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三人修行
お咎めなし
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竹刀を受け止めると、振動で手が痺れる。それでも、受け止めなければやられる。
一技之長は、纏わせる事しか出来ないと聞いていたが、放つことも出来た。他にも出来る事があるはず。
…………闇か、相手の視界を覆う事が出来るかも知れない。
って、距離をとっても一瞬で詰められる。これじゃ、考えても実行に移せない。
…………いや、でも。その一瞬の時、刹那の時間。その時でやればいいんじゃないか?
上からたたき落された竹刀から避けるため、膝を深く折り後ろ跳ぶ。距離を取るがすぐにこちらに来ようと靖弥が動く。
その隙、使わせてもらうよ。闇を、靖弥に向けて放つ!
竹刀を下から上に振り上げ闇を飛ばす。今回は刃ではなく、範囲を広くし靖弥を包み込むことをイメージ。上手く放たれ、彼は動きを止めた。
「これは……」
竹刀を横一線に薙ぎ払い闇を払おうとしたが、物体ではない。斬る事が出来ず、靖弥を包み込むことに成功。逃げられる前に靖弥へと走り、上からたたきつけるように竹刀を振り上げる。
「────ヒュッ」
口から息が零れる。そのまま、闇に向けて振り上げた竹刀を勢いのまま叩き落した。
――――スカッ
「んあ??」
え、靖弥が、きえ、た?
「え、気配もない、どこ!?」
周りを見渡しても靖弥が居ない。どこに行ったんだ? もしかして、俺が知らない技を靖弥が持っていたのか? ありえる話だけど、こんな、気配すら消す技なんて、数秒の時間で使う事は可能なのか?
――――ドテッ
「どて??」
後から何かが落ちる音? 何がおち――――
「せ、靖弥ぁぁぁぁぁぁぁあぁああああ!?!?」
上には空間の切れ目、下にはお尻を摩っている靖弥。何が起きてこうなったの!?
「いてて、おい、何をしたんだ?」
「俺が聞きたい。これはお前の技じゃないのか?」
「いや、こんな空間魔法みたいな大技、さすがに俺は使えない。優夏の一技之長じゃないのか?」
「いや、俺はただ、靖弥の視界を覆い隠そうと思っただけ……」
地面に座り込んでいる靖弥と目を合わせていると、後ろからカサカサ音。誰かが来たみたい。
「お、やってんな」
「水分さん!!」
水分さんが来ていた、って、後ろにいるのって!?
「っ、なんで、地下牢にいたんじゃ……」
水分さんの後ろには、地下牢にいるはずの弥来《みくる》さん。今は普通みたいだけど、顔を俯かせているからどんな表情をしているのかわからない。もしかしたら何かを企んでいるのかも。
「こいつは問題ない、もう呪いは解けている」
「ほ、ほんとに?」
「本当だ。ほれ、前に出ろ」
言われたまま、弥来さんが前に出た。こちらの話は聞こえているみたいだし、意味も通じている。
呪い、本当に解けたのか?
「…………あの時は、すいませんでした。優夏さん」
「あ、えっと。今は意識とかしっかりしているのですか? 体とかも、大丈夫ですか?」
「あ、えぇ。体などは大丈夫です……」
俺と目を合わせてくれないな、気まずそう。
そりゃそうか、あんなことがあったんだ。何事もなかったかのような振る舞いは難しいだろう。俺もちょっと、気まずいし。
弥来さんの性格上、絶対に後悔しているだろうし、永遠と心の中に刻み続けるだろうな。
「…………弥来さん」
「っ、な、なんだ。罰なら何でも受ける、何でも言ってくれ」
あぁ、そういう思考になるのか。顔は青いし、体は震えている。今はまだ崩れる一歩手前でとどまっているみたいだけど、俺が間違えたことを言えばすぐに崩れ落ちる。そんな感じだ、今の弥来さん。
……………………それでも、まぁ。思ったことをそのまま言えばいいかな。
「弥来さん、俺に貴方を罰する権限はありません。俺が聞きたいのは、今の弥来さんの身体が無事なのか、呪いの後遺症はないか。思考はしっかりしているのか、俺達の事はどこまで覚えているのか。そういう所なんですが、いかがでしょうか?」
「えっ…………と。体調の方は問題ありません、体に傷などもないのであともう少し体を動かせば、元と同じ体力に戻るかと。呪いの後遺症は今の所見えません、今後どうなるかは調べてからになるかと。思考はしっかりとしており、貴方達の事はしっかりと覚えております」
流石弥来さん、すべての質問に的確に答えてくれた。思考はしっかりしているみたい、大丈夫そう。
「それならよかった。地下牢に閉じ込めてしまってごめんなさい、あれ以外思いつかなくて…………」
「い、いえ。逆に生かせてくださってありがとうございます。殺されてもおかしくない事をしたので。お咎めすらないのはさすがに受け入れられないのですが」
あ、お咎めすら無しなんだ。水分さんなら確かにお咎めとか考えてなさそうだな。今が良ければ良いという思考の持ち主だし。でも、それは弥来さんの気持ちに背くことになるんじゃないのだろうか、心苦しそう。
「お咎めはなしだ、俺はこれ以上何も考えたくない」
「し、しかし…………」
「それについては昨日話し合っただろう。納得しろ」
「はい…………」
うわぁ、凄く落ち込んでいる。何でお咎めなしと言われて落ち込んでいるのか……。
それだけ後悔の念が強いという事なんだろうなぁ、責任感強いし。
お咎めなしが嫌なのなら、何か他に弥来さんが嫌がる事が出来ればいいのかな。でも、何だろう。
「あ」
「っ、いかがいたしましたか?」
「お咎めなしが嫌なのなら、俺達の修行に付き合って頂けませんか??」
「…………え?」
一技之長は、纏わせる事しか出来ないと聞いていたが、放つことも出来た。他にも出来る事があるはず。
…………闇か、相手の視界を覆う事が出来るかも知れない。
って、距離をとっても一瞬で詰められる。これじゃ、考えても実行に移せない。
…………いや、でも。その一瞬の時、刹那の時間。その時でやればいいんじゃないか?
