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愉快犯と暴走

体が回復しても、すぐにまた倒れそう

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 ん~、体がふわふわする。
 体が温かい。でも、おでこは冷たい。

 なんか、体から何かが吸い取られているような感覚がある。な、なにこれ。

 ――――パチッ

「…………あ?」
「あ、目を覚ましましたか、カガミヤさん」

 ん? リヒト? と、隣に座っている女って、たしか、癒し処にいたやつだよな。
 スペルって、名前だったはず……。

 ――――あぁ? 
 なんか、吸わていると思ったら、俺の体が淡く光ってる。
 これって、癒し処で受けた癒し魔法?

 スペルは俺が起きた事に気づいていないのか、必死に魔法を発動し、俺の事を癒してくれている。

 なんで、こんなことになったんだ?

「起きたみたいだね、知里。体に痛みとかはある?」
「痛みはない、体がだるい程度だ」

 なんか、嫌な夢を見ていたような気がするけど、思い出せない。
 思い、出してはいけないような、気がする。

「────あら、目を覚ましたのね。良かった」
「……おー」
「今の癒し魔法で熱は下がったかと思います。あとは絶対安静で過ごしてください。一週間程度で全回復するかと思います」

 淡い光が落ち着く。
 この、体に残っている倦怠感はどうすることも出来なかったのだろうか。

「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ」
「…………いえ、やっぱりなんでもありません。気のせい程度なので」

 え、気のせい程度?
 な、なんだよ、気になるじゃん。

「スペル、ありがとう。君の事を思い出してよかったよ」
「うるさい、残虐外道めが。の為でなければあんたの頼み事など聞くはずがないだろう、人殺しが図に乗るな」

 …………こわっ。

 え、アマリアとスペルって、なんか因縁か何かあるの?
 スペルの殺気が全てアマリアに向けられているんだけど。

 殺気を向けられている本人は慣れているからか、平然としている。
 ま、まぁ、慣れているわなぁ、アマリアだし。

「あの、お二人の関係性がどのようなものかは今は聞きません。ですが、病人の前でそのような言い争いは控えていただいてもよろしいでしょうか。カガミヤさんのお体に害をなす」

 え、リヒト?
 君もなんでそんなに怒ってんの? 誰に対して怒ってんの?

 …………これは、気力がわかなくても曖昧になっている記憶を掘り起こさないとまずい?

「カガミヤ、カガミヤ」
「あ? あ、アルカか」
「うん。体、まだ怠いよな、寝ていてもいいぞ」

 おぉ、アルカがまさかこんなにいい言葉をかけてくれるなんて思わなかった。ありがてぇな。

 だが、悪い。
 三人の険悪な空気が流れてきているから、寝るに寝れないんだ。

「寝る前に一つ聞きたい」
「お、なんだ?」
「あの三人、何があったんだ? あ、あとごめん、もう一つ――」
「まずは一つずつ話すぞ。今のカガミヤは熱でやられているから頭が上手く働かないだろう」

 わかってんじゃねぇか。
 なんでそこまで今の俺を理解してんだ? 読心術? んなわけねぇか。

「あのスペルって人、本人が言うには、カケル=ルーナの、元冒険者メンバーらしいんだ」

 ……………………頭が働かない時に聞く話ではなかったらしい。

 あいつは一週間で俺が全回復すると言っていたから、一週間後にでも話を聞こう。

 何も言わずに寝ようと布団を頭まで被ると、アルカが慌てた様子を見せた。
 あ、俺が辛そうにしているから何も聞かないのか。

「アルカ、俺は寝る。今の俺では話をまったく理解できない。一週間後にまた話そう」
「あ、あぁ。わかった。ゆっくり休んでくれ」
「あぁ、悪いな」

 険悪な空気が流れ込んで来て不愉快。でも、体は正直。
 目を閉じ少しすると、意識が薄くなり始めた。

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 さて、三日ぐらいは経った頃、俺の身体は全回復とは言わずとも、鼻づまりと倦怠感だけになった。

 熱を測ってみたら、平熱より少し高い程度。
 このくらいなら動くことは出来るし、調べ物くらいなら出来る。

 いやぁぁああ、まさか。熱を出すなんて思わなかったなぁ。

 自分で熱を測る余裕もなかったからどんくらいだったかは知らんが、リヒトが言うには「死んでいてもおかしくない」くらいにはなっていたらしい。

 いや、俺、三途の川に一歩、足を踏み込んでたの?

「…………ズビッ」
「あ、鼻が詰まって息苦しいとかありません? ティッシュいります?」
「あぁ、ちょうらい」

 素直にリヒトからティッシュを受け取り、鼻をかむ。
 あぁ、鼻詰まりが残っているから気分はすっきりしない。

「ところで、アマリアは? あまり離れすぎても困るんだが……」

 回りにはアルカとリヒト、ロゼ姫とグレールがいる。あとは、ロゼ姫の腕にはリトス。
 いつもそばにいるはずのアマリアがいないのは変な感じ。

「アマリア様は先程、スペル様と共に外へ行かれましたよ」
「え、外に? なぜ?」
「スペル様が連れて行ったように見えましたが……」

 え、グレールが気まずそうに顔を逸らしているんだけど。

 いや、ちょっと待って、記憶が曖昧でよく覚えていないけど、なんとなく嫌な予感がする。
 たしか、二人は仲が悪かったよな?

「……………………行くか」
「え? ちょっ、動かないでください! 今はまだ完全に回復していないのですから!」

 ベッドから立ち上がろうとすると、リヒトが全力で止めてきたから、また逆戻りしてしまった。

 でも、二人は気になる。
 ほっといてもいいのか?

 いや、駄目だろう。駄目だろうな!!
 どうすればいい……。

 ――――ダッ ダッ ダッ

 ん? 廊下から慌ただしい足音が聞こえてきた。
 走っている? 複数人だな。

 ――――バンッ!!

「ロゼ姫様、大至急ご連絡しなければならないことが!!」

 現れたのは警備の服を着た男性複数人、全員顔が青い。

「何があったの」
「修練場で男性と女性、お二人がシールドを使わず戦闘を行っております!!」

 ――――――――はぃぃぃいいい????
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