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プルウィア

基礎を今まで誰にも教えてもらえなかったから仕方がない

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 準備が整い、俺達は顔を見合せる。

 グレールも集中力を高めているからか気配が変わり、体に針が刺さっているような感覚が走る。

 鳥肌が立ち、体が震える。武者震いというやつだろうな、頑張ろう。

「では、行きます」
「おう」

 グレールが肘を後ろに下げ、顔横に構えると、膝を深く折った。

 独特な構えだな、突きか?

 考えていると、空気が揺れた。
 気づくと、目の前に剣の刃先っ――ちっ!

 体を咄嗟に横へ逸らし、伸ばされている手をながれるように掴む。
 炎で包み込み火傷程度させてやろうとしたら、炎が凍り始めた!?

 手を離し後ろに跳ぶと、俺の手に張った氷が解けた。

 まさか、炎が凍るなんて。ありえるのか? 
 相性的には、こっちの方が有利のはずなのに。

「今のを説明しましょうか?」
「…………お願いします」
「わかりました、単純な話ですよ。私の属性は氷、貴方は炎。相性的には貴方の方が強いです。ですが、一つだけ。相性を覆す方法があるのです」
「相性を覆す……。魔力量とかか?」
「そうです」

 でも、魔力量なら俺の方が多いだろ、確実に。チート魔力を持っているんだぞ。
 魔力量以外にも何かあるのか?

「貴方の方が魔力は多いです。ですが、それだけではないのですよ。一つにコントロール出来ていてこそ、相手の魔法を自身の魔法で消す事が出来るんですよ」
「消す事が出来る?」
「はい。自分の方が上回る事が出来れば、相手の属性魔法を今のように凍らせたり、同じ属性ならかき消す事が出来るのです」

 ん? 待てよ。今の説明だと。

 同じ属性はかき消す事が出来る。
 もしかして、アクアとやり合った時、俺の防壁魔法を破壊されたのって、アクアが水属性魔法を繰り出し、俺が魔力量で負けたからという事か?

 だから、弾けるように俺の属性魔法が消えたのか。
 俺が、負けたから。

 炎の纏われている手を握り、グレールを見る。

 この世界では、チート魔力だけではどうする事も出来ないのは痛いほどよくわかった。
 俺が持っているのは金棒、扱う鬼が強くなければ宝の持ち腐れ。

 やってやるか、金の為、報酬のために。
 全力で修行して、強くなり管理者を相手に出来るようになる。

 もう一度、拳に灯されている炎に集中し始めた。

「…………あの、質問してもよろしいでしょうか」
「っ、え、何?」
「今、貴方は何を意識しているのでしょうか」

 え、何を意識?

「えっと。魔力を拳に纏わせる事と、魔力量…………だな」
「なるほど、わかりました。それだと、戦闘がめんどくさいですね」
「めんどくさい?」

 戦闘はいつでもめんどくさいぞ。
 出来れば俺の一言で全ての物事が進んでほしい。

「相手が強者の場合、魔力もそれなりに魔法へ注ぎ込まなければなりません。今、貴方自身が魔法の威力をどこまで出せるのか、わかっておりますか?」
「威力? 今まで二回くらいは、怒りに任せ魔法を暴走させてしまっているけど。あれが限界ではないという事か?」
「それはリミッターが外れている状態なため、百パーセントではなく、それ以上を出している可能性があります。それを視野に入れてしまっては駄目ですよ。普段の貴方が、どこまでの威力を出す事が出来るか、制御が出来るか。それは理解していますか?」

 あぁ、それはさすがに意識していないな。
 俺の莫大な魔力を本気で出してしまうと、抑えきれない可能性があるから出すのが怖い。

「知らないみたいですね。限界は知っておいた方がいいですよ。自分はここまでが限界。だから、普段はこの魔法よりこの魔法を使おう。この魔法ならここまでは出せるな、などなど。感覚で理解できるようになった方が、戦闘はかなり楽になるかと。先ほどのようにアビリティに聞かなくても良くなります」
「つまり、感覚で魔力量を制御出来れば、そこに思考を回さなくていいから、戦闘が楽になるという事か?」
「そうです。魔力量のセーブや、逆に注ぎ込むとなると、体力や頭を使います。魔力量が多ければ多いほど大変のはずです。そのため、限界を知り、そこからメーターを考えた方がいいかなと思います。実践より、基礎。おそらく基礎、わかっていないようなので」

 …………よくわかったなこいつ。一回だけ俺と戦闘を行っただけなのに。

 基礎なんて全く知らない、威力だけで今まで乗り越えてきていた。
 誰にも教えてもらえていないからな、知るわけがない。

「基礎、教えてもらえるか?」
「ロゼ様のために動いてくださるのでしたら、お手伝いいたします」

 やっぱり、こいつはロゼ姫を一番に考える人なんだな。
 グレール見た人、そうそういないだろう。これは、いい出会いが巡ってきたかもしれない。
 
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