上からたたき落された竹刀から避けるため、膝を深く折り後ろ跳ぶ。距離を取るがすぐにこちらに来ようと靖弥が動く。
その隙、使わせてもらうよ。闇を、靖弥に向けて放つ!
竹刀を下から上に振り上げ闇を飛ばす。今回は刃ではなく、範囲を広くし靖弥を包み込むことをイメージ。上手く放たれ、彼は動きを止めた。
「これは……」
竹刀を横一線に薙ぎ払い闇を払おうとしたが、物体ではない。斬る事が出来ず、靖弥を包み込むことに成功。逃げられる前に靖弥へと走り、上からたたきつけるように竹刀を振り上げる。
「────ヒュッ」
口から息が零れる。そのまま、闇に向けて振り上げた竹刀を勢いのまま叩き落した。
――――スカッ
「んあ??」
え、靖弥が、きえ、た?
「え、気配もない、どこ!?」
周りを見渡しても靖弥が居ない。どこに行ったんだ? もしかして、俺が知らない技を靖弥が持っていたのか? ありえる話だけど、こんな、気配すら消す技なんて、数秒の時間で使う事は可能なのか?
――――ドテッ
「どて??」
後から何かが落ちる音? 何がおち――――
「せ、靖弥ぁぁぁぁぁぁぁあぁああああ!?!?」
上には空間の切れ目、下にはお尻を摩っている靖弥。何が起きてこうなったの!?
「いてて、おい、何をしたんだ?」
「俺が聞きたい。これはお前の技じゃないのか?」
「いや、こんな空間魔法みたいな大技、さすがに俺は使えない。優夏の一技之長じゃないのか?」
「いや、俺はただ、靖弥の視界を覆い隠そうと思っただけ……」
地面に座り込んでいる靖弥と目を合わせていると、後ろからカサカサ音。誰かが来たみたい。
「お、やってんな」
「水分さん!!」
水分さんが来ていた、って、後ろにいるのって!?
「っ、なんで、地下牢にいたんじゃ……」
水分さんの後ろには、地下牢にいるはずの弥来《みくる》さん。今は普通みたいだけど、顔を俯かせているからどんな表情をしているのかわからない。もしかしたら何かを企んでいるのかも。
「こいつは問題ない、もう呪いは解けている」
「ほ、ほんとに?」
「本当だ。ほれ、前に出ろ」
言われたまま、弥来さんが前に出た。こちらの話は聞こえているみたいだし、意味も通じている。
呪い、本当に解けたのか?
「…………あの時は、すいませんでした。優夏さん」
「あ、えっと。今は意識とかしっかりしているのですか? 体とかも、大丈夫ですか?」
「あ、えぇ。体などは大丈夫です……」
俺と目を合わせてくれないな、気まずそう。
そりゃそうか、あんなことがあったんだ。何事もなかったかのような振る舞いは難しいだろう。俺もちょっと、気まずいし。
弥来さんの性格上、絶対に後悔しているだろうし、永遠と心の中に刻み続けるだろうな。
「…………弥来さん」
「っ、な、なんだ。罰なら何でも受ける、何でも言ってくれ」
あぁ、そういう思考になるのか。顔は青いし、体は震えている。今はまだ崩れる一歩手前でとどまっているみたいだけど、俺が間違えたことを言えばすぐに崩れ落ちる。そんな感じだ、今の弥来さん。
……………………それでも、まぁ。思ったことをそのまま言えばいいかな。
「弥来さん、俺に貴方を罰する権限はありません。俺が聞きたいのは、今の弥来さんの身体が無事なのか、呪いの後遺症はないか。思考はしっかりしているのか、俺達の事はどこまで覚えているのか。そういう所なんですが、いかがでしょうか?」
「えっ…………と。体調の方は問題ありません、体に傷などもないのであともう少し体を動かせば、元と同じ体力に戻るかと。呪いの後遺症は今の所見えません、今後どうなるかは調べてからになるかと。思考はしっかりとしており、貴方達の事はしっかりと覚えております」
流石弥来さん、すべての質問に的確に答えてくれた。思考はしっかりしているみたい、大丈夫そう。
「それならよかった。地下牢に閉じ込めてしまってごめんなさい、あれ以外思いつかなくて…………」
「い、いえ。逆に生かせてくださってありがとうございます。殺されてもおかしくない事をしたので。お咎めすらないのはさすがに受け入れられないのですが」
あ、お咎めすら無しなんだ。水分さんなら確かにお咎めとか考えてなさそうだな。今が良ければ良いという思考の持ち主だし。でも、それは弥来さんの気持ちに背くことになるんじゃないのだろうか、心苦しそう。
「お咎めはなしだ、俺はこれ以上何も考えたくない」
「し、しかし…………」
「それについては昨日話し合っただろう。納得しろ」
「はい…………」
うわぁ、凄く落ち込んでいる。何でお咎めなしと言われて落ち込んでいるのか……。
それだけ後悔の念が強いという事なんだろうなぁ、責任感強いし。
お咎めなしが嫌なのなら、何か他に弥来さんが嫌がる事が出来ればいいのかな。でも、何だろう。
「あ」
「っ、いかがいたしましたか?」
「お咎めなしが嫌なのなら、俺達の修行に付き合って頂けませんか??」
「…………え?」
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