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ユウェル族

トラップって、本当に人の裏をかくから嫌になる

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 男に二言はない。

 この言葉でごり押しされ、何とかごまかそうとしたが無駄。冷たい視線を向けられ何も言えず、諦めるしかなかった。

 なんで、なんで俺がこんな目に合わないといけないの。嫌だ、めんどくさい。

 このダンジョンを攻略した後、俺はこいつを仲間の元に行かなければならなくなってしまった。

「はぁぁぁあ」
「仕方がないよ、知里。リトスを仲間の元に届けるという事は、鉱物を手に入れる事が出来るかもしれない。金になる物を少しでもゲットできると考えよう」
「確かにそうだな。だがな? それをクリアするより、絶対にダンジョン攻略をしていった方が何十倍の報酬をゲットできると俺は考える」
「考えれば考えるだけ虚しくならない?」
「やめて…………、本当に虚しくなるから」

 もう、俺の道は決まってしまった。
 ここで何を考えたところで、変な事に巻き込まれたことには変わりない。

「はぁぁぁああ」

 …………前を歩いている二人は楽しんでいるなぁ。
 女子トークに花を咲かせている。俺の心情を少しは察してくれよ…………。

 もう、ため息だけで体内にある空気が全てなくなってしまいそう。

 ────ん? グレールが立ち止まった?

「ロゼ姫様、リヒト様、少々お待ちください」
「あ、はい」
「どうしたの、グレール」

 ? アマリアもわかっていないらしい、俺にもわからない。
 グレールは何に気づいたんだ?

 黙って見ていると、グレールが壁の方に近付いて行った。
 手を上げたかと思うと、扉を叩くようにコンコンと、壁を叩き始める。

「ここじゃない」

 "ここじゃない"? 何かを探しているのか? 
 また違う所を叩く。また同じ音。

 再度、また違う所を叩く。どうせ同じっ――――

 カンッ、カンッ

「っ、音が……」
「ここですね。チサト様、この壁を壊していただけませんか?」
「え、あ、そこは俺なのね」

 パワー系の魔法を持っているのは俺くらいだしな、いいか。

 さてさて、やりますか。

 ゆっくりと手に炎の球体を作り、グレールが指した箇所に狙いを定める。

flameフレイム

 バスケットボールくらいの大きさのflameフレイムを、投げるように壁へと放った。


 ――――ドカンッ


 爆風と共に黒煙が漂う。
 煙が晴れるのを待っていると、微かに冷たい風を流れ出ていた。

 完全に煙が晴れると、壁がガラガラと崩れて、先に続く壁が現れ……た、だと?

 まさか、これを歩いている時にグレールが気づいたのか?

「微かに風の音が聞こえましたので、何かあるかとは思いましたが、道でしたか」
「き、聞こえたかぁ??」
「違和感程度だったため、気づかないのも無理はありません」

 違和感すら感じなかったんだけど……。

「それで、この道が正解ルートかとは思うのですが、いかがいたしますか? この先に中ボスかラスボスがいるのだと思います」
「聞いてくる意味が分からないな。この道が正解ルートなのだとしたら、行くという道しか俺達には残されていない。どんなモンスターが待っていてもな」

 率先して、現れた道に足を踏み出した。

 この奥には何があるのか、何が待っているのか。
 何が待っていても関係ない、俺達なら問題はなっ――……。


 ――――――――カチッ


「ん? カチッ?」

 下から、聞き覚えのある嫌な音……。

 ゆっくりと視線を落とすと、俺が踏んでいる部分の地面がへこんでいる。
 まるで、スイッチを押した時みたいな……。


 ――――――――ダッ ダッ ダッ


「あ、あれぇぇえ?? なんかぁぁぁあ、嫌な足音がぁぁぁああ????」

 奥から何かが迫ってきているのかと思っていたけど、何も見えない。
 でも、足音がどんどん近づいては来ている。

「あ、あれ!!」

 リヒトが俺達の来た方向を指さしている。
 見てみると、小さな何かが走ってきているような影が……。

「見覚えのある光景だなぁ」
「ゴブリン大量出現……。カガミヤと初めて出会った時の事を思い出すな」
「アルカも覚えていたのか」

 俺が初めてこの世界に来た時と全く同じ光景だ。
 ゴブリンが俺達の方へ向かって来ている。

 あれくらいならflameフレイムを一発食らわせれば、二十以上のゴブリンがいたとしても問題はないはず。

「待ってください、チサト様は魔力の温存を。ここは私がやります」
「え、グレール?」

 でも、グレールって広範囲魔法持っているのか?

 右手に魔力を込め、グレールは地面に手を付けた。

icicleアイシクル!」

 魔法を放つと、ゴブリンの目の前に道を塞ぐように氷の柱が大きな音と共に出現した。

 三本の氷の柱。
 体が子供の用に小さいゴブリンだったとしても、柱の隙間を通り抜けることは出来ないだろう。

 思っていた通り、氷の柱を掴み通り抜けようとするが、頭、お腹など。
 色々なところが突っかかりこちらに来れない。

 倒すのではなく、道を塞いだのか。
 このようなダンジョンだからこそ出来る技だな。

「では、行きましょうか」
「おう」

 体力は減っているが、魔力を温存できているのはでかい。
 このまま、あまり無茶をせずラスボスであろうワイバーンの元に行こう。
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