な笑み、元気そうでなにより。
俺は全力で走って喉と腰が痛いよ。
「止めてくれて助かったが、気絶まではさせなくて良かったぞ?」
「いえ、昔からスペルは、一度暴走すると手が付けられなくなるため、生半可な気持ちで止めに行っては逆にこっちが怪我をさせられてしまいますよ!」
うん、こいつも警戒を強めた方がよさそう。
笑顔で人を普通に殺してそう。
なんか、俺の近くにいる人って、なんでこんなにも濃いんだ?
なんで、こんなにも性格に難ありの人が集まるんだ?
俺という存在が薄れていくような気がするよ。
影、薄くなってない? 大丈夫? 徐々に背景と同化していってない?
いや、それは正直どうでもいい。
なんなら、背景と同化しても構わない。
こんなに濃い人達に囲まれ、めんどくさい依頼をこなしている。
それなのに、それなのに俺には……。
「やっと話が出来そうだね。スペルをもう一度拘束して部屋に連れて帰ろうか。さっきの縄は知里が持っているしね――知里?」
俺が持っている縄、さっきまでスペルを縛っていたこれの事か。
無意識だったな、この縄持ってきていたの、たはは……。
「知里、どうしたの?」
「この縄を売って金にしたら、今回の俺の働きに見合った対価を貰えないかなって思って」
「報酬が欲しすぎて思考がバグってしまったかな。ギルドには話を通してみるから、もう少し頑張ろう?」
ううぅぅぅぅううう、報酬ぅぅぅぅううう!!
ここまで俺は頑張ったんだぞ。
なのに、なのになんで報酬がゼロなんだよぉぉぉおおお!!!
俺に金をよこせぇぇぇぇぇぇえええ!!!!
※
通帳、通帳が俺の心を癒してくれる。
アマリアから受け取った、俺の頑張ってきた証。
あぁ、通帳、お金が俺のMPとHPを回復する。
元々減ってないけど。
「通帳を渡したことで、落ち着きを取りもどし……ましたね」
「知里にとって通帳は、赤ん坊のおしゃぶりと一緒だから」
「なるほど」
「納得すんな、馬鹿か」
なにかっこよく顎に手を当ててうんうんと頷いてやがるグレールよ。
アマリアも、適当な事言うんじゃないよ、何がおしゃぶりだ。
「スペルも無事に捕獲できたし、これでやっと話を進める事が出来るかな」
「…………これはツッコミ待ちなの? ねぇ、アマリア。君もそっち側に行かないで? 単純にツッコミを待っているんだよね?」
「さぁ」
おい、顔を逸らすな。
いや、だって、これ確実にツッコミ待ちじゃん。
スペル、体中を縄でぐるぐる巻きにされて、目元には布、口にはガムテープ状態だぞ。
まったく身動きが取れない中で目を覚ましたから、「んー!! ん-!!!」ともがき苦しんでいるぞ。
こうしたのは、俺とアマリア以外の全員。
あ、エトワールもしていなかったな。
もうね、俺、愛されているんだな。
少しでも近づこうとすれば全員に止められてさ、凄まれてさ。
いやぁぁぁあ、俺って、愛されているんだなぁ~。
「…………とりあえず、顔だけは解放させてやってくれ、話ができん」
「っ!!」
俺と目が合ったスペルが、「ヤベッ」という顔を浮かべ駆けだしやがった。
部屋の中でうまく気配を消し、俺達の視界に入らないように逃げようとしやがったなこの野郎!!
くっそ、出遅れた。
早く捕まえないと、もっと被害が増えちまう!!
四人で追いかけようと廊下に出るが、走るのくっそはえぇぇえ!!
いや、マジで早い。魔法でも使ってんのか!?
あれだと普通に逃げられる!!
「くっそ!! 待ちやがれ!!」
――――ん? 曲がり角から人影っ!?
「おい!! そいつを捕まえてくれ!!」
俺の声が届いたのかわからんが、人影はスペルに手を伸ばし――――ん? 手??
いや、あれは、手ではない…………?
「ンギャッ!!!!」
あっ……、女性が出してはいけないような悲鳴が聞こえた。
同時に、廊下を走っていたスペルが床に倒れ込む。
「はぁ、はぁ…………あ、エトワールか?」
「はい!! 知里さんがご命令してくださったので、このエトワール! 全力でスペルを止めましたよ!!!」
これは、"止めた"ではなく、"殴った"が、正しそうだけど、それはいいや。
満面な笑み、元気そうでなにより。
俺は全力で走って喉と腰が痛いよ。
「止めてくれて助かったが、気絶まではさせなくて良かったぞ?」
「いえ、昔からスペルは、一度暴走すると手が付けられなくなるため、生半可な気持ちで止めに行っては逆にこっちが怪我をさせられてしまいますよ!」
うん、こいつも警戒を強めた方がよさそう。
笑顔で人を普通に殺してそう。
なんか、俺の近くにいる人って、なんでこんなにも濃いんだ?
なんで、こんなにも性格に難ありの人が集まるんだ?
俺という存在が薄れていくような気がするよ。
影、薄くなってない? 大丈夫? 徐々に背景と同化していってない?
いや、それは正直どうでもいい。
なんなら、背景と同化しても構わない。
こんなに濃い人達に囲まれ、めんどくさい依頼をこなしている。
それなのに、それなのに俺には……。
「やっと話が出来そうだね。スペルをもう一度拘束して部屋に連れて帰ろうか。さっきの縄は知里が持っているしね――知里?」
俺が持っている縄、さっきまでスペルを縛っていたこれの事か。
無意識だったな、この縄持ってきていたの、たはは……。
「知里、どうしたの?」
「この縄を売って金にしたら、今回の俺の働きに見合った対価を貰えないかなって思って」
「報酬が欲しすぎて思考がバグってしまったかな。ギルドには話を通してみるから、もう少し頑張ろう?」
ううぅぅぅぅううう、報酬ぅぅぅぅううう!!
ここまで俺は頑張ったんだぞ。
なのに、なのになんで報酬がゼロなんだよぉぉぉおおお!!!
俺に金をよこせぇぇぇぇぇぇえええ!!!!
※
通帳、通帳が俺の心を癒してくれる。
アマリアから受け取った、俺の頑張ってきた証。
あぁ、通帳、お金が俺のMPとHPを回復する。
元々減ってないけど。
「通帳を渡したことで、落ち着きを取りもどし……ましたね」
「知里にとって通帳は、赤ん坊のおしゃぶりと一緒だから」
「なるほど」
「納得すんな、馬鹿か」
なにかっこよく顎に手を当ててうんうんと頷いてやがるグレールよ。
アマリアも、適当な事言うんじゃないよ、何がおしゃぶりだ。
「スペルも無事に捕獲できたし、これでやっと話を進める事が出来るかな」
「…………これはツッコミ待ちなの? ねぇ、アマリア。君もそっち側に行かないで? 単純にツッコミを待っているんだよね?」
「さぁ」
おい、顔を逸らすな。
いや、だって、これ確実にツッコミ待ちじゃん。
スペル、体中を縄でぐるぐる巻きにされて、目元には布、口にはガムテープ状態だぞ。
まったく身動きが取れない中で目を覚ましたから、「んー!! ん-!!!」ともがき苦しんでいるぞ。
こうしたのは、俺とアマリア以外の全員。
あ、エトワールもしていなかったな。
もうね、俺、愛されているんだな。
少しでも近づこうとすれば全員に止められてさ、凄まれてさ。
いやぁぁぁあ、俺って、愛されているんだなぁ~。
「…………とりあえず、顔だけは解放させてやってくれ、話ができん」
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