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プルウィア
黒歴史製造機ここに誕生
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「っ!?」
な、なんだ、今の。夢?
目を勢いよく開ければ、見慣れた木製の天井。
「――――いっ!!」
耳鳴り、頭が痛い。心臓も痛む、なんだよこれ。これも、今見た夢の影響か?
服が肌にへばりつく、汗が酷い。
「はぁ、はぁ…………」
今の夢、確実にあの女だ。
思い出したくもない、あの、俺の母親。
くそっ、だから関わりたくなかったんだ。
帰る場所として認定されている、家族というものに。
「…………ふぅ」
何とか頭痛は治まってきた。でも、耳鳴りが酷い。
こんな夢を見るなんて、俺も新しい環境で疲れているのかな。
疲れていない方がおかしいけど、今までとは百八十度違う環境だし。
「はぁ…………」
「大丈夫ですか?」
「どわぁぁあ!?!?」
え、な、え?! リ、リヒト!?
え? な、なんでベッドの隣にリヒトがいるん? いつ入ってきた?!
「な、なな、な?」
「え、あの、驚かせて、ごめんなさい?」
俺の声にリヒトも驚いた顔を浮かべている。
いや、その顔は俺が浮かべたいんだが? いや、浮かべているか…………。
「ノックをして、声もかけたのですが、返事がなくて。倒れているのかなってドア開けたら、なんか。カガミヤさんが頭を抱えているし、心配で…………」
「あ、あぁ、それは悪かった。考え事をしていてな」
「考え事ですか?」
「あぁ」
いや、まさか。周りの音が全く聞こえなかったなんて…………。
「…………あ?」
「熱があるわけでは、ない。大丈夫ですか? どこか痛いですか? まだ約束の時間まで余裕があるので、もう少しだけで休んでも大丈夫ですよ」
俺のデコに手を当て、熱を確認しているリヒト。
笑顔でいるのは、俺が辛そうに見えたからあえて笑っているのか。セーラ村でもそうだったな。
こいつが触れたところ、ほんの少し、温かい。
「…………なら、少しだけ」
「はい、時間になったらまた来ます。それまでゆっくり休んでいて」
リヒトが立ち上がり部屋を出て行こうとする。
あ、行くのか…………。
────クイッ
「っ、え?」
「…………あ」
やべ、反射的にリヒトの手を掴んじまった。
咄嗟に離したけど、遅いよなぁ。きょとんとした顔で俺を見てくる、どう言い訳しようか。
「カガミヤさん」
「…………ナンデスカ」
つーか、俺は餓鬼か? なんで咄嗟に手を掴んだ。
これだと、なんか人に甘えているみたいじゃないか。俺はもう大人だぞ、二十八だぞ、おっさんだぞ、やめてくれよ。
絶対に馬鹿にされるやん。いい年したおっさんが年下の女に甘える的な図。
うわぁ、改めて言葉にすると本当にみっともない、黒歴史だ。
「私は、ここに居ますよ」
「…………え?」
「私はここに居ます。だから、安心してください。絶対に貴方から離れません。だから、もっと私を求めてください」
…………嬉しそうな顔を浮かべるでない。なんか、こう、なんか。
なんだこの、言いようのない感情。
やめろ、やめてくれ。俺にそんな眩しい笑顔を向けないでくれ。心が浄化される。
「寝てもいいですよ、カガミヤさん。それとも、何か面白い話でもしますか?」
「…………いや、少し寝る」
「分かりました、おやすみなさい」
俺がリヒトとは反対の方を向き横になると、頭を触られている感覚。
でも、嫌な気分にはならない。
「いい夢を見てください」
いつの間にかなくなっていた耳鳴りと頭痛。
深く眠れていなかったのか、睡魔もいきなり襲ってきた。
・
・
・
・
・
・
――――ガチャ
「リヒト…………っ」
アルカが中に入り名前を呼ぶと、リヒトが人差し指を立て口元に当てた。
静かにというようなジェスチャーに、アルカは自身の口を閉じる。
リヒトの隣に移動し、目の前で寝ている知里を見た。
「さっきの苦し気な声は、やっぱりカガミヤだったのか」
「みたい。私の声も届いていないくらい乱れてた」
「そうか」
二人は、知里が起きないように小さな声で話す。
安心させるように布団の上から、知里のお腹辺りをポンポンとする。
魘されることも無く、寝息を立て気持ちよさそう。
だが、知里の額にはまだ汗が流れており、リヒトがそっと拭いてあげた。
その時、知里が二人の方に寝返りを打った。
今はすやすやと安心したように眠っており、二人は安堵の息を零す。
「今まで、カガミヤに負担をかけ過ぎたという事か」
「それもあると思う。でも、それだけじゃない気がする」
「それだけじゃない?」
「うん。でも、これはまだわからない。だって、私達はまだカガミヤさんの事よく知らないでしょ? わかったような事を言いたくはないかな」
「…………そうか」
「うん」
さっきまで浮かべていた笑顔がリヒトから消え、不安そうに眉を下げてしまう。
そんなリヒトの頭を、アルカが優しく撫でた。
その手もまた温かく、心地よい。
リヒトは安心したように、アルカを見上げた。
「私、カガミヤさんを支えたいな」
「それは、俺も一緒だ」
アルカの言葉を最後に、二人は口を閉ざす。
外の明るい日差しが部屋に差し込み、気持ち良さそうに寝ている知里を照らす。
安心したように寝ている彼に、リヒトは目を細め優しく微笑みかけ、掛布団から出ている彼の手を優しく握った。
「ずっと、一緒ですよ。私達三人は、ずっとです」
な、なんだ、今の。夢?
