上 下
64 / 520
プルウィア

目的地に到着した俺、絶対に死ぬ

しおりを挟む
 馬車が来たから乗り込み、目的地のグランド国に向かう。
 道中は何もなく、草原が広がるだけ。

 都会を知っている俺からしたら、こんな何もない道は違和感しかないな。でも、やっぱり空気が綺麗だし、風は気持ちいい。

「少し、テンション上がるな」
「そうなのか? もしかして、カガミヤがいた元の場所って、馬車とかがないとかか?」
「そうだな。一般的な移動手段ではなかった。観光的な意味で乗っている奴とかはいたが、俺は正直興味なかったからこれが初めてだ」
「そうなんですね。馬車はワープと違い、辿り着くのは遅いですが、風や自然の音を楽しめて心地いいですよぉ」

 リヒトが笑顔で言ってきた。
 確かにそうかもしれないな。
 今まさに、自然を楽しんでいる。心が洗われるようだなぁ。

「カガミヤのいた場所ってどんな所だったんだ?」
「え? どんなって言われてもなぁ」

 俺が考えている間、二人が目を輝かせて見てくる。

 そんなに期待の込められた瞳を向けられてもなぁ。
 なんて説明すればいいのかな、どんな説明してもわからないと思うけど……。

「…………魔法やダンジョン。ギルドといった概念がない世界。としか言えないな。あとは多分、何を言っても理解が出来ない」
「いや、それだけでも驚きだ。まさか、魔法がないなんて」
「だよね。魔法なんて子供の頃から基本魔法ぐらいは誰でも使えたし、つかえ、る、はずだし……」

 何故、そこでリヒトは落ち込む。
 自分で言ったくせに、勝手に落ち込むな。

 リヒトは、基本攻撃魔法を使えないらしいからなぁ。それのせいで、前までいたチームに追放されたとアルカから聞いた。

 それを思い出したんだろうが、今思い出したところでこっちが困るから落ち込まないでくれ。

 落ち込んでしまったリヒトの頭を撫でて、その後は普通に世間話をしていると一時間なんてあっという間。無事、目的地であるグランド国に辿り着いた。


 馬車から降りて一番最初に目に入るのは、一つの大きな門。
 その前には、二人の門番。鎧を身に着け、槍を持って立っている。

 厳重に守られているな、さすがグランド国。よく知らんけど。
 アルカも門番に気づき、不安そうに俺を見上げてきた。 

「なぁ、通れると思う?」
「問題ないんじゃないか?」

 不安そうなアルカとリヒトを置いて、門を潜ろうとした。
 けど、まぁ予想通り。男二人が槍をクロスするように止めてきやがった。

「待て。なぜこの街に来たのか、目的を言え」
「ギルドから依頼」
「証はあるのか」
「これでもいいなら」

 依頼内容が書かれている紙を渡すと、門番二人が確認し始める。んで、納得したのか紙を返してくれた。

「許そう」
「どーも。おい、行けるようになったぞ。いつまでそこにいるつもりだ」

 まだ二人が元の場所から動こうとしていない。早く行かないと宿が取れなくなるぞ。

「カガミヤのコミュ力って、どこでどのように発揮されるのかわからない……」
「いや、コミュ力ではなく、物怖じしない性格と、合理的な思考が今のカガミヤさんを動かしているような気がする」

 おい、関係ない話で時間を使うな。

 ちなみに俺を動かしているのは、報酬です。金です。
 金が俺の全て、金があれば俺は生きていける。

 
 中に入ってみると、さすが”国”と呼ばれているだけあって凄い。

 セーラ村の何倍だろうか。いや、何十倍かな。そのくらいは大きそうな街。中を覗いてみると、和気藹々として楽しそう。

 んで、俺はまたしても人酔いを覚悟しなければならないという事を瞬時に理解出来た。理解、したくなかったなぁ。

「お? なぁ、あのお城みたいな建物はなんだ?」
「あれがおそらく、今回の依頼人が住んでいる城じゃないかな」

 まだ目の前に広がる街の中に入っていない俺達でも見上げなければ全体を確認出来ない程大きな城。

 壁画が白く、何階建てかもわからない。
 西洋ファンタジー世界に出てくるような立派な城が中心に建っている。

「すごいです!! カガミヤさん!! 早く行きましょ!!」
「早く行くぞカガミヤ!!」
「おーい。はぐれるなよー」

 餓鬼どもがぁ……。
 俺が人酔いする体質なの完全に忘れてやがる。

「はぁ、頑張るか」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...