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氷鬼家

人影

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 ――――カランッ ガンッ!!!!

「靖弥!!!!!」

 竹刀が吹っ飛ぶのと同時に、腹部に鋭い一撃。靖弥が後ろに吹っ飛んでしまった。

「ゴホッ!! ゲホッ!!!」
「今回のは悪くなかった。さすがに驚いたよ、油断したなぁ」

 琴葉さんが靖弥の前に立ち、竹刀を地面につく。目を細め、地面に蹲っている靖弥を見下ろしていた。

 いつも、こんなスパルタ教育されているの? だから、あんなにいつも傷が絶えないのか。さすがにやりすぎっ――……

「も、もう一回。お願いします!!!」

 口元を拭いながらも、靖弥が立ち上がり叫ぶように言った。その瞳は真剣そのもの。一瞬、止めようと手を伸ばしたが、すぐに下ろすことになってしまった。

「まぁ、待て。君のやる気を優先してあげたいが、事態が変わったらしい」

 あ、こっちを向いた、もしかして、俺達が来ていたのに気づいていたのか? そっちに集中していると思っていたのに、まさかこっちの気配も感じ取られていたなんて。

「あ、雨か。気づかなかったなぁ」
「俺達の気配には気づいたのに、雨には気づかなかったんですか」
「雨は気配がないだろ?」
「いや、あります。肌に当たります」
「そんなの今はどうでもいいなぁ。それより、なんだこの気配? どこからだ」

 水分さんと同じことを言っている。俺にはまったく気配なんてわからないんだけど。というか、飴で気配がかき消されている感じ。

 雨に紛れて奇襲して来たのか? 

『…………雨に遮られて気配を感じるのは難しい。二人は本当に気配を感じているの?』
「そこで疑うのかい。多分、感じているんだよ。気配を探るために、今も集中してる」

 琴葉さんと水分さんは、雨に遮られて感じにくい気配を何とか突き止めようと集中している。そんな中でも雨はどんどん強さを増してきた。

「あの、紅音と魔魅ちゃんは大丈夫でしょうか」
「あの二人なら問題ないと思うぞ。なんとなく、この気配は……」
「え、どういうことですか?」

 俺の質問には答えず、またしても琴葉さんは集中し始めてしまった。

 なんで大丈夫と言えるのだろうか、今回の敵は弱いの? いや、敵襲だったら相手が誰であろうと危ないし大丈夫と言いきれない。

「何が…………ん? あれ、水分さん? なんか、顔が青くなっ――――」
「っ、来たぞ!!!」

 っ、琴葉さんが空を見上げて叫んだ? 上を見ると、小さな人影が見えた。誰だ?

「おっ、これは、地獄の始まりだな。水分の」
「助けろ」
「嫌だ☆」

 え、なんか、琴葉さん、楽しんでない? 逆に水分さんは顔を真っ青にして、琴葉さんに助けを求めている。

 あの人影、誰なんだ?

「あ、あれ? 半透明になるの?」
『なんか、始まる予感がして』

 言うと、闇命君は俺の肩から飛び降り、半透明の姿になった。

 始まる予感? 何が始まるんだよ、怖いって……。

 再度上を見ると、人影がどんどん大きくっ――………


「どわぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!!!!」
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