目を勢いよく開ければ、見慣れた木製の天井。
「――――いっ!!」
耳鳴り、頭が痛い。心臓も痛む、なんだよこれ。これも、今見た夢の影響か?
服が肌にへばりつく、汗が酷い。
「はぁ、はぁ…………」
今の夢、確実にあの女だ。
思い出したくもない、あの、俺の母親。
くそっ、だから関わりたくなかったんだ。
帰る場所として認定されている、家族というものに。
「…………ふぅ」
何とか頭痛は治まってきた。でも、耳鳴りが酷い。
こんな夢を見るなんて、俺も新しい環境で疲れているのかな。
疲れていない方がおかしいけど、今までとは百八十度違う環境だし。
「はぁ…………」
「大丈夫ですか?」
「どわぁぁあ!?!?」
え、な、え?! リ、リヒト!?
え? な、なんでベッドの隣にリヒトがいるん? いつ入ってきた?!
「な、なな、な?」
「え、あの、驚かせて、ごめんなさい?」
俺の声にリヒトも驚いた顔を浮かべている。
いや、その顔は俺が浮かべたいんだが? いや、浮かべているか…………。
「ノックをして、声もかけたのですが、返事がなくて。倒れているのかなってドア開けたら、なんか。カガミヤさんが頭を抱えているし、心配で…………」
「あ、あぁ、それは悪かった。考え事をしていてな」
「考え事ですか?」
「あぁ」
いや、まさか。周りの音が全く聞こえなかったなんて…………。
「…………あ?」
「熱があるわけでは、ない。大丈夫ですか? どこか痛いですか? まだ約束の時間まで余裕があるので、もう少しだけで休んでも大丈夫ですよ」
俺のデコに手を当て、熱を確認しているリヒト。
笑顔でいるのは、俺が辛そうに見えたからあえて笑っているのか。セーラ村でもそうだったな。
こいつが触れたところ、ほんの少し、温かい。
「…………なら、少しだけ」
「はい、時間になったらまた来ます。それまでゆっくり休んでいて」
リヒトが立ち上がり部屋を出て行こうとする。
あ、行くのか…………。
────クイッ
「っ、え?」
「…………あ」
やべ、反射的にリヒトの手を掴んじまった。
咄嗟に離したけど、遅いよなぁ。きょとんとした顔で俺を見てくる、どう言い訳しようか。
「カガミヤさん」
「…………ナンデスカ」
つーか、俺は餓鬼か? なんで咄嗟に手を掴んだ。
これだと、なんか人に甘えているみたいじゃないか。俺はもう大人だぞ、二十八だぞ、おっさんだぞ、やめてくれよ。
絶対に馬鹿にされるやん。いい年したおっさんが年下の女に甘える的な図。
うわぁ、改めて言葉にすると本当にみっともない、黒歴史だ。
「私は、ここに居ますよ」
「…………え?」
「私はここに居ます。だから、安心してください。絶対に貴方から離れません。だから、もっと私を求めてください」
…………嬉しそうな顔を浮かべるでない。なんか、こう、なんか。
なんだこの、言いようのない感情。
やめろ、やめてくれ。俺にそんな眩しい笑顔を向けないでくれ。心が浄化される。
「寝てもいいですよ、カガミヤさん。それとも、何か面白い話でもしますか?」
「…………いや、少し寝る」
「分かりました、おやすみなさい」
俺がリヒトとは反対の方を向き横になると、頭を触られている感覚。
でも、嫌な気分にはならない。
「いい夢を見てください」
いつの間にかなくなっていた耳鳴りと頭痛。
深く眠れていなかったのか、睡魔もいきなり襲ってきた。
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――――ガチャ
「リヒト…………っ」
アルカが中に入り名前を呼ぶと、リヒトが人差し指を立て口元に当てた。
静かにというようなジェスチャーに、アルカは自身の口を閉じる。
リヒトの隣に移動し、目の前で寝ている知里を見た。
「さっきの苦し気な声は、やっぱりカガミヤだったのか」
「みたい。私の声も届いていないくらい乱れてた」
「そうか」
二人は、知里が起きないように小さな声で話す。
安心させるように布団の上から、知里のお腹辺りをポンポンとする。
魘されることも無く、寝息を立て気持ちよさそう。
だが、知里の額にはまだ汗が流れており、リヒトがそっと拭いてあげた。
その時、知里が二人の方に寝返りを打った。
今はすやすやと安心したように眠っており、二人は安堵の息を零す。
「今まで、カガミヤに負担をかけ過ぎたという事か」
「それもあると思う。でも、それだけじゃない気がする」
「それだけじゃない?」
「うん。でも、これはまだわからない。だって、私達はまだカガミヤさんの事よく知らないでしょ? わかったような事を言いたくはないかな」
「…………そうか」
「うん」
さっきまで浮かべていた笑顔がリヒトから消え、不安そうに眉を下げてしまう。
そんなリヒトの頭を、アルカが優しく撫でた。
その手もまた温かく、心地よい。
リヒトは安心したように、アルカを見上げた。
「私、カガミヤさんを支えたいな」
「それは、俺も一緒だ」
アルカの言葉を最後に、二人は口を閉ざす。
外の明るい日差しが部屋に差し込み、気持ち良さそうに寝ている知里を照らす。
安心したように寝ている彼に、リヒトは目を細め優しく微笑みかけ、掛布団から出ている彼の手を優しく握った。
「ずっと、一緒ですよ。私達三人は、ずっとです」
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