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最終決戦

めんどくさい

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「…………」
『後ろを気にしているね。心配なのは無理もないけど、今更引き返すなんてことはしないようね?』
「しないというか、出来ないよね、闇命君」
『そうだね、今で半分かな』
「百目と雷火、七人ミサキが頑張ってくれているからね…………」

 今俺達は、七人ミサキ、雷火、百目と一緒に大量に襲い掛かってくる狩衣を着ている陰陽師達を相手にしていた。

 なんとか百人くらいは倒したかな。地面には人の屍が沢山。死んでいないとは思うけど……。

 起き上がってきたらそれはそれでめんどくさいな。せっかく減らしたのに、また起き上がってくるなんて御免だ。
 それに、これから蘆屋道満との戦闘が待っている可能性がある、体力とかは温存しておきたい。あと、法力も。


 ――――――――シャラン シャラン


 陰陽師達は、お札や錫杖を持っている。錫杖の音が辺りに響き、耳が痛い。

『はぁ、はぁ……』

 あ、百目の体力が限界みたいだ。肩で息をしている、汗も酷い。

「あっ…………」

 百目だけじゃない。七人ミサキも肩で息をしていて、汗を手で拭っている。
 雷火は、正直疲れているのかわからない。

 式神達に無理をさせ過ぎても駄目だ。法力も無限ではない、一気に倒せる何かがあれば……。

『考え事に集中しすぎるな!!』
「っ!??」

 くそ、周りにいる陰陽師達がまたしても一斉に襲ってきた。

 百目達が何とか刀や錫杖で気絶させたり、雷火は相手の視界を晦ませたり、突進したりと。式神達は頑張ってくれている。

 それでも零れて俺の所まで来てしまった陰陽師は、俺が壁になり、死角から闇命君が懐に入り一撃食らわせ気絶をさせた。

 子供の力なのになぜ気絶させることが出来るのか聞くと、急所を一発で狙っているからだと言う。さすが天才様という事で、俺は自分を納得させた。

『一気に倒せる手はないか……。何かいい式神、法術はなかったかな……』

 闇命君が眉間に皺を寄せて考えてしまった。

 俺も考えるけど、なにも思いつかない。式神は今の三体が一番のベストだろうし、式神以外の法術を使えるかもわからない。

 ただ、一つ。まだ完全に扱えるようになったわけじゃない妙技が残ってはいるけど、あまり使いたくは無い。

 闇命君が近くにいるから、二人で負担すれば妙技も使えるとは思うけど、使ったところで意味があるかなんてわからない。
 百目がどのように動くかは分かったけど、他の式神は予想すら出来ない。

『でも、それしかないかもしれないよ』
「い、いきなり俺の思考に入り込まないでよ闇命君。今回のは集中していた分、さすがに驚いたよ…………」
『そんなこと知らない、それより、妙技、やってみるの? やらないの? どっち?』

 うっ、闇命君がそう聞いて来るという事は、もう妙技しかないじゃん。
 やるしかないじゃん、こんちくしょう……。

「…………危険を回避してこの戦闘、潜り抜けられない。覚悟を決めたよ闇命君、俺はやってやっ――………」
『やると決めたのなら前置きとかはどうでもいい。早く始めようか。百目達の体力も気になるし』
「…………はい」

 俺の覚悟を簡単に粉砕した闇命君。このやろう、今回の戦闘が終わったら覚えてろよぉぉぉおお!!!

『早く、集中して、どうせ君は僕に勝てるわけがないから』
「わかったってば!!」

 勝てないという事もわかってるならあえて口には出さないでよ!

 これ以上文句を言っても無駄に時間が過ぎるだけ、早く妙技を出そう。

 手に持っているお札三枚、これを俺が武器と認識して、闇命君の一技之長を纏わせる。

 闇命君が法力を操り、俺が精神力を操る。隣にいる闇命君に合図を送ると、頷いてくれた。準備は出来たみたい。

 俺がお札を構え、闇命君は胸元で両手を組み祈る形を作る。
 息を合わせ、法力の制御を完全に闇命君に移す。

 お札に送る法力が一瞬、揺らめいた。でも、すぐに整い揺れが収まる。

 闇命君が法力を操れるようになった。次に、俺は精神力の操作に移る。

 お札に一技之長を出すための精神力を集める。一気に出し過ぎると式神達に影響が出る可能性があるし、闇命君と息を合わせなければならない。

 送り過ぎず、ゆっくりと纏わせるイメージで……。

 あ、指先に二つの力が集まり出した。この感覚、前に修行した感覚と同じだ。このまま、油断せず纏わせ続けるんだ。

『――――よし、妙技は成功だ。だが、油断はするな、集中し続けろ』

 闇命君の声で式神の方に顔を向けると、確かに成功してるのがわかった。

 百目の刀や七人ミサキの錫杖の周りに、黒い霧がまとわりついている。あれは、俺が刀に一技之長を纏わせた時とお同じだ。

 雷火の方は、紫色の雷を纏って体が、黒く染まっていた。

「よし、成功した。このまま、油断せず周りの陰陽師達を全員倒せ!!」
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