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最終決戦
預かった式神
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「な、何が?」
本がどんどん氷はじめ、静稀は困惑。夏楓からの攻撃かと思い向くが、今も紅音によって封じ込められている。式神を出すことなど不可能。
「まずいな、仕方がない」
パタン
静樹が本を閉じると、凍り始めていた本が元に戻る。同時に、紅音の目にも光が戻り、すぐに夏楓の頭から足を離し距離を取った。
「夏楓……ワタシ…………」
何を言えばいいのかわからず言葉を探すが、それより先に夏楓が体を起こし、額から流れている血を拭い彼女を見た。
「やっと、戻ってくださったのですね。良かったです」
「…………す、まない」
「問題ありませんよ。また、琴平さんに助けられましたね」
「あぁ」
二人の会話がわからず、静稀は眉間に皺を寄せる。その時、背後から気配を感じ振り向いた。
そこには、一人の女性が空中に漂い冷たい息を吐き出している姿。
ふぅっと吐いている白い息は、静稀の本を凍らせ始めた。
「この妖は、確か 氷柱女房。でも、確か氷柱女房使いは死んだはず……」
「その情報は入っているみたいだな。だが、無意味。ワタシ達の仲間をなめるな」
困惑しながら紅音を見ると、手には一枚のお札が握られていた。
そのお札は微かに光っている。
「式神は持っていないと、聞いていたんだけど」
「ワタシ専用の式神は持っていない。氷柱女房はワタシ専用の式神ではない、ワタシは嘘を付いてはいないぞ」
鼻を鳴らし、夏楓の傷を確かめる。地面に思いっきりおでこをぶつけてしまったため、瞼も一緒に切れてしまっていた。
血が流れており、右目を開ける事が出来ない。
紅音が手をかざし傷を治しているが、それを黙って見ているほど、静稀は優しい人物では無い。
本を急いで開き、右手をかざし技を発動させようとする。
「さすがに予想外だったけど、まぁいいかな。こっちも少しだけ本気を――……」
回復させている二人の邪魔をしようとしたが、氷柱女房が白い息を噴き出し本を凍らせる。それを瞬時に察し、後ろに跳び避けた。
距離を取った彼に、氷柱女房は自身の周りに氷柱を作り出した。
勝手に動く式神に、静稀は眉を顰めた。
「ここまで式神が自身の意思で動くなんて、ありえるのか? …………いや、難しく考えるより、女性が増えたという考えに切り替えようか」
本のページを一枚引きちぎり、氷柱女房に向けて放った。煙を出し、赤い炎へと変わる。
勢いよく放たれた炎の玉は氷柱女房へ、吸い込まれるように向かった。
向ってきた炎を氷柱女房が右手を前に出し、冷気で消そうとする。だが、炎の勢いが強すぎて冷気だけでは消す事が出来ない。
すぐに消せないと察し、体を捻り避けた。
炎は氷柱女房を通過、壁にぶつかり崩してしまった。
避けた氷柱女房は作り出した氷柱を操作し、静稀に放つ。すぐに後ろへ跳び、すべての氷柱を避けた。
そんな彼の視線は、氷柱ではなく紅音達に向けられている。怪我を治し続けている彼女達を見て、目を細めた。
「あのお札かな」
紅音は片手にお札を握っている。それが氷柱女房のお札だと察し、目線を氷柱女房に戻した。
「綺麗なお姉さんだから、君を攻撃したくはないんだよねぇ。だから、少しそこで固まっていてくれると助かるなぁ」
『私は貴方を止めます。主の指示なので』
「それは無理だよ」
何を思ったのか、静稀は瞬きした一瞬で氷柱女房の目の前に移動。すぐさま距離を取ろうとしたが、静稀はそれより先に右手を伸ばし氷柱女房の手首を掴んだ。
爪でカリッと、少しだけ彼女の肌に傷をつけた。
傷から少しだけ法力が出てしまっている。
氷柱女房は、すぐさま手を振り払い距離を取った。
傷を一撫ですると、小さな傷なんて一瞬で消える。何事もなかったかのように、静稀に藍色の瞳を向けた。
『何をしたのかわかりませんが、私は主を守ります』
「守れたらいいね」
にこっと笑みを向けると、静稀は紅音達に歩き出す。もちろん氷柱女房は止めようと右手を前に出し氷柱を操作するが、なぜか途中で動きを止めた。
「っ、氷柱女房!?」
紅音が叫ぶが、目を開き動けない氷柱女房は、口だけで伝えた。
き ず だ め
口の動きだけで何を言いたいのか察した紅音は、自身の足を見る。今は血が止まり、痛みも気にならない程度になっていた。
「傷で、人を操る事が出来るのか?」
「ご名答、正解だよ。いい子だねぇ」
紅音の真後ろに静稀は移動していた。
首に手を回され、身動きを封じられた。
「おっと、今は動かない方がいいと思うよ? この子が苦しむ姿を見るのは嫌だろう? それと、また大事な仲間に傷つけられたいかな?」
紅音の首を掴んでいる手の爪を立て、カリッと傷を付けられてしまった。これで、いつでも紅音を先ほどのように操る事が出来るようになってしまい、夏楓は迂闊に動けない。
「さぁて、ここからは、どうやって楽しもうか」
紅音の耳元で、囁くように言い、下唇を舐め、楽し気に目を細めた。
本がどんどん氷はじめ、静稀は困惑。夏楓からの攻撃かと思い向くが、今も紅音によって封じ込められている。式神を出すことなど不可能。
「まずいな、仕方がない」
パタン
静樹が本を閉じると、凍り始めていた本が元に戻る。同時に、紅音の目にも光が戻り、すぐに夏楓の頭から足を離し距離を取った。
「夏楓……ワタシ…………」
何を言えばいいのかわからず言葉を探すが、それより先に夏楓が体を起こし、額から流れている血を拭い彼女を見た。
「やっと、戻ってくださったのですね。良かったです」
「…………す、まない」
「問題ありませんよ。また、琴平さんに助けられましたね」
「あぁ」
二人の会話がわからず、静稀は眉間に皺を寄せる。その時、背後から気配を感じ振り向いた。
そこには、一人の女性が空中に漂い冷たい息を吐き出している姿。
ふぅっと吐いている白い息は、静稀の本を凍らせ始めた。
「この妖は、確か 氷柱女房。でも、確か氷柱女房使いは死んだはず……」
「その情報は入っているみたいだな。だが、無意味。ワタシ達の仲間をなめるな」
困惑しながら紅音を見ると、手には一枚のお札が握られていた。
そのお札は微かに光っている。
「式神は持っていないと、聞いていたんだけど」
「ワタシ専用の式神は持っていない。氷柱女房はワタシ専用の式神ではない、ワタシは嘘を付いてはいないぞ」
鼻を鳴らし、夏楓の傷を確かめる。地面に思いっきりおでこをぶつけてしまったため、瞼も一緒に切れてしまっていた。
血が流れており、右目を開ける事が出来ない。
紅音が手をかざし傷を治しているが、それを黙って見ているほど、静稀は優しい人物では無い。
本を急いで開き、右手をかざし技を発動させようとする。
「さすがに予想外だったけど、まぁいいかな。こっちも少しだけ本気を――……」
回復させている二人の邪魔をしようとしたが、氷柱女房が白い息を噴き出し本を凍らせる。それを瞬時に察し、後ろに跳び避けた。
距離を取った彼に、氷柱女房は自身の周りに氷柱を作り出した。
勝手に動く式神に、静稀は眉を顰めた。
「ここまで式神が自身の意思で動くなんて、ありえるのか? …………いや、難しく考えるより、女性が増えたという考えに切り替えようか」
本のページを一枚引きちぎり、氷柱女房に向けて放った。煙を出し、赤い炎へと変わる。
勢いよく放たれた炎の玉は氷柱女房へ、吸い込まれるように向かった。
向ってきた炎を氷柱女房が右手を前に出し、冷気で消そうとする。だが、炎の勢いが強すぎて冷気だけでは消す事が出来ない。
すぐに消せないと察し、体を捻り避けた。
炎は氷柱女房を通過、壁にぶつかり崩してしまった。
避けた氷柱女房は作り出した氷柱を操作し、静稀に放つ。すぐに後ろへ跳び、すべての氷柱を避けた。
そんな彼の視線は、氷柱ではなく紅音達に向けられている。怪我を治し続けている彼女達を見て、目を細めた。
「あのお札かな」
紅音は片手にお札を握っている。それが氷柱女房のお札だと察し、目線を氷柱女房に戻した。
「綺麗なお姉さんだから、君を攻撃したくはないんだよねぇ。だから、少しそこで固まっていてくれると助かるなぁ」
『私は貴方を止めます。主の指示なので』
「それは無理だよ」
何を思ったのか、静稀は瞬きした一瞬で氷柱女房の目の前に移動。すぐさま距離を取ろうとしたが、静稀はそれより先に右手を伸ばし氷柱女房の手首を掴んだ。
爪でカリッと、少しだけ彼女の肌に傷をつけた。
傷から少しだけ法力が出てしまっている。
氷柱女房は、すぐさま手を振り払い距離を取った。
傷を一撫ですると、小さな傷なんて一瞬で消える。何事もなかったかのように、静稀に藍色の瞳を向けた。
『何をしたのかわかりませんが、私は主を守ります』
「守れたらいいね」
にこっと笑みを向けると、静稀は紅音達に歩き出す。もちろん氷柱女房は止めようと右手を前に出し氷柱を操作するが、なぜか途中で動きを止めた。
「っ、氷柱女房!?」
紅音が叫ぶが、目を開き動けない氷柱女房は、口だけで伝えた。
き ず だ め
口の動きだけで何を言いたいのか察した紅音は、自身の足を見る。今は血が止まり、痛みも気にならない程度になっていた。
「傷で、人を操る事が出来るのか?」
「ご名答、正解だよ。いい子だねぇ」
紅音の真後ろに静稀は移動していた。
首に手を回され、身動きを封じられた。
「おっと、今は動かない方がいいと思うよ? この子が苦しむ姿を見るのは嫌だろう? それと、また大事な仲間に傷つけられたいかな?」
紅音の首を掴んでいる手の爪を立て、カリッと傷を付けられてしまった。これで、いつでも紅音を先ほどのように操る事が出来るようになってしまい、夏楓は迂闊に動けない。
「さぁて、ここからは、どうやって楽しもうか」
紅音の耳元で、囁くように言い、下唇を舐め、楽し気に目を細めた。
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