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ナチュール山

いきなり聞き覚えもない山の名前を出されても困るってーの

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 受付嬢は、今挑戦できるSランクのダンジョンの情報が書かれている資料を渡してくれた。

 ゆっくり確認したいと思って、受け取ってすぐいつもの部屋に戻りベッドで資料を見ていると、アマリアとアルカが横から覗き込んできた。

「…………見にくい!!」
「情報共有は大事だと思うよ」
「アマリア様の言う通り! リーダーである俺がダンジョンの情報を知らなかったら駄目だからな!」

 今のアルカの言葉、確実にさっきのリーダーの話、根に持ってんじゃねぇか。

 苦笑いを浮かべながらまた資料に目を落とすと、見覚えのあるモンスターの名前を見つけた。

「あれ、モンスターの名前が書かれてる。”ワイバーン”が現れるって事か?」
「え、あ、本当だ。モンスターの情報が書かれているなんて珍しいな」

 アルカも首をひねっている。

 今までの資料も隅の隅まで見ていたが、モンスターの名前は書かれていなかった。
 アルカがモンスターの名前と特徴を教えてくれていたから楽だったなぁ。

 なんで、今回だけ書かれているんだ? 
 気にしなくてもよさそうなこんな小さなことでも、なんかあるんじゃないかと疑ってしまう。

「難しく考えすぎだよ。単純に、一度倒したモンスターはギルドにオートセーブされているだけ」
「オートセーブ機能があるのか、便利だな。誰が作ったんだ?」
「お褒めにあずかり光栄とでも言っておこうか」

 …………アマリアだったか、ちくしょう。
 本人目の前にして素直にほめちまったよ。なんか、悔しい。

 睨みながらもまた資料に目を落とし、確認。
 同時に渡された地図も確認。

 近くに翼のマークがあるから、そこにワープすればすぐダンジョンに入る事が可能だな。

「色々考えても仕方がないだろうし、今日もこの後修行――――は、辞めて体を休めようか」

 修行するかと問いかけようとしたら、リヒトの顔が真っ青になってしまった。

 相当怖いんだろうな、アマリアの修行。
 俺達は罰ゲームの部分しか見てないから、何も言えない。

 罰ゲームは怖くないと意味ないしな。
 そこは諦めるんだ、リヒトよ。

「この後、なにかしたいことはないの?」
「特にないなぁ…………。アルカは何かあるか?」
「特別何かしたいとかは無いな。もし、この後何も無ければ筋トレしてこようかなとは思ってる」

 俺は"休め"と言っているんだがな……。いいけど。

「オーバーワークしなければいいんじゃないかな。それじゃ、今からはそれぞれやりたい事をするってことで」

 アマリアが最後にまとめて解散。
 俺は部屋で一日通帳を眺めようと思います。

 ロゼ姫、アルカ、リヒト、グレールは部屋を出て行き、残ったのは俺とアマリアだけ。

 そういえば、アマリアは俺から一定の距離を離れる事が出来ないんだよな。
 どこか行きたい所はあるんか?

「アマリアはどこか行きたいとかないのか?」
「あったとしても、知里が動かないといけないよ? それでもいいなら伝えるけど」
「めんどくさい」
「聞いても意味ないよね、それ」
「一応聞いただけ。んで、そう言うって事はあるのか?」
「うーん、まぁ。少し気になる事があるからね。こういう時、一人で行動できないのは辛いなぁ」

 そんなこと言われてもなぁ。
 えぇ、これってついて行かないといけないの? めんどくさいんだけど……。

 せっかく通帳眺める時間が出来たと思ったのに……。

「別に、無理しなくてもいいよ。気になるってだけで、どうしても行きたいわけじゃないから。それに、今から行っても何かわかるはずもないし」
「…………ちなみに、どこに行きたいの?」
「フィルムのお気に入りダンジョンがある山、ナチュール山」
「ナチュール山?」

 なんだその山、聞いたことないぞ。
 ここからどのくらいの距離にあるんだろう。

「ここから結構な距離あるよ。ワープしてもすぐにはたどり着けない」
「それはめんどいから却下だな」
「だと思っていたよ。だから、無理しなくてもいいって言ったじゃん」
「ソダネー」

 明日からダンジョン攻略に行くというのに、今日無駄に体力使いたくないって―の。

 悪いが、今日は休ませてもらうからな、ふんっ!
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