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三人修行
絶対に負けない
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僕の言葉を無視して蝋燭を見ていた琴葉が急に何を思ったのか、蝋燭を真っ二つに割った……わっ、わ? 割った!?
『…………怒りをぶつけたいのは自由な陰陽助に振り回されている僕なんだけど』
「俺は別に怒ってないぞ。ただ、折っただけ」
『意味は?』
「このくらいの長さならお前でも持てるかと思ったんだが、どうだ?」
渡してきたのは、真っ二つになっている蝋燭。火は僕が落した時に消えているから問題はないみたいだけど、まさか折って寸法調整するなんて。いいの?
……持ってみたけど、意外とちょうどいい。なんか、腹が立つ。
「それじゃん、やってみて」
『わかった』
もう無理やりやらされるなんて御免だし、それなら自分でやる。
まだ法力は安定していないけど、やろうと思えばできるはず。だって、僕なんだから。法力さえ使えるようになったら、僕はもう前みたいに何もできない役立たずではない。
「よし、火をつけるからな」
『わかった』
琴葉が火をつけた、赤く燃える炎。このまま消さないようにすればいいんだよね。そんなのかんたっ――……
――――――シュッ
『っ、え?』
きえ、た?
『これ、なんできえっ――ちょっと』
隣で琴葉がお腹を抱えて笑っているんだけど、なに。その後ろでは水分が腕を組み”当たり前だろ”というように頷いている。二人の反応が本当にむかつく、むかつく!!!
『…………』
「いったい!!! え、なんで?」
『そういえば、蝋燭を持てるようになったから人のことも蹴ることもできるよねと思っただけ。今回、ちょうどよく試せる人がいたから試しただけ、何か文句ある?』
「……イーエ」
『そう、それなら僕を睨まないでくれる? 不愉快』
「酷いなぁ」
琴葉の脛を試しに蹴ってあげた。もちろん、怒りを込めて。
『どうして消えたの』
「今の俺に聞くの? 君に蹴られて痛がっている俺に聞くの?」
『自分のせい』
「少しは自分の非を認めようよ、ほんの少しでもいいから。自分か蹴ってしまったからとか」
『早く教えて』
「まったくもぉ、単純な話だよ。この火は法力で消えるようになっているんだ。だから、蝋燭を持っている手から法力が火に伝わって、消えてしまったんだよ」
法力で消えるのなら、確かにさっき消えたのは仕方がないのか。
そもそも、今の僕は法力そのもの。蝋燭を持てるようにちりばめられている法力を手に出来る限り集中している状態。これだけでも結構疲れるのに、さらに範囲を狭めて火を消さないで蝋燭を持ち続けろってことだよね。
…………へぇ、なるほどね。
「難しそうかい? できそうにないのならまた段階を踏むから言ってくれて構わないよ」
『何言ってんの、やるに決まってんじゃん』
「ん?」
こんなやりがいのなる修行、今まで経験してこなかった。難しいし、できる保証なんてない。高度な技術がなければ成功できるはずのない、奇跡など期待できない修行。
『面白いじゃん、やってあげるよ』
これは、本当に楽しみ。出来るようになった時、必ず成果がわかる。
あぁ、心臓が高鳴る。面白い、難しいからこそ、楽しいよね。
『優夏になんて負けないから、必ず僕も、役に立ってやる』
☆
「ハックション!!」
「っ、なんだ? 寒いのか?」
「いや、特に寒くない。なんか、鼻がムズムズしただけ。気にしないで」
あー、誰かが俺の噂をしているのかもしれないなぁ。いや、さすがに自意識過剰すぎるか。
「どうしましたか優夏さん、次行きますよ」
「あ、はい!!」
弥来さんに呼ばれたから行かないと。水分補給はしっかりととれたし、疲労も問題ない。なんか、違和感はあるけど、そこまで気にするほどではないし。もしなんかあれば闇命君が飛び出してくるだろうしなぁ。『僕の体で何をするのさ!』って感じで。
「それじゃ、また模擬戦をお願いします」
「「はい! よろしくお願いします!」」
今以上に必ず強くなって、今まで僕を馬鹿にしていた闇命君を見返してやるんだから。なんでも闇命君に頼り切りもよくないし、絶対に負けない。
「闇命君に少しでも認められるように強くなる、絶対に負けないから」
『…………怒りをぶつけたいのは自由な陰陽助に振り回されている僕なんだけど』
「俺は別に怒ってないぞ。ただ、折っただけ」
『意味は?』
「このくらいの長さならお前でも持てるかと思ったんだが、どうだ?」
渡してきたのは、真っ二つになっている蝋燭。火は僕が落した時に消えているから問題はないみたいだけど、まさか折って寸法調整するなんて。いいの?
……持ってみたけど、意外とちょうどいい。なんか、腹が立つ。
「それじゃん、やってみて」
『わかった』
もう無理やりやらされるなんて御免だし、それなら自分でやる。
まだ法力は安定していないけど、やろうと思えばできるはず。だって、僕なんだから。法力さえ使えるようになったら、僕はもう前みたいに何もできない役立たずではない。
「よし、火をつけるからな」
『わかった』
琴葉が火をつけた、赤く燃える炎。このまま消さないようにすればいいんだよね。そんなのかんたっ――……
――――――シュッ
『っ、え?』
きえ、た?
『これ、なんできえっ――ちょっと』
隣で琴葉がお腹を抱えて笑っているんだけど、なに。その後ろでは水分が腕を組み”当たり前だろ”というように頷いている。二人の反応が本当にむかつく、むかつく!!!
『…………』
「いったい!!! え、なんで?」
『そういえば、蝋燭を持てるようになったから人のことも蹴ることもできるよねと思っただけ。今回、ちょうどよく試せる人がいたから試しただけ、何か文句ある?』
「……イーエ」
『そう、それなら僕を睨まないでくれる? 不愉快』
「酷いなぁ」
琴葉の脛を試しに蹴ってあげた。もちろん、怒りを込めて。
『どうして消えたの』
「今の俺に聞くの? 君に蹴られて痛がっている俺に聞くの?」
『自分のせい』
「少しは自分の非を認めようよ、ほんの少しでもいいから。自分か蹴ってしまったからとか」
『早く教えて』
「まったくもぉ、単純な話だよ。この火は法力で消えるようになっているんだ。だから、蝋燭を持っている手から法力が火に伝わって、消えてしまったんだよ」
法力で消えるのなら、確かにさっき消えたのは仕方がないのか。
そもそも、今の僕は法力そのもの。蝋燭を持てるようにちりばめられている法力を手に出来る限り集中している状態。これだけでも結構疲れるのに、さらに範囲を狭めて火を消さないで蝋燭を持ち続けろってことだよね。
…………へぇ、なるほどね。
「難しそうかい? できそうにないのならまた段階を踏むから言ってくれて構わないよ」
『何言ってんの、やるに決まってんじゃん』
「ん?」
こんなやりがいのなる修行、今まで経験してこなかった。難しいし、できる保証なんてない。高度な技術がなければ成功できるはずのない、奇跡など期待できない修行。
『面白いじゃん、やってあげるよ』
これは、本当に楽しみ。出来るようになった時、必ず成果がわかる。
あぁ、心臓が高鳴る。面白い、難しいからこそ、楽しいよね。
『優夏になんて負けないから、必ず僕も、役に立ってやる』
☆
「ハックション!!」
「っ、なんだ? 寒いのか?」
「いや、特に寒くない。なんか、鼻がムズムズしただけ。気にしないで」
あー、誰かが俺の噂をしているのかもしれないなぁ。いや、さすがに自意識過剰すぎるか。
「どうしましたか優夏さん、次行きますよ」
「あ、はい!!」
弥来さんに呼ばれたから行かないと。水分補給はしっかりととれたし、疲労も問題ない。なんか、違和感はあるけど、そこまで気にするほどではないし。もしなんかあれば闇命君が飛び出してくるだろうしなぁ。『僕の体で何をするのさ!』って感じで。
「それじゃ、また模擬戦をお願いします」
「「はい! よろしくお願いします!」」
今以上に必ず強くなって、今まで僕を馬鹿にしていた闇命君を見返してやるんだから。なんでも闇命君に頼り切りもよくないし、絶対に負けない。
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