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最終決戦
慣れていないだけでは
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「なぜ、あそこまでの力を出すことが出来る? 法力を扱えるようになるだけで、普通は数年かかる。それを今、この土壇場で出来るようになるなんて。しかも、式神をあそこまで強くなど、ありえない…………」
驚きで目を見開き、氷柱女房を見続ける。夏楓は「はは……」とから笑いを零し紅音達を見た。
「確かに、紅音には力があり、今までもやろうと思ったことはできていましたが、まさかここまでの実力があるなんて。さすが、すごいです、紅音」
夏楓が言うように、紅音は頭を使うことは苦手だが、感覚で覚えることだったら難なくできていた。
馬車を動かすのも琴平に少し教えられればすぐに乗ることができており、巫女の仕事も口頭で教えられると何一つ覚えることができなかったが、実際にやると体が覚えすぐに実践できていた。
夏楓はそれを思い出し、期待のまなざしを向けていた。
「これはまずい………。絡新婦! 早く夏楓ちゃんを締め上げろ!」
汗を流し、必死な形相で絡新婦に指示を出す。すぐに締め上げようとしたが、動き出しは氷柱女房の方が早く、氷柱が夏楓を締め上げていた糸を切った。
「『なっ!』」
二人は驚きの声を上げ、一瞬思考が停止。その隙を突き、氷柱女房がまず式神である絡新婦を狙う。
大きな氷柱を彼女に降らせた。
絡新婦と静稀は咄嗟に後ろに下がってしまったことにより、夏楓から距離が離れてしまった。
「しまったっ――くそ!!」
再度夏楓に手を伸ばそうとしたが、すぐに氷柱が降り注ぎ行動が封じられる。それは絡新婦も同じく、糸で夏楓を縛ろうとするが、逃げるだけで精一杯。
その間も紅音は法力をお札に注ぎ込み、集中していた。
夏楓は氷柱女房へと走り、戦闘の邪魔をしないように移動。集中している紅音を横目で見た。
「あの、氷柱女房。紅音の法力の調整などは大丈夫なのでしょうか?」
『問題ないですよ。逆に、体が思うように動いて、楽しさまであります』
笑みを浮かべ氷柱を操作し、二人を追い込めている氷柱女房。その顔は、少々狂気的なものを感じ、夏楓は思わず唖然。眉間を掴み、頭を悩ませた。
「琴平さん、もしかして裏の顔を隠していたのでしょうか。式神は主に似るみたいですし……」
頭を悩ませていると、追い込まれている静稀は舌打ちをこぼし、怒りの表情を浮かべ地面を強く踏みしめた。
「俺を怒らせない方がいい。もう、遅いけどね」
氷柱が降り注ぐ中、その場で立ち止まってしまうと簡単に狙われてしまう。
案の定、氷柱女房は立ち止った静稀に向けて複数の氷柱を向け、放った。
「結界」
冷静に結界を張った静稀、放たれた氷柱を簡単にはじいてしまった。
地面に氷の破片が転がる中、本に手をかざし法力を注ぎ込む。
「ここまで手間取らせてくれるなんて思わなかったよ、事前準備をしっかりするべきだった」
本に法力を注ぎ続けていると、光が徐々に増して行く。同時に、絡新婦にも変化が現れた。
先ほどから逃げまどっていた絡新婦は、いきなり量が多くなった法力を注がれてしまい苦しげに体をよじり足を止めてしまった。
上から降り注ぐ氷柱は、静稀が自身に張った結界と同じものを張り守っている。
『何を始めるのでしょうか』
「警戒は怠らない方がよさそうですね。絡新婦ができることは糸を吐き、相手を縛り付けることや、美しい見た目を武器に男性を誘惑し虜にしたりなど。これが主な絡新婦の性質だったはず。他に――音?」
夏楓はかすかに波の音を耳にし、周りを見回した。だが、その音は氷柱女房には聞こえていないようで、隣にいる夏楓を横目で見ていた。
『夏楓様、私は他の式神と比べると自我があります。ですが、それでも指示がなければ思うように動くことはできません。簡単な戦術しか考えられませんので、もしよろしければ夏楓様に指示を仰ぎたいと思います。紅音様は法力を送ってくださっておりますので、これ以上負担を与えてしまうのはと思い』
「わ、わかったわ。出来る限りやってみます。ですが、自信はありません」
『どのような指示でも、私は主である貴方に従います』
氷柱女房の言葉に、夏楓は頷いた。その時、なぜか闇命の体で戸惑いながらも式神に指示を出していた優夏を思いだす。
叫びながらも指示を出し、闇命の言葉の攻撃に耐えながらも法術を扱っていた彼の姿に、夏楓は勇気がもらえ、自然と笑みまで浮かんだ。
