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最終決戦

信じるという言葉だけで

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 俺の言葉に答えるように、三体の式神が動き出した。

 まず先行して、速さ重視の雷火が陰陽師達へ向かって行く。次に百目が刀を構え、地面が抉られるくらい強く踏み、次々陰陽師達を一発で気絶させて行った。
 七人ミサキは数を使い、百目や雷火の手が届かない所にいる陰陽師を薙ぎ払う。

 次々倒される陰陽師達。本気を出した式神達のおかげで、俺のもとには陰陽師達が来ることはなくなった。

「す、すげぇ…………」
『見惚れているのはいいけど、集中だけは切らさないでよ。今集中切らすと馬鹿な負け方するからね』
「わかったよ」

 お札に纏わせている闇が微かに揺れた。ちょっと集中力が切れてきたみたい。再度、集中力を高めると闇が安定した。

 少しで気を逸らすと妙技が不安定になり、戦闘途中で式神が動けなくなる。今は失敗は許されない。
 闇命君の言う通り、馬鹿な負け方なんて絶対にしてやるものか。

 雷火が陰陽師達の視界を眩ませ、百目と七人ミサキが気絶させていく。

 見ているだけの俺からしたら圧巻、すごすぎない? 闇命君の式神達。
 どんどん陰陽師達は倒れていき、やっと辺りを見渡せるくらいにまで減ってくれた。

「このまま減らしていけば――……」

 …………ん? 陰陽師の隙間、地平線が見える景色に、一つの人影が見える。なんだあれ、誰だ? 

 いや、一つじゃない。大人くらいの人影と、子供くらいの人影が見える。
 あれが戦闘前に百目が言っていた、男性と少女なのか? だとするのなら、早く追いかけないと。このまま逃げられる可能性がある。

 周りを見ると、もう残り五十人くらいまでに減っていた。このまま順当にいけば、あの人影を追いかけることができる。

 早く追いかけて、捕まえたい。

 子供ということは、蘆屋藍華の可能性が十分あるし、話を聞くことができるだろう。

『ここまで減ったら、あとは七人ミサキと雷火で事足りる。優夏は百目を連れて人影を追え!』
「え、でもそうなると、妙技が出せなくなるんじゃ…………」
『妙技を使わなくても問題ない。それに僕はもう口だけの役立たずではない。任せてくれても構わないよ』

 隣に立つ闇命君が、俺を横目で見てくる。眉を吊り上げ、瞳に宿る炎をメラメラ燃え上がらせていた。

 ────ここで、信じない選択肢なんて、ないよね。

「わかったよ、闇命君。ここは君に任せた。俺は人影を追いかけるよ」
『うん』

 俺が持っていた七人ミサキのお札を渡すと、同時に一技之長である闇が消えてしまった。
 それにより、雷火や百目達の動きも普通に戻った。

 一瞬困惑したみたいだけど、俺達を横目で見てすぐに理解してくれたみたい、すぐに態勢を整え、再度陰陽師達を気絶させ続けていた。

 一言いうんだった。ごめんよ、百目、雷火、七人ミサキ…………。

 あ、待てよ? 俺が蘆屋藍華ともう一人の相手をしないといけないのか。やば、不安だ。

 今まで闇命君が言葉で誘導してくれてたし、指示も出してくれていた。
 俺一人でどこまでできるのか…………。

『優夏、大丈夫』
「っ、え?」

 闇命君陰陽師達を見ながら、俺にそう言ってきた。
 俺の不安だが伝わってしまったみたいだ。心中を読めるから仕方がないけど、申し訳ない。

『信じてる』
「っ、え、な、なに?」
『信じているって言ったの。僕が、君を。この僕にこんなことを言わせたんだから、自信もちなよ」

 前を見続けている闇命君がどのような顔をしているのかわからない。けど、闇命君から放たれた言葉、口調からは本気度がわかる。

 ――――ふふっ、そうだね。確かに、そうだ。あの、人を小馬鹿にするばかりの闇命君が信じると言ってくれたんだから、俺はできる。よしっ!

『黙れ、さっさと行け』
「はい」

 くそ、照れんじゃねぇよこのやろう。

 百目を呼び、俺達は前線離脱。俺達が行く道は、七人ミサキと雷火が作り出してくれた。
 最後に闇命君を見ると、力強く頷いて俺を見送ってくれる。

 情けない気持ちと、心強い気持ちで胸が満たされた。

 闇命君は、俺より結構な年下なのに頭脳明細で、法力も自由に扱えて。状況把握も早く、すぐに理解して次の行動に移すことが可能。

 子供だからと、周りから蔑まれ邪険にされ。でも、力だけは本物だから、それだけを利用されてきた。

 それに少しでも抗おうとする闇命君は、子供とは思えない言葉や行動を起こすけど、心はまだ子供なんだ。

 そんな子供の闇命君の言葉で、俺の心はここまで安心できた、不安がなくなった。

 自分は役立たずと言っていた闇命君だったけど、決してそんなことはない。
 近くにいるだけで安心して、闇命君の本気の言葉は周りの人を動かす。

 闇命君こそが、上に立つ人としてふさわしい、俺はそう思う。

 この事件が終わったら、どうなるかわからない。でも、大丈夫。闇命君がいるなら、大丈夫。絶対に。

「…………まずは、過去の因縁を解決しないとだめだよね」

 隣を走る百目を見ると、少し汗を流しているけど、体力的にはまだ大丈夫そう。

 よし、行くぞ。俺のできる全力をやってやる!

 ☆

 …………まだ僕との繋がりは切れていないから優夏の心中は筒抜けなんだけど、絶対に気づいてないよね。

 ほんと、単純で馬鹿なんだから。

『僕一人でなんて、無理に決まっているのに』

 優夏がいたから僕は、今ここに立てているんだ、優夏が僕達を動かしたんだ。それを理解してほしいな。

『まぁ、僕からは絶対に言わないけどね。自分で気づけ、ばーか』
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