憑依転生した先はクソ生意気な安倍晴明の子孫

桜桃-サクランボ-

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最終決戦

もう一人の天才

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『また僕に触れようとしたら、今度は腹部だけの痛みだけでは済まないからね』
「うぐ、はい……。力が、凄いですね、子供なのに」

 今の闇命君、おそらくだけど、火事場の馬鹿力ってやつなんだろうなぁ。
 闇命君には筋力とかないし、物理は弱いはず。それなのに、あの一瞬で相手の懐に入り込みぶん殴るって。闇命君、さすが天才様、流石なのよ。

『話は戻るけど。さっきの反応を見るに、二人は知らなかったみたいだね。蘆屋道満がこの世に蘇り、陰陽寮を巻き込んだ大きな事態を起こそうとしている事』
「それは、確かに知らなかったですね……」
『少しは聞いていたんじゃないの? 冷菓に話したはずだけど。情報共有出来てないの?』
「僕は名ばかりの陰陽頭ですので。そのような後方の仕事は冷菓がすべてやっているんですよ。だから、僕には情報が来ない。そもそも、興味の無い事は忘れてしまうんですよねぇ。それもわかっているから、冷菓は全て自分で何とかしようとするんですよ。さすがに今回の件は話してほしかったのですが」
『信用されていないんだね』
「昔からなので」

 普通に受け入れてしまったよ、良いのかい。

『あ、そうだ。なら、手紙も君には届いていない可能性があるね。冷菓は今どこ?』
「ん? 手紙ですか? 手紙は僕が管理しているから、冷菓は知らないですよ?」
「え?」

 ん? え、そうなの? それなら、僕達の手紙はまだ届いていないという事か? 時間的には届いていてもおかしくないし。

『応援要請の手紙、届いてない?』
「はい、最近は一通も届いておりませんよ?」

 思わず闇命君と目を合わせてしまった。でも、お互い困惑するだけで何も答えは出てこない。

『もしかして、魕《おに》か?』
「あ、確かに。手紙を出してからその日に襲いに来たもんね。こっちに向かっている途中で見つけて、応援させないように琴葉さんの式神ごと切り裂いた。そんな感じかな」
『だろうね。という事は、漆家にも届いていない可能性があるな。直接行きたくても、今からでは時間がない。さっきのは正直もうしたくないし…………』
「うん、俺も」

 闇命君の一技之長はリスクがある。今回は紅音や夏楓の命が危ないかもしれなかったからリスクを考えても実行したけど、ただ応援要請をするためには使いたくはない。

 あの、真っ暗な闇の中に取り残される可能性があるなんて。さすがに考えただけで怖いよ……。

「漆家に応援要請を出せばいいのですね。どこに向かわせる形でしょうか?」
「っ、出来れば水仙家近くに」
「了解いたしました。今すぐに要請しましょう」
「え、今すぐ?」

 言うと、月卯歌さんが一枚の式神を取り出した? もしかして、また手紙を書いて出そうと考えているのかな。でも、それだと時間がないような気がするんだけど。

「先ほど、貴方達がここに来た時、どのような方法を使いましたか?」
「闇命君の身体に巡る一技之長の属性、闇を纏い飛んできました。でも、俺はまだこれを自分に使い続けるのは怖いので」

 情けない話だけど、マジで怖いんだもん。最近一技之長を使い始めて修行して来たけど、それでも途中で集中力が切れたり取り残されたりとかを考えるとさぁ。

「闇が属性なのですね。でしたら、僕も同じような事が出来そうです。完全に一技之長だけですか? 妙技でしょうか?」
「一技之長だけですよ」
「なるほど。それなら出来そうですね」

 月卯歌さんが自身の髪を一本抜き取ると息を吹きかけた。すると、髪だったものは、一瞬にして手紙に変換。え、すご。そんな事が出来るの? 筆で使えなくてもいいじゃん。

「この中には応援要請内容が書かれています。僕が考えた物ですが。これを、貴方達がこちらに来たような技を使用し漆家に送ります」
『そう簡単に出来るの?』
「出来るかと思いますよ。僕、日常生活や性格には難ありですが、陰陽術や一技之長に関しては自信があります。僕、小さい頃から周りからと言われていたので」

 天才…………か。その言葉、嫌というほど聞いて来たな。
 闇命君が天才と言われてて、才能だけを利用した安倍家。この人も、闇命君と同じ境遇だったのだろうか。

「出ておいで、チョウ」

 一枚のお札を取り出すと、形が変化、白い小鳥になった。それにさっき作り出した手紙を足に結び、飛ばせる。
 小鳥は嬉しそうに天井近くをぱたぱたと羽ばたいていた。

「次に一技之長ですね。妙技を扱う感じでしょうか」
「え、扱えるんですか?」
「妙技は扱えますよ。成人している陰陽頭でしたら誰でも扱えるはずです。あ、水分は使えなかったかな、まぁいいか。あのお方はどうでもいいですねぇ」

 …………なんか、水分さんの扱いが色々残念な気がするのは俺の気のせいだろうか。あのような性格をしている人は怖い印象さえなくなれば関わりやすく話しやすいから、どうしてもこのような扱いになってしまうんだろうなぁ。

「集中しますね、少しお待ちください」

 月卯歌さんが集中するため目を閉じ、右の人差し指と中指を立てた。指先に法力と精神力、どちらも集めさせているみたい。

 何も言わず黙って見ていると、天井を羽ばたいている小鳥に変化が。徐々に眩しい光が小鳥から放たれ始める。な、なんだこれ。

 そういえば、月卯歌さんの一技之長の属性は何なんだろうか。先に聞いておけばよかった。

「うっ、眩しい!!!」

 小鳥から放たれる光がこの場にいる全員を包み込む。目を開けられない!!

 ・
 ・
 ・
 ・

「ん、光が、収まった?」

 瞼を閉じていても遮る事が出来ないほど眩しかった光が数秒後、徐々に落ち着き始めた。

「あ、小鳥がいない?」

 天井にいたはずの小鳥が居なくなっている。本当に成功させたの? 嘘だろ。俺、細かな説明とかしていないのに。
 いや、細かな説明を求められても、あれは偶然に出来た特産物だから何も言えないけどさ。

「これで、手紙は今頃漆家に届いているでしょう。光属性である一技之長でもやろうと思えばできるもんですね」

 ……………………いや、出来ねぇよ!!!!!
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