「この世界に慣れていない優夏さんでも、今まで頑張ってくださっていたのです。私も、慣れていないという理由で、逃げるわけにはいきません。必ず、適切な指示を出し、この勝負、勝たせていただきます!」
驚きで目を見開き、氷柱女房を見続ける。夏楓は「はは……」とから笑いを零し紅音達を見た。
「確かに、紅音には力があり、今までもやろうと思ったことはできていましたが、まさかここまでの実力があるなんて。さすが、すごいです、紅音」
夏楓が言うように、紅音は頭を使うことは苦手だが、感覚で覚えることだったら難なくできていた。
馬車を動かすのも琴平に少し教えられればすぐに乗ることができており、巫女の仕事も口頭で教えられると何一つ覚えることができなかったが、実際にやると体が覚えすぐに実践できていた。
夏楓はそれを思い出し、期待のまなざしを向けていた。
「これはまずい………。絡新婦! 早く夏楓ちゃんを締め上げろ!」
汗を流し、必死な形相で絡新婦に指示を出す。すぐに締め上げようとしたが、動き出しは氷柱女房の方が早く、氷柱が夏楓を締め上げていた糸を切った。
「『なっ!』」
二人は驚きの声を上げ、一瞬思考が停止。その隙を突き、氷柱女房がまず式神である絡新婦を狙う。
大きな氷柱を彼女に降らせた。
絡新婦と静稀は咄嗟に後ろに下がってしまったことにより、夏楓から距離が離れてしまった。
「しまったっ――くそ!!」
再度夏楓に手を伸ばそうとしたが、すぐに氷柱が降り注ぎ行動が封じられる。それは絡新婦も同じく、糸で夏楓を縛ろうとするが、逃げるだけで精一杯。
その間も紅音は法力をお札に注ぎ込み、集中していた。
夏楓は氷柱女房へと走り、戦闘の邪魔をしないように移動。集中している紅音を横目で見た。
「あの、氷柱女房。紅音の法力の調整などは大丈夫なのでしょうか?」
『問題ないですよ。逆に、体が思うように動いて、楽しさまであります』
笑みを浮かべ氷柱を操作し、二人を追い込めている氷柱女房。その顔は、少々狂気的なものを感じ、夏楓は思わず唖然。眉間を掴み、頭を悩ませた。
「琴平さん、もしかして裏の顔を隠していたのでしょうか。式神は主に似るみたいですし……」
頭を悩ませていると、追い込まれている静稀は舌打ちをこぼし、怒りの表情を浮かべ地面を強く踏みしめた。
「俺を怒らせない方がいい。もう、遅いけどね」
氷柱が降り注ぐ中、その場で立ち止まってしまうと簡単に狙われてしまう。
案の定、氷柱女房は立ち止った静稀に向けて複数の氷柱を向け、放った。
「結界」
冷静に結界を張った静稀、放たれた氷柱を簡単にはじいてしまった。
地面に氷の破片が転がる中、本に手をかざし法力を注ぎ込む。
「ここまで手間取らせてくれるなんて思わなかったよ、事前準備をしっかりするべきだった」
本に法力を注ぎ続けていると、光が徐々に増して行く。同時に、絡新婦にも変化が現れた。
先ほどから逃げまどっていた絡新婦は、いきなり量が多くなった法力を注がれてしまい苦しげに体をよじり足を止めてしまった。
上から降り注ぐ氷柱は、静稀が自身に張った結界と同じものを張り守っている。
『何を始めるのでしょうか』
「警戒は怠らない方がよさそうですね。絡新婦ができることは糸を吐き、相手を縛り付けることや、美しい見た目を武器に男性を誘惑し虜にしたりなど。これが主な絡新婦の性質だったはず。他に――音?」
夏楓はかすかに波の音を耳にし、周りを見回した。だが、その音は氷柱女房には聞こえていないようで、隣にいる夏楓を横目で見ていた。
『夏楓様、私は他の式神と比べると自我があります。ですが、それでも指示がなければ思うように動くことはできません。簡単な戦術しか考えられませんので、もしよろしければ夏楓様に指示を仰ぎたいと思います。紅音様は法力を送ってくださっておりますので、これ以上負担を与えてしまうのはと思い』
「わ、わかったわ。出来る限りやってみます。ですが、自信はありません」
『どのような指示でも、私は主である貴方に従います』
氷柱女房の言葉に、夏楓は頷いた。その時、なぜか闇命の体で戸惑いながらも式神に指示を出していた優夏を思いだす。
叫びながらも指示を出し、闇命の言葉の攻撃に耐えながらも法術を扱っていた彼の姿に、夏楓は勇気がもらえ、自然と笑みまで浮かんだ。
「この世界に慣れていない優夏さんでも、今まで頑張ってくださっていたのです。私も、慣れていないという理由で、逃げるわけにはいきません。必ず、適切な指示を出し、この勝負、勝たせていただきます!」
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