憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
上 下
220 / 246
最終決戦

土蜘蛛

しおりを挟む
「き、きもちがわるいぃぃぃいいいいいいいいいい!!!!!!」

 キモイキモイキモイ!!!! 虫事態苦手なのに、まさかの蜘蛛。しかも、タランチュラ!! 見るだけでマジで鳥肌が立つし、触りたくないし近寄りたくない!! 
 口にある歯? 牙? が左右に動いているのがマジでキモイ動かすな。

「ひっ!? 糸を出してきたぁぁぁぁぁぁぁあああ」
『さっき出してたんだから当然でしょ』

 冷静に言ってくる闇命君を無視して、俺に向かって放たれた糸を回避。地面にべちゃっと落ちる糸が、白い煙を上げて溶けた。

 あれって、当たったらもしかして解かされる感じ? 酸が含まれてるの?

『大丈夫ですか主!!』
「俺は大丈夫だよ! 冷菓さんと月卯歌さんは大丈夫ですか!?」

 あ、良かった。月卯歌さんが冷菓さんを抱えて避けているみたい。夏楓のことは、紅音がしっかりと守っている。でも、今の紅音には武器などがない。頼ってばかりではだめか。

 うぅ、やるしかないかぁ。

「百目、大丈夫そう?」
『問題ありません。ですが、土蜘蛛に集中してもいられないようですよ』
「え、もしかして、何かが近づいて来ているの?」
『はい。二人、近づいて来ております。一人は少女、もう一人は男性かと』

 男性って、誰だ? 少女は蘆屋藍華で間違いないだろう。
 もう一人の男性は蘆屋家の陰陽師か? それか、陰陽助かもしれない。

 あ、土蜘蛛の術者の可能性もあるのか。

『土蜘蛛は倒すのにてこずるかと思います。なので、術者を倒した方が早いかと。手分けした方がいいと思いますよ。土蜘蛛を相手にする者と、術者を倒す者』
「そんなに強いのか」

 確かに、気配は普通ではない。今まで戦ったどの式神よりも強いのは明らか。
 体に突き刺さるこの感覚、寒気、圧。百目の言う通り簡単には倒せそうにない。でも、別れてしまったらそれこそ危ないのではないか?

「闇命さん! ここは我々に任せてください! 土蜘蛛でしたら問題ありません!」

 っ、冷菓さんの声? 

「わかった!! 俺は術者を見つけ次第倒してくる!」
「お任せします!!」

 紅音達と目を合わせ、ここは完全に氷鬼家のお二人に任せる事にした。
 不安はないし、大丈夫だと確信できている。

 その理由は、冷菓さんを守るように立っている月卯歌さんの雰囲気が、今までとはだいぶ異なっていたから。

 目を見ただけでわかるほど殺気だっており、土蜘蛛から放たれる気配より強い。
 体に突き刺さるような殺気、普通の人では到底出せる訳もない圧。

 あと、単純に俺がここから居なくなりたかった。だって、さっきの月卯歌さんの表情、マジで怖かった。

『あれは、近づきたくないね。さすがの僕も、あれは敵に回したくはない』
「だよね、俺だけじゃないよね、あれはマジで怖いよね?」

 戦闘を本気で楽しんでいるような、狂気的な笑みを浮かべていた月卯歌さん。俺は月卯歌さんを敵に回す事は絶対にしないと心に誓った。

 ☆

 土蜘蛛を目の前に、月卯歌は口元に笑みを浮かべ立っていた。
 丸い眼鏡の奥から放たれているのは、相手を殺す事を心から楽しんでいるような嬉々たる視線。

 楽しい、面白い、嬉しい。

 そのような正の感情しか感じる事の出来ない瞳に、後ろにいる冷菓はため息を吐いた。

「始まった……。良かったですよ、いち早く安倍家の者達をここから離れさせることが出来て。闇命さんの式神さんが何かを察して促してくれたようにも見えましたね、本当に助かりました」

 頭を抱えて呆れるように大きなため息を吐き出す。だが、すぐに気を寄り直し戦闘に集中。目の前に立つ月卯歌に声をかけた。

「月卯歌、どのようにやる?」
「いつものように黙ってみてろ。俺の雄姿をなぁ!」

 言いながら懐から一枚のお札を散り出した。それを乱暴に握りつぶす。すると、お札からは冷気が現れ始め、月卯歌の右手を包み込んだ。

「つまり、大暴れをするから、後始末のために力は温存させとけ。そういう事か、了解です」

 肩を落とし、巻き込まれないように後ろに冷菓は下がった。
 腕を組み、今後起きる事態を想像する。

「月卯歌、今回は無駄な怪我をしないで。この後も戦闘は残っているのだから」
「安心しろや冷菓、無駄な怪我はしねぇよ。この後、もしかすっと、蘆屋道満と戦えるかもしれねぇからなぁ。ここで動けなくなるなんてへまはしねぇよ」
「それならいいけど…………」

 ほっと溜息をつき、戦闘を見守る事にした冷菓。

「んじゃ、準備は整った。やろうじゃねぇか、土蜘蛛さんよぉ!!」

 狂気的な笑顔を浮かべた月卯歌の右手には、氷の鋭い爪が出来ていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...