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セーラ村

基本魔法であんだけ強いのか

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 馬鹿威力のある基本魔法だな……。
 これは、扱い方を間違えると他のもんも巻き込んじまいそう。

 だが、これは結構使えるんじゃないか?
 壁とかじゃなくて、モンスターとかで試せたらいいんだけど、さすがにワイバーンはハードルが高い。

「なぁ、どこかに弱い敵とかいねぇか?」
「それなら多分、今の道を歩いていれば出てくると思うぞ」
「なら歩こう。どっちにしろ、こんな所で立ち尽くしていても金は入らねぇからな」

 左右を見るが、どっちも先を見通す事が出来ない闇。

 どんなモンスターが潜んでいるのかわからない道だから、油断でもしようものなら、避け切ることができず殺される。

 おじさんの身体能力を舐めるなよ? 
 少し無理しただけでぎっくり腰になるんだからな。

「どこに歩いて行けばいい?」
「来た道を戻るとワイバーンがいるから、逆側に歩こう」

 言うと、アルカを先頭に洞窟内を進む。

 湿気が凄いな。
 湿っぽくて、体に服が張り付く感覚が気持ち悪い。

 ――――あ、こういう時に色々質問しておこう。
 この後は恐らくバトルパート。今しか聞くタイミングはないな。

「なぁ、この世界について教えてもらってもいいか?」
「大丈夫だが、もうそろそろお前についても教えてほしい。何て呼べばいいのかわからないし……」

 あぁ、まぁ、それもそうか。

「あと、そんな強い力を持っていて、どうやって今まで正体を隠していたのかも気になる」

 それは、答えられないなぁ。俺自身、分からんし。
 今は答えられる質問だけ答えとくか。

「俺の名前は鏡谷知里かがみやちさと。お前らがいるこの世界とは、また違う世界から来たと考えている。だから、この世界の常識やルール。マナーとかを知らない」
「違う世界という事は、貴方はこの世界に転移された魔物って事ですか?」

 待て待てリヒトよ、俺みたいなイケメンが魔物に見えるんか? 

 俺、これでも結構な高身長で、猫っ毛の黒髪が目元にかかっていたとしても、顔が整っていると言われた人間だぞ。

「おいおい、リヒトちゃん、俺が魔物に見えるかい? こんなにか弱くてイケメンの俺が魔物の訳がないだろ。見た目と違って中身はおじさんだから、精神的には弱っているんだ。もう少し労わってほしいなぁ」
「…………見た目は確かに悪くないと思います。ですが、それ以外は全て否定します。あんな威力を出せる人がか弱いわけがない」

 リヒトの目から放たれる軽蔑の眼差し、痛いよ……。
 精神が弱いと言っただろう。あぁ、心が泣いている。

「魔物じゃないのなら、その力は一体どこから手に入れんだよ」
「知らん」

 わからんことを素直に分からんと言うと、アルカが怪訝そうな瞳を向けてきた。

 そんな目で見られたとしても、俺自身分かっていないのだから知らんとしか言えんわ。

「ひとまず、ここの世界での常識を教えてほしいんだけど」
「転移魔法についてまだ聞きたい事があるんだが、まぁいいや。なら、まず――――」


 ────ダッダッダッ


 アルカが話し出そうとすると、何かの足音が聞こえてきた。

 どんどん大きくなるって事は、こっちに何かが走ってきているのか。
 この音は二人にも聞こえたらしく、前方に目を向けている。

 音が聞こえてくる方を見ると、視えたのは大量の影。

 子供サイズのモンスターっぽいな、足音的に複数人。
 集団で行動するモンスターか、めんどくさそう。

「あれは…………」
「あれは、集団で行動する事が多い低級モンスターだ。おそらくCランクの、ゴブリン」

 めっちゃ有名なところが来たな。
 低級なら俺の魔法を試す事が……で…………き……?

「────きもっ」
「十、二十はいそう」

 アルカが顔を引きつらせ、額から一粒の汗を流し数を数えている。
 数えるな、現実を俺に突きつけるな。

「カガミヤ、まずはさっきの魔法で数を減らしてくれるか?」
「あぁ、はいよー」

 右手を向かって来ているゴブリンに向け、集中。

 さっき、壁を壊した時と同じようにすれば問題ないはず。
 威力は上げないとあの数は難しそうだが、魔力とかよく分からん。

 仕方がない、頭の中で『魔力!』と叫んで魔法を放てば何とかなるだろう。

「すぅ、はぁ。――――flameフレイム!!」

 唱えると、四方にばらまかれていた赤い炎が渦を巻くように結集。
 炎はたちまち大きくなり、狭いダンジョンの道を塞いでいく。それでも、熱気は感じない。


「───行け」


 集まった炎は轟音を鳴らし、まっすぐとゴブリンへと向かって放たれた。


 ――――ギャァァァアアアアアア!!!!!


 …………わぁお、俺が放った炎がゴブリン達にぶつかり大爆発。
 二十はいたゴブリンを全て吹っ飛ばした。

 数秒間、爆風と土煙で視界が遮られていたけど、徐々に薄れてくる。
 前方を見ると、焦げた地面や崩れた壁だけが残り、ゴブリンは一体も残っていない。

 いやぁ、いい戦闘だったね、汗かいたわぁ。流れてないけれども。

 汗を拭く仕草をしていると、リヒトが隣におずおずと近づき、ぼそっと心を抉る言葉を発しやがった。

「あの、他の魔法を試さなくて良かったんですか」
「言わないで、まさかここまで勢いが増すなんて思わなかったんだよ。一気に倒せるなんて思わないじゃん」

 弱すぎだってゴブリン、もっと耐えようぜ男だろ。本当に男かは知らんけど。

「これだったら、ワイバーンも倒せるのでは?」
「うん、余裕かもしれないよ」

 待てやてめぇら。
 それは俺にワイバーンを倒せという事だろふざけるな。

 俺はまだ自分の魔法を一つしか使ってないんだぞ、さすがに賭けになるだろう。

「よし、早く来た道戻ろうぜ!!」
「おー!!」
「『おー』じゃねぇんだわ。結局お前らは俺を利用しているだけだろ」

 俺の力を使いたいだけだろ、魔法を使いたいだけだろ。
 利用しようとしてんじゃねぇわ、ざけんな。

「利用も何も、ここから出るには引き返すか、ダンジョンのボスを倒さなければ出られないぞ?」
「なら、引き返せば…………報酬は?」
「引き返せばもちろん報酬はなし。ただ、無駄にモンスターを倒しただけになる」

 うわぁ、最悪。
 結局、ワイバーンを倒さないと駄目なのか。

 まぁ、だよな……。
 報酬をもらうには、それ相応の事をしないといけない。
 当たり前だな、早く倒そう。

 基本魔法であんだけの技を出せるなら、他の魔法はもっと威力があるはず。

「名前だけでも他の魔法を確認しておこう」
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