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プルウィア

見た目が気持ち悪いとかもう勘弁して…………

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 森の中に入り、ヒュース皇子を先頭に周りを警戒しながら歩く。
 アルカとリヒトも足元に気を付けつつ、周りに意識を向けていた。

 俺も、めんどくさいが周りを見回してみると、怪しいものは何もない。
 太陽光は中を歩く俺達に降り注いでいるし、鳥や動物が珍しい俺達を見ている。

 ただ、綺麗な森の中という印象しかないな。

「結構、普通な森の中だな」
「だが、油断はするな。そのように油断させ、死角から襲ってくる可能性がある」
「確かにそうだな。だが、周りに意識向けすぎても疲れるんだが…………」

 こんなにずっと周りに意識を向け続けていたら、体力や精神的なものが削られるぞ。無駄に戦闘前に色々なものを削りたくない。

 ……………俺、サボってもいいかな。
 今はモンスターの気配も感じる事が出来ないし、体力使うのは得策じゃない。
 よしっ、俺は休む。気配察知はこいつらに任せよう。

 と、思った瞬間、カサカサと草が揺れる音が聞こえるだけの空間に、突如アビリティの声が脳に直接聞こえた。

(『主、強いモンスターの気配を察知しました』)
(っ、マジか。俺にはまったく感じないんだが? どこ?)

 何故かアビリティが俺の脳に直接語り掛けて来る。
 周りに聞かれないようにしている……そういう事か?

 なぜわざわざそんな事…………。

(『右側、姿を変えております。こちらを見ている鹿からモンスターの気配を感じます』)

 隣にいる鹿……。

 歩くのは止めずに横目で見てみると、俺達をジィっと見ている鹿が居た。
 歩いている俺達を目で追っている。標的認定されたか?

 なるほど。気づいたことにばれると、モンスターは確実に襲ってくる。
 こんな動きにくい場所で戦闘になれば、不利なのは確実にこっち。どこか開けている場所にあいつを誘導できれば、少しでも戦闘が楽になる。

「なぁ」
「? どうしたんですか? カガミヤさん」
「この森の中って、ずっとこんな細道が続いてんのか? もっと歩きやすい場所とかないのか?」

 聞くと、アルカとリヒトはわからないらしく、ヒュース皇子に視線を向けた。

「もう少し歩いた先に開けた場所があったはずだ」
「おぉ、良かった。そこで少し休もう。森の中を歩いて足や腰が痛くなってきたんだ。歳には勝てん」
「だが、早くモンスタ―を見つけなければ日が暮れ辺りが暗くなる。戦闘が困難になるぞ」
「相手はSSランク、体力が半減されている時に戦闘をすれば同じこと。どちらも苦しいのなら、体力的に楽な方がいい」
「…………わかった」

 おい、なんだその間。顔が納得していない…………いや、呆れているような顔だな。
 今は若いからわからんだろうけど、歳を取ればわかるぞ。俺の今の気持ちがな。

 休みたいという理由より、戦闘しやすい所にあいつをおびき出したいという気持ちの方が強いがな。

 そのまま歩き続けること十分程度。ずっと鹿は、不自然にならないように距離を保ち、俺達に付いて来ている。
 いつ襲ってくるか分からんから、正直精神が削られる。ずっと背後を取られている状態、きついなぁ。

「はぁ…………」
「大丈夫か? カガミヤ。疲れたか?」

 おっと、アルカが俺のため息に気づいちまった。

「大丈夫ではない。森の中なんて普段あるかんし、変に筋肉を使うから体力が倍削られている気がするんだ。早く開けた場所に辿り着かないか?」

 先頭を歩いているヒュース皇子に聞くと、「もう少し」と言うだけ。

 本当にもう少しなんだよな? もう少しと言っときながら数十分もかかるとかないよな? それなら怒るぞ。

「着いたぞ」
「本当にあともう少しだったのか…………」

 疑って悪かったヒュース皇子、お前の言葉は本当だったよ。

 付いて行くと、戦闘用に作られたのかと思える広場が姿を現した。

 円形に空間が作られている。
 広さも、ちょっと狭いがまぁまぁ。このくらいの広さなら戦闘可能か。

「ここでなら少しは休めそうだな。カガミヤ、座るか?」
「いや、戦闘準備を始めてほしい」
「え?」

 三人の困惑の声を耳にしながら、魔導書の準備。
 さっきから視線がうるさいから、早く殺しっ――コホン。退治したい。

「と、いうわけで、行きます。flameフレイム

 右手に炎の玉を作り出し、視線の感じる方に放つ。
 すると、鹿が上に大きく跳び、叫ぶように鳴き声を響き渡らせた。

 目で追っていると、空中で鹿の姿が変わり始めた。
 スライムのように鹿の身体がぐにゃりと歪に変わり、まるでアメーバのような姿に。

 気持悪い見た目に、吐き気が……。
 ここまで大きなアメーバ、一瞬で殺したい。

「まさか、もう出現していたなんて…………」
「ぼけっとしている暇はないぞ、皇子様。アルカとリヒトは準備出来ているか?」

 後ろを振り向くと、心配は無用だとすぐに分かった。

 モンスターが現れたとわかった瞬間、二人はすぐに自身の武器を手に持ち臨戦態勢を作っていた。

 アメーバの形をしているモンスタ―、ショスは地面にうまく着地。
 口なのかなんなのかを俺達に向けて、うようよと動いている。

 …………気持ちが悪い!!!!

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