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プルウィア

もっと俺を信じてくれよなぁ

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「――――――なんか、嫌な予感がする」
「現在、嫌な局面に出くわしているので予感ではないような気がしますよ」
「いや、まぁ、確かに…………」

 グレールからの冷静なツッコミ。
 俺の心も落ち着いたよ。

 今はアルカとリヒトを取り戻すため、模擬戦で減った魔力の回復待ちと、お互いの情報交換を部屋の中で行っていた。

 俺が、アルカ達が連れ去られたのと同時に感情のまま突っ走ろうとすると、グレールが氷魔法で俺の身体を凍らせ制止して来たんだよな。

 体は冷たくなり、同時に頭に上った血も下がり冷静になった俺は、自身の炎魔法で溶かし現状を確認。
 すぐに行く事はせず、作戦を立ててから奪い返しに行こうという事で話がまとまった。

「明日まで猶予があるのが少し引っかかりますが、そこは特に気にしなくてもいいのでしょうか」
「気にしなくてもいいだろう。アマリアが絡んでいるみたいだし、うまくフェアズを抑え込んでの明日までの猶予なんだろうから」
「アマリア様が絡んでいると、何かあるのですか?」

 そうか、グレール達はアマリアのマイペースを知らないのか。
 いや、あれが演技だった場合――それはないな。あれは素だろう。素じゃなかったら、とんだ役者だ。

「アマリアは管理者ではあるんだが、おそらくフェアズよりは甘い。人を無駄に殺さないし、見捨てない。ギルドの管理だけでいい所を、しっかりと冒険者の事も考えているみたいだし。そんで、何故か俺、気に入られている」
「気に入られているのですか? でしたら、話し合いなどで解決は出来ないのですか? 正直、管理者と全面対決は避けたいところなので、話し合いで済むのでしたら……」
「わりぃ、それは無理だわ」
「……理由は?」
「アマリアは俺の事を気に入ってはいるが、フェアズへの恋心には叶わない。フェアズが俺の事を殺そうとしているのなら、アマリアはフェアズの肩を持つ。持つとは、思うんだが……」

 ちょっと、アマリアの立場が難しいよな。
 俺の事を完全に見捨てる事が出来るほど、あいつが冷たい奴だったら、俺の目の前でアルカとリヒトは消されているはず。
 俺が困惑し、動くことが出来ない時なら、管理者二人そろっていたんだ、簡単に殺せた。

 人質に使うと決めたのはアマリアが決めた事なのか。フェアズの魔法がプルウィアと相性が良く、戦闘が優位になる為おびき出そうとしているのか。

「持つとは思うのだが……なんですか?」
「いや、アマリアは今、葛藤中なんだろうなぁと思って、笑ってる」
「無表情のように見えるのですが…………」
「心は大笑いだ。そんな事より、相手がプルウィアを指定して来たという事は、フェアズにとって戦闘しやすい場所の可能性がある。フェアズは拘束魔法を得意とするらしいから、氷魔法で拘束魔法を凍らせ、消すとかではなく動きを封じた方がいいかもしれないな。消しちまうと、また新たに魔法を出されイタチごっこになる可能性がある」
「了解しました。それは私がやりますね」
「任せたぞ、グレール。あとは、流れに身を任せるしかないだろうな。作戦を立てたところで、その通りになるわけがない」

 あとは明日、魔力が完全に回復したら、プルウィアまでワープして、アルカ達を救い出す。
 多分だが、あいつらは俺が助けに来るなど微塵も思っていないだろう。
 自分達を助けたからといって金が手に入るわけがない。そう考え、落ち込んでいるんだろう。

 アルカもリヒトも、優しく温かい。だからこそ、自分を安く見ちまう所がある。
 自分がいたところでと、考えちまう。リヒトからは直接聞いたが、アルカも思っていそうだ。

 まったく、俺は大事なもんを見失う訳にはいかねぇんだよ。
 絶対に、間違える訳にはいかない。一度真理が得れば、これからの道も狂い続ける。

 近くで見てきた、狂った人間を。
 俺は、絶対に同じ道を歩まない。あいつらと同じ血が体を巡っているとしても、絶対に。

 金と命なんて。
 天秤にかけるのすら、おかしい事だしな。

「――――――あ、そういえば」
「いかがいたしましたか?」
「いや、管理者二人を相手にするなら、もうそろそろ決めてもいいかもしれないなと思ってな」
「決める? 何をですか?」
「属性。そいうわけで、出てこい、リンク」

 俺が呼ぶと、偉そうに腕を組んでいるリンクが目の前に姿を現した。

 本当に目の前、近すぎて逆に見えねぇよ。
 こいつは本当にリンクだよな? スピリトじゃねぇよな?

わたくしみたいな上級精霊を名前を呼ぶだけで気楽に出そうと思わないでくれるかしら。私を使いたいのなら、もっと尊敬するようなっ―――』
「管理者であるアマリアに売られたくなかったら、俺のいう事を聞け」
『っ、な、なによ…………』
「お前の属性をもうそろそろ決めたいと思っている。それでなんだが、何か制約とかはあるのか? 俺が持っている属性じゃねぇと無理とか」
『いーえ、特にないわ。この私よ? 出来ない属性などあるわけないじゃない! 馬鹿にするのもいい加減にしてちょうだい?」

 鼻を鳴らしているこいつが正直腹立つが、今はどうでもいい。
 出来ないことはない……か。なるほど。

 普通の属性は、特別精霊にお願いしなくてもいい。炎や水だと俺の属性と被るし、雷や氷だとせっかくの精霊の力を生かせないだろう。

「んー……。普通の属性ではない。何か、いいものはないか。出来れば、普段から使えるような、楽出来るような。なにか………。お金を発掘できるような属性はないか…………」
「目的がすり替わってはいませんか?」
「気のせい気のせい」

 ロゼ姫に突っ込まれてしまった。
 だって、金が欲しいんだもん。仕方がないだろう。

「何か、なにか……。都合がいいもの…………」

 んーーーーーー、駄目だ、思いつかない。
 無難なものは絶対に嫌だし、何かないかなぁ。

「でしたら、移動に特化したものなどどうでしょうか?」
「え、移動に特化したもの?」
「はい。ワープとか」
「――――――なるほどな」

 グレールの助言のおかげで、いい事と思いついちゃった。

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