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愉快犯と暴走
この世界では何があってももう驚かない自信があるぞ
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「スペクターは、確実に死んだはずではあるんだよね」
「なら、死亡という話で終わるじゃねぇか。なんでわからないんだ?」
「死体が、見つからなかった」
……………………はぃ?
え、誰かが持ち帰ったとかか?
でも、何のために……。
「一応言うけど、誰かが持ち帰ったという線は低いよ」
「調べ済みか」
「管理者を舐めないでね」
「舐める訳ねぇだろうが、化け物集団が」
「それならよかった」
いや、良かったのかよ。
普通にディスったはずなんだけど。
「それで、僕達も管理できない範囲に残党を残しておけないから探したんだよね。でも、君が言う化け物集団でも、見つける事が出来なかった。数百年経った今でも、ね」
あの管理者を欺くことが出来る人物か。
何か自身に魔法を付与して気配を悟らせないようにしているのか、それとも本当にこの世に存在しないのか。
普通に考えると、数百年経っているんだ。生きているという考えはおかしい。
おかしいのだが…………この世界ならなんでもありなんだよなぁ。
前にアルカがダンジョンを作ったのは神だとかほざいていたけど、ここまでくるとありえないという言葉で片づけられなくなってきた。
本当に今、すぐ目の前に『自分は神だ』という奴が現れたとしても『あ、そうなんですね。俺に何も迷惑をかけずにすぐ消えてください』と言えるわ。
「もう、管理者もスペクターにばかり時間をかけられないと、今はもう探す事はしていないはず」
「そうなのか。…………スペクターか。なんか、今後出会いそうな気がする」
「奇遇だね、僕もそんな気がするよ」
この世に生き残っているカケルの仲間、俺は知らぬうちに出会っている。
一人はスペル、もう一人は知らん。
はぁぁぁあ、もう、諦めよう。
俺は、この世界ではチート魔力を持ってしまった。だから、色んな事件に巻き込まれる。
諦めろ、もうこういう運命なんだ。
「はぁぁぁぁぁぁああ」
「知里にとっては、本当に生きにくい世の中だね」
「まったくだ。今回は報酬がないしよぉ、なんだよ、俺を殺したいのか生かしたいのかどっちかにしやがれよ、この世界の神様さんよぉ」
※
黒いローブをかぶり、顔を隠している女性が一人、一つのダンジョンに向かっていた。
回りは岩壁、暗雲が立ち込め暗い。
風が冷たく、枯れ葉が転がっている。
そんな岩壁に囲まれた道を進むと、何もない所で女性が立ち止まった。
「――――誰も、いないかな」
呟くと、女性は右手を上げた。
すると、野球ボールより一回り大きなシャボン玉が現れる。
「シロ、release、封印魔法、解く」
シャボン玉の中にいるのは、白い髪に白いワンピースを身に着け、ゴムのようなもので体を拘束されている精霊。
抜け出そうと藻掻いているが、意味はない。
何もしようとしない精霊、シロを覗き込み、女性は再度「解け」と指示。
「ヒュッ」と息を飲み、シロは目を見開き体を大きく震わせた。
「早く、魔法、使う。死ぬ?」
『っ! ムームー!!!』
「嫌、早く」
シロは、怯えながら言われた通りreleaseを発動。
すると、目の前がガコンッと音を立て、人が一人通れるような穴が現れた。
そこから風が吹き荒れ、黒いローブが揺れる。
顔を隠していたフードが取れ、顔が露わになった。
「ん、もう、いい」
深緑色の髪を揺らし、黄緑色の瞳を精霊に向ける。
この女性は、管理者の一人であるフィルム。
彼女は、もう用はない。
そう言うようにシュッとシャボン玉を消した。
前を向き直し、穴を覗く。
中は暗く、先が見ない。
階段が続いているのがわかるだけの空間。
黒いローブを揺らしながら見下ろしているが、すぐに黄緑色の瞳を閉じ、足を一歩踏み出した。
カツン、カツンと音を鳴らし、下へと降りて行く。
下までたどり着くと、洞窟のような場所にたどり着く。
左右には牢屋が先にまで続いており、ここだけ明るい。
呻き声などが響く中、フィルムは表情一つ変えずに歩みを進めた。
途中、助けを求めるように細くなった人間の腕が牢屋から伸びるが、完全に無視。
目的のためにただひたすら真っすぐ歩いていると、一つの牢屋の前で足を止めた。
そこには、人ではない大きなモンスターが一体、座っている。
「まだ、生きてる、良かった」
フィルムが牢屋の柵を掴み、中でどしっと座っている大きなユウェル族を見た。
「ユウェル族、長、まだ、待機」
冷たく放たれる殺気を向けられているユウェル族の長は、下げていた顔をゆっくりと上げた。
垂れた瞼、口元には白いひげ。
鼻には包帯が巻かれていた。
「また、暴れる、同じ、気を付けて」
「…………なるほどのぉ。また、前のように暴れると、今度は鼻だけでは済まないという事か」
長の言葉に何も答えない。
フィルムは顔を逸らし、その場から居なくなろうとした。
「長、以外、ユウェル族、死ぬ」
そのような言葉を吐き捨てて――……
「なら、死亡という話で終わるじゃねぇか。なんでわからないんだ?」
「死体が、見つからなかった」
……………………はぃ?
え、誰かが持ち帰ったとかか?
でも、何のために……。
「一応言うけど、誰かが持ち帰ったという線は低いよ」
「調べ済みか」
「管理者を舐めないでね」
「舐める訳ねぇだろうが、化け物集団が」
「それならよかった」
いや、良かったのかよ。
普通にディスったはずなんだけど。
「それで、僕達も管理できない範囲に残党を残しておけないから探したんだよね。でも、君が言う化け物集団でも、見つける事が出来なかった。数百年経った今でも、ね」
あの管理者を欺くことが出来る人物か。
何か自身に魔法を付与して気配を悟らせないようにしているのか、それとも本当にこの世に存在しないのか。
普通に考えると、数百年経っているんだ。生きているという考えはおかしい。
おかしいのだが…………この世界ならなんでもありなんだよなぁ。
前にアルカがダンジョンを作ったのは神だとかほざいていたけど、ここまでくるとありえないという言葉で片づけられなくなってきた。
本当に今、すぐ目の前に『自分は神だ』という奴が現れたとしても『あ、そうなんですね。俺に何も迷惑をかけずにすぐ消えてください』と言えるわ。
「もう、管理者もスペクターにばかり時間をかけられないと、今はもう探す事はしていないはず」
「そうなのか。…………スペクターか。なんか、今後出会いそうな気がする」
「奇遇だね、僕もそんな気がするよ」
この世に生き残っているカケルの仲間、俺は知らぬうちに出会っている。
一人はスペル、もう一人は知らん。
はぁぁぁあ、もう、諦めよう。
俺は、この世界ではチート魔力を持ってしまった。だから、色んな事件に巻き込まれる。
諦めろ、もうこういう運命なんだ。
「はぁぁぁぁぁぁああ」
「知里にとっては、本当に生きにくい世の中だね」
「まったくだ。今回は報酬がないしよぉ、なんだよ、俺を殺したいのか生かしたいのかどっちかにしやがれよ、この世界の神様さんよぉ」
※
黒いローブをかぶり、顔を隠している女性が一人、一つのダンジョンに向かっていた。
回りは岩壁、暗雲が立ち込め暗い。
風が冷たく、枯れ葉が転がっている。
そんな岩壁に囲まれた道を進むと、何もない所で女性が立ち止まった。
「――――誰も、いないかな」
呟くと、女性は右手を上げた。
すると、野球ボールより一回り大きなシャボン玉が現れる。
「シロ、release、封印魔法、解く」
シャボン玉の中にいるのは、白い髪に白いワンピースを身に着け、ゴムのようなもので体を拘束されている精霊。
抜け出そうと藻掻いているが、意味はない。
何もしようとしない精霊、シロを覗き込み、女性は再度「解け」と指示。
「ヒュッ」と息を飲み、シロは目を見開き体を大きく震わせた。
「早く、魔法、使う。死ぬ?」
『っ! ムームー!!!』
「嫌、早く」
シロは、怯えながら言われた通りreleaseを発動。
すると、目の前がガコンッと音を立て、人が一人通れるような穴が現れた。
そこから風が吹き荒れ、黒いローブが揺れる。
顔を隠していたフードが取れ、顔が露わになった。
「ん、もう、いい」
深緑色の髪を揺らし、黄緑色の瞳を精霊に向ける。
この女性は、管理者の一人であるフィルム。
彼女は、もう用はない。
そう言うようにシュッとシャボン玉を消した。
前を向き直し、穴を覗く。
中は暗く、先が見ない。
階段が続いているのがわかるだけの空間。
黒いローブを揺らしながら見下ろしているが、すぐに黄緑色の瞳を閉じ、足を一歩踏み出した。
カツン、カツンと音を鳴らし、下へと降りて行く。
下までたどり着くと、洞窟のような場所にたどり着く。
左右には牢屋が先にまで続いており、ここだけ明るい。
呻き声などが響く中、フィルムは表情一つ変えずに歩みを進めた。
途中、助けを求めるように細くなった人間の腕が牢屋から伸びるが、完全に無視。
目的のためにただひたすら真っすぐ歩いていると、一つの牢屋の前で足を止めた。
そこには、人ではない大きなモンスターが一体、座っている。
「まだ、生きてる、良かった」
フィルムが牢屋の柵を掴み、中でどしっと座っている大きなユウェル族を見た。
「ユウェル族、長、まだ、待機」
冷たく放たれる殺気を向けられているユウェル族の長は、下げていた顔をゆっくりと上げた。
垂れた瞼、口元には白いひげ。
鼻には包帯が巻かれていた。
「また、暴れる、同じ、気を付けて」
「…………なるほどのぉ。また、前のように暴れると、今度は鼻だけでは済まないという事か」
長の言葉に何も答えない。
フィルムは顔を逸らし、その場から居なくなろうとした。
「長、以外、ユウェル族、死ぬ」
そのような言葉を吐き捨てて――……
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