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プルウィア

モンスターってある意味万能じゃないか?

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 王との話が終わり、今俺達は空き部屋に通された。
 部屋には重苦しい空気が漂い、その原因であるヒュース皇子が壁側で丸くなっちまった。

 部屋の中も豪華で、中心には白い丸テーブル、周りにはふかふかな一人用のソファー四つ。
 床はフローリングになっており、上に赤い絨毯が引かれていた。

「あの、カガミヤさん。何か声をかけた方がいいのではないでしょうか……」
「いや、あいつには頭を整理させる時間が必要だろう。自分を助けるため、強引に婚約させようとしていたと知って、平静ではいられないんだろうからな」

 あの話の後、詳細を話してくれた親は、やっぱりちゃんとした父親だった。

 男として育てたのは、これからどのような逆行でも立ち向かえるように精神的に鍛える必要があったから。
 女だと周りからの目線が痛いらしく、それをヒュース皇子に味合わせないためとも言っていた。

 王が話している時、悲痛な顔を浮かべていた。
 その理由は、娘であるヒュース皇子を苦しませてしまったこともあるだろうが、それだけではない。

 今、この村を悩ませている感染症。それのせいで、母親はヒュース皇子を生んですぐに死んでしまった。

 もし、感染症にかかっていなければ、感染症がこの国を蝕んでいなければ。また結果は違っていたかもしれないと、王は話していた。

 んで、ここからが重要。
 王は直接聞いたらしい、管理者に『感染症をどうにか出来ないか』と。

 国や村を管理している監視者の名前は"フェアズ"。
 
 相談を受けたフェアズはオスクリタ海底の姫にヒュース皇子を差し出す事を約束すれば、感染症をどうにかすると言ったらしい。
 理由は、オスクリタ海底の姫の魔法が治癒に特化したものだから。

 何でそんな条件を出したのかは、オスクリタ海底からの相談もあり、同時に解決するためと王は推測したみたい。

 オスクリタ海底の姫は同性を愛し、異性に興味が無いため、こちらも親が勝手にフェアズに相談したと聞いたらしい。

 だが、オスクリタ海底の姫は、婚約など望んではいない。
 こんな無理やりな婚約なのならなおの事。

 そのため、表面上は婚約し嫁がせるということにしようと、オスクリタ海底の姫に仕えると話し合った―――と。

 頭がパンクしそうだ。
 
「はぁ…………」

 ソファーに座り考えていると、隣にリヒトが座り質問してきた。

「カガミヤさん、今回はどこから手をつけていくおつもりですか?」
「婚約とかは急ぎでは無いだろうし、まずは感染症だろう。まさか、餓鬼のとこの依頼と繋がっているとは思わなかったが、一石二鳥だ。二つ分の依頼報酬が貰えるぞ」

 俺が話していると、アルカが首を傾げ見てきた。なんだよ。

「なぁ、二つの依頼を解決するのは前提なんだが、ギルドからは一つずつしか依頼を発注してもらえない。二つ同時に解決したところで、報酬は一つ分だけじゃないか?」

 え? つまり、ギルドで話していた、通常の五倍の報酬はないという事か?

「…………俺、一抜けた」
「でも、王から言われたことはやらないとだろ? ここでバックレたら本当に俺達終わりだぞ」

 逃げ道がない、だと? 嘘だろ。
 ちっ、仕方がねぇ。すべてを解決したら、王に恩着せがましくお金を要求しよう。

「ゴッホン。ひとまず、感染症の原因を探るぞ。俺達にかかる可能性もあるだろうから、あまり寂れた村に行かないで、人と関わらないで情報をゲットする方法、求む」
「不可能」
「なんでだよ」
「結局、楽したいだけだろ、その手には乗らないからな」

 ち、アルカは俺の事をわかってきたな。
 報酬が半減したかもしれないと聞いて、俺のやる気も半減したんだよ。
 めんどくさいんだよ、動きたくないんだよ。

「…………チサトとやら」
「どうした、復活したのか?」

 ようやく復活したらしいヒュース皇子が声をかけてきた。
 まだ目線を泳がせているから、頭は整理しきれていないんだろう。

 そんな皇子から発せられた次の言葉により、俺は愕然とした。

「感染病なら、モンスターが原因だ」
「知っているなら最初から言えよ」
「気力がなかった」
「腹立つ」

 何なんだよ。
 なら、そのモンスターを殺せば感染病はどうにかなるじゃん。
 何でここまで思いつめるんだよ、解決策がわかっているようなもんじゃん。

「そのモンスターのランクはSS。だが、何故かSSランクの冒険者が何度も討伐を失敗しているらしい」
「ランク付けミスったんじゃねぇの?」
「ランクはダンジョンを管理している管理者がランクを付けているはずだ、間違えるはずがない」

 ランクも管理者が決めているのか。どこに言っても管理者の名前は聞くなぁ。

 ヒュース皇子の言う通り、管理者が決めているのならミスは考えにくいか。なら、他にクリアできない理由があるという事だな。

 それも踏まえて、これからの段取りを決めていくか。

 俺が再度考えこもうとすると、ヒュース皇子が真剣な眼差しで俺を見て名前を呼んできた。

「なぁ、チサト」
「なんだ?」
「少し、私に付き合え」
「…………え?」
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