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ナチュール山

一つ一つの魔法を大事に使いこなそう

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「…………うっわ、せっこ」
「これも魔法です」
「確かに魔法だが…………」

 グレールは、自身の腹部を氷で覆い防ぎやがった。

 驚いていると、ロゼ姫のイルカがアルカに向かって突進。
 死角だったため、もろに食らっちまって、今、地面に伸びてしまった。

 アルカの近くでしゃがみ確認するが、あーあ……。
 目を回してんなぁ、うまく顎に入ったらしい。

「では、次」
「…………え、待って? 何で二人は俺を見下ろして剣や杖を構えているんだ。模擬戦はアルカが倒れた事により俺達の負けだろ? なぁ」
「いえ、チーム戦だった場合、大将を倒す。または、二人とも倒す。それ以外に終わる方法はありませんよ」
「大将はアルカだぞ」
「強さと魔力量により貴方が大将です」
「今決めただろ、それ」
「このまま貴方の修行に移行します」
「グレールよ、俺の扱い酷くね?」
「普通です」

 絶対に普通じゃない。
 俺以外には普通に紳士的だし、優しい。
 俺にだけこれだ、酷いなぁ。

「では、参ります」
「え、ま、待って!?」

 俺の近くまで来たグレールが突如、俺に剣を振り下ろしてきやがった!
 咄嗟にアルカから剣を奪い取り、水平にし受け止める。

 ガキンッ!!

「反射神経、凄いですね。ですが、こちらは二人ですよ、大丈夫ですか?」

 グレールの言う通り、視界の端にイルカが映っている。
 早く動かないと超音波で鼓膜破られるか、アルカのように突進される!

 くっそ!! なんで俺は咄嗟にアルカの剣を握ってしまったんだ! 剣なんて扱ったことないから全く分からない!!

 しかも!! 俺は今姿勢が低いから、上から叩きつけられている状態。

 くっそぉぉおお、腕がプルプルして来たぁぁああ!!


「ぐぬぬぬぬ」
「これで終わりですよ」

 まずい、イルカが口を開きやがった。
 超音波が来る!!!

「~~~~~~fistflameフィスト・フレイム!!!」

 一番に頭の中に浮上した魔法を考えることなく発動。
 炎が俺の拳を包み込み、持っている剣にも広がった。

 炎の剣となったが、それだけでは終わらない。
 炎でグレールの剣を溶かし、武器を奪う事が出来た。

 fist flameフィスト・フレイムって、拳だけではなく、持っている武器に炎を纏わせることが出来るのか?

 っ、グレールが離れてもイルカは超音波を繰り出してきやがった!

 炎の剣を横一線に振り払うと、何も意識していないのにリーチが伸び、距離のあるイルカを真っ二つに切っちまった。

 酸に戻り地面に落ちる。
 煙を出し、地面はじゅわって音を立て溶けた。

「まさかっ――――」

 グレールが動揺している。その隙に!!

siegeflameシージュ・フレイム!」

 炎の鳥籠でロゼ姫を封じて、次に死角からグレールに近付き剣を首元に突きつけた。

「っ!」
「チェックメイト、俺の勝ち」
「…………はぁ、負けました」
「やったぜ!!」

 流石に危なかったなぁ、最後の力を振り絞ってよかったわ。

「まさか、武器を溶かされるとは思っていませんでした。それに、アルカ様のgroundspadaグランド・スパーダみたいに、リーチを伸ばして来るとも考えはしなかったため、動揺してしまいました」
「いや、あれは俺も驚き。まさか、fistflameフィスト・フレイムにあそこまでの威力があったなんて思わなかった。使い方によっては結構いいぞ」

 新しい魔法を試すのもいいが、一つの魔法を使いこなすのも大事だな。

 今だけで様々な魔法を使うことは出来ているし、次はもっと使いこなすことを目標に修行するのもいいかもしれない。

「んがっ」
「あ、アルカが起きた」

 伸びていたアルカが目を覚ました。
 眠たそうに欠伸をしながら体を起こし、周りを見ている。

 あれは確実に覚えてないな、なんで自分がこんな所で眠っていたのか。

 ジィっと見ていると、やっと意識がしっかりして来たみたい。
 目をハッと開き、勢い良き立ち上がると何故か俺の元に駆け寄ってきた。

「ど、どうだったんだ!?」
「お前が伸びた後、俺が覚醒してグレール、ロゼ姫に勝った。以上」
「か、覚醒?」
「詳しく話すのめんどくさい。あ、これは返すよ。借りてた」
「あ、あぁ」

 俺が剣を返すと、まだ困惑しているアルカは俺を見て来る。
 視線を無視するため顔を逸らすと、アマリアと目が合った。

 その視線のまま上を向くと……うん、景色は同じみたいだな。

「まだ、リヒトは吊るされているんだな」
「なにも文句を言わないからいいんじゃないかな」
「良くないです!! もうそろそろ本当におろしてください!!」

 いい加減リヒトが限界近いらしく、叫んでいる。

「アマリア、さすがに…………」
「そうだね、下ろしてくる」

 あの二人も修行は終わり。
 今日はこの後ゆっくり休もう。

 はぁ、疲れたぁ。
 グレールとロゼ姫は本当に強かった。
 アルカも身体能力高いし、これならいい線まで行けるだろう。

 もう少し一つ一つの魔法を理解して、使いこなせるようになったら、またダンジョン攻略をしていこうか